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ニーアの信じる運命の人

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「貴女は運命を信じませんか?」
「生憎とそこまで夢見がちな女でもないので」
 夢見がちな女が浮気三昧などしないだろう。だがニーアは少し沈みがちで「そうですか……」と言った。
「ニーアは運命を信じてるんだね」
「はい。幼い頃に会った占い師ジプシーが言っていたのです。この国に来れば運命の人に会えると」
「でもそれはもしかしたら別の人かもしれないよ」
「そんな事ないです!」
 グッと私の手を握ったニーア。顔が近い……じゃなく、なんだか白熱した感じになった。せっかく話をそらしたはずが、自分から墓穴を掘ってしまうなんて……
「あぁ……とりあえずわかったんで、手を放していただけると……」
「ご、ごめんなさい!でもこれだけは覚えておいて下さい。僕は貴女をあきらめません」
 完全に告白されてしまった。さて、どうしたものか。
 その後は二人で祭りを楽しみ、カフェまで送ってもらい解散となった。なるべくその運命話を持ち込まないよう、話を逸らすのに必死だった私。


 翌日。カフェでは私とニーアの事がちょっとした噂になっていた。
「嬢ちゃん昨日は変な恰好した兄ちゃんと祭りを周っていたよなぁ」
 そう言ってきたのは常連のおじいさん。なんとも間が悪い事に、今日はカインもアルビーも、もちろん従業員のルカまでいる。
「ほ、本当に?あぁ!昨日まで出稼ぎに行っていたからなぁ……本当だったらオレが誘ったのに」
 残念がるカインを見てアルビーは笑う。
「坊やじゃ上手くお嬢さんをエスコート出来ないだろ?俺も作品が佳境じゃなかったら誘っていたのにね」
 パチンとウインクを向けられた。
「僕はその日他のお店の手伝いに行っていたので知らなかったですが……」
 ルカもそう言って各々事情があった事を今知った。ヒロイン必ず攻略キャラから好感度大の会話もまたすごいな……
 どちらにしてもこのイベントはニーアルートに進む為のものだったのかもしれない。ちなみにカインルートの祭りは花火が、アルビーは出し物のアクセサリーを買う。ルカは一緒にりんご飴を食べるという内容になっていた。
 さて、この先もニーアルートなら何が起こるのか見当がつかない。
「なんかオレ……最近この国の行事に参加出来てない気もする……」
「坊やは冒険者だったね。何?最近は討伐とか多いの?」
「そうですね……なんかこの地にはいないはずの不明なモンスターが現れてるらしくて、城の兵士達も定期的に退治に出てるみたいですよ」
 その話を聞いて私は驚いた。元々このゲームはこのリ・グリエターナ国内で起こる恋愛のあれこれがメインだったはずだ。ニーアの事にしても、今の城外にいるモンスターの話も聞いた事がなかった。大型アップデートで視野を広げているのだとしたら、そのうち城外に出る事もあるのかもしれない。
「この地にいないモンスターってどんなのですか?」
「うーん……なんって言うの?黒いモヤみたいなので、実態がわからないんだ」
「実態がわからない?」
「そう。そのモヤは何かに擬態してて、倒すともやぁって現れて消えるんだ」
 ルカとカインの話を聞きながら、その黒いモヤが何か、少し気になってしまった。
 それにしてもこの先私の歩むルートは一体どうなってしまうのか。先の展開が読めないとこうも不安になるとは。単純に楽しめばいいのかもしれないが、それではいけない気もする。なんとなくそう思った。
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