9 / 16
ニーアの信じる運命の人
しおりを挟む
「貴女は運命を信じませんか?」
「生憎とそこまで夢見がちな女でもないので」
夢見がちな女が浮気三昧などしないだろう。だがニーアは少し沈みがちで「そうですか……」と言った。
「ニーアは運命を信じてるんだね」
「はい。幼い頃に会った占い師が言っていたのです。この国に来れば運命の人に会えると」
「でもそれはもしかしたら別の人かもしれないよ」
「そんな事ないです!」
グッと私の手を握ったニーア。顔が近い……じゃなく、なんだか白熱した感じになった。せっかく話をそらしたはずが、自分から墓穴を掘ってしまうなんて……
「あぁ……とりあえずわかったんで、手を放していただけると……」
「ご、ごめんなさい!でもこれだけは覚えておいて下さい。僕は貴女をあきらめません」
完全に告白されてしまった。さて、どうしたものか。
その後は二人で祭りを楽しみ、カフェまで送ってもらい解散となった。なるべくその運命話を持ち込まないよう、話を逸らすのに必死だった私。
翌日。カフェでは私とニーアの事がちょっとした噂になっていた。
「嬢ちゃん昨日は変な恰好した兄ちゃんと祭りを周っていたよなぁ」
そう言ってきたのは常連のおじいさん。なんとも間が悪い事に、今日はカインもアルビーも、もちろん従業員のルカまでいる。
「ほ、本当に?あぁ!昨日まで出稼ぎに行っていたからなぁ……本当だったらオレが誘ったのに」
残念がるカインを見てアルビーは笑う。
「坊やじゃ上手くお嬢さんをエスコート出来ないだろ?俺も作品が佳境じゃなかったら誘っていたのにね」
パチンとウインクを向けられた。
「僕はその日他のお店の手伝いに行っていたので知らなかったですが……」
ルカもそう言って各々事情があった事を今知った。ヒロイン必ず攻略キャラから好感度大の会話もまたすごいな……
どちらにしてもこのイベントはニーアルートに進む為のものだったのかもしれない。ちなみにカインルートの祭りは花火が、アルビーは出し物のアクセサリーを買う。ルカは一緒にりんご飴を食べるという内容になっていた。
さて、この先もニーアルートなら何が起こるのか見当がつかない。
「なんかオレ……最近この国の行事に参加出来てない気もする……」
「坊やは冒険者だったね。何?最近は討伐とか多いの?」
「そうですね……なんかこの地にはいないはずの不明なモンスターが現れてるらしくて、城の兵士達も定期的に退治に出てるみたいですよ」
その話を聞いて私は驚いた。元々このゲームはこのリ・グリエターナ国内で起こる恋愛のあれこれがメインだったはずだ。ニーアの事にしても、今の城外にいるモンスターの話も聞いた事がなかった。大型アップデートで視野を広げているのだとしたら、そのうち城外に出る事もあるのかもしれない。
「この地にいないモンスターってどんなのですか?」
「うーん……なんって言うの?黒いモヤみたいなので、実態がわからないんだ」
「実態がわからない?」
「そう。そのモヤは何かに擬態してて、倒すともやぁって現れて消えるんだ」
ルカとカインの話を聞きながら、その黒いモヤが何か、少し気になってしまった。
それにしてもこの先私の歩むルートは一体どうなってしまうのか。先の展開が読めないとこうも不安になるとは。単純に楽しめばいいのかもしれないが、それではいけない気もする。なんとなくそう思った。
「生憎とそこまで夢見がちな女でもないので」
夢見がちな女が浮気三昧などしないだろう。だがニーアは少し沈みがちで「そうですか……」と言った。
「ニーアは運命を信じてるんだね」
「はい。幼い頃に会った占い師が言っていたのです。この国に来れば運命の人に会えると」
「でもそれはもしかしたら別の人かもしれないよ」
「そんな事ないです!」
グッと私の手を握ったニーア。顔が近い……じゃなく、なんだか白熱した感じになった。せっかく話をそらしたはずが、自分から墓穴を掘ってしまうなんて……
「あぁ……とりあえずわかったんで、手を放していただけると……」
「ご、ごめんなさい!でもこれだけは覚えておいて下さい。僕は貴女をあきらめません」
完全に告白されてしまった。さて、どうしたものか。
その後は二人で祭りを楽しみ、カフェまで送ってもらい解散となった。なるべくその運命話を持ち込まないよう、話を逸らすのに必死だった私。
翌日。カフェでは私とニーアの事がちょっとした噂になっていた。
「嬢ちゃん昨日は変な恰好した兄ちゃんと祭りを周っていたよなぁ」
そう言ってきたのは常連のおじいさん。なんとも間が悪い事に、今日はカインもアルビーも、もちろん従業員のルカまでいる。
「ほ、本当に?あぁ!昨日まで出稼ぎに行っていたからなぁ……本当だったらオレが誘ったのに」
残念がるカインを見てアルビーは笑う。
「坊やじゃ上手くお嬢さんをエスコート出来ないだろ?俺も作品が佳境じゃなかったら誘っていたのにね」
パチンとウインクを向けられた。
「僕はその日他のお店の手伝いに行っていたので知らなかったですが……」
ルカもそう言って各々事情があった事を今知った。ヒロイン必ず攻略キャラから好感度大の会話もまたすごいな……
どちらにしてもこのイベントはニーアルートに進む為のものだったのかもしれない。ちなみにカインルートの祭りは花火が、アルビーは出し物のアクセサリーを買う。ルカは一緒にりんご飴を食べるという内容になっていた。
さて、この先もニーアルートなら何が起こるのか見当がつかない。
「なんかオレ……最近この国の行事に参加出来てない気もする……」
「坊やは冒険者だったね。何?最近は討伐とか多いの?」
「そうですね……なんかこの地にはいないはずの不明なモンスターが現れてるらしくて、城の兵士達も定期的に退治に出てるみたいですよ」
その話を聞いて私は驚いた。元々このゲームはこのリ・グリエターナ国内で起こる恋愛のあれこれがメインだったはずだ。ニーアの事にしても、今の城外にいるモンスターの話も聞いた事がなかった。大型アップデートで視野を広げているのだとしたら、そのうち城外に出る事もあるのかもしれない。
「この地にいないモンスターってどんなのですか?」
「うーん……なんって言うの?黒いモヤみたいなので、実態がわからないんだ」
「実態がわからない?」
「そう。そのモヤは何かに擬態してて、倒すともやぁって現れて消えるんだ」
ルカとカインの話を聞きながら、その黒いモヤが何か、少し気になってしまった。
それにしてもこの先私の歩むルートは一体どうなってしまうのか。先の展開が読めないとこうも不安になるとは。単純に楽しめばいいのかもしれないが、それではいけない気もする。なんとなくそう思った。
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
美醜逆転世界でお姫様は超絶美形な従者に目を付ける
朝比奈
恋愛
ある世界に『ティーラン』と言う、まだ、歴史の浅い小さな王国がありました。『ティーラン王国』には、王子様とお姫様がいました。
お姫様の名前はアリス・ラメ・ティーラン
絶世の美女を母に持つ、母親にの美しいお姫様でした。彼女は小国の姫でありながら多くの国の王子様や貴族様から求婚を受けていました。けれども、彼女は20歳になった今、婚約者もいない。浮いた話一つ無い、お姫様でした。
「ねぇ、ルイ。 私と駆け落ちしましょう?」
「えっ!? ええぇぇえええ!!!」
この話はそんなお姫様と従者である─ ルイ・ブリースの恋のお話。
盲目のラスボス令嬢に転生しましたが幼馴染のヤンデレに溺愛されてるので幸せです
斎藤樹
恋愛
事故で盲目となってしまったローナだったが、その時の衝撃によって自分の前世を思い出した。
思い出してみてわかったのは、自分が転生してしまったここが乙女ゲームの世界だということ。
さらに転生した人物は、"ラスボス令嬢"と呼ばれた性悪な登場人物、ローナ・リーヴェ。
彼女に待ち受けるのは、嫉妬に狂った末に起こる"断罪劇"。
そんなの絶対に嫌!
というかそもそも私は、ローナが性悪になる原因の王太子との婚約破棄なんかどうだっていい!
私が好きなのは、幼馴染の彼なのだから。
ということで、どうやら既にローナの事を悪く思ってない幼馴染と甘酸っぱい青春を始めようと思ったのだけどーー
あ、あれ?なんでまだ王子様との婚約が破棄されてないの?
ゲームじゃ兄との関係って最悪じゃなかったっけ?
この年下男子が出てくるのだいぶ先じゃなかった?
なんかやけにこの人、私に構ってくるような……というか。
なんか……幼馴染、ヤンデる…………?
「カクヨム」様にて同名義で投稿しております。
女性が少ない世界へ異世界転生してしまった件
りん
恋愛
水野理沙15歳は鬱だった。何で生きているのかわからないし、将来なりたいものもない。親は馬鹿で話が通じない。生きても意味がないと思い自殺してしまった。でも、死んだと思ったら異世界に転生していてなんとそこは男女500:1の200年後の未来に転生してしまった。
美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!
男女比が偏っている異世界に転移して逆ハーレムを築いた、その後の話
やなぎ怜
恋愛
花嫁探しのために異世界から集団で拉致されてきた少女たちのひとりであるユーリ。それがハルの妻である。色々あって学生結婚し、ハルより年上のユーリはすでに学園を卒業している。この世界は著しく男女比が偏っているから、ユーリには他にも夫がいる。ならば負けないようにストレートに好意を示すべきだが、スラム育ちで口が悪いハルは素直な感情表現を苦手としており、そのことをもどかしく思っていた。そんな中でも、妊娠適正年齢の始まりとして定められている二〇歳の誕生日――有り体に言ってしまえば「子作り解禁日」をユーリが迎える日は近づく。それとは別に、ユーリたち拉致被害者が元の世界に帰れるかもしれないという噂も立ち……。
順風満帆に見えた一家に、ささやかな波風が立つ二日間のお話。
※作品の性質上、露骨に性的な話題が出てきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる