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しおりを挟む「うん、そう。夕飯は後でちゃんと食べるよ。えっ? だからわかってるってば! …あっすすすみませんっちゃんとわかっておりますお母様っ!! はいっはいそうですっ、大切な話があるためしばらくは二人だけにしてほしいので上の階にはっ…そうですっ、どうぞご理解のほどよろしくお願いいたします!! はいっ、それでは…!! ……ふぅ。ごめんね疾風くん、お待たせしちゃって…」
「……いや、というかオマエの母親…相変わらず強烈なキャラしてるな」
「ほんとにね~、普段は優しいんだけど怒るとアレでして…何であんな濃いキャラの母親から、オレみたいな地味男が生まれたんだか謎にもほどがあるよ」
「……っ、」
……いや、オマエも大概濃いキャラしてるぞ…?
と、言おうとして口を噤む俺に気づかず、いつぐは自分の部屋のドアにカチャリと鍵をかけ、冷たい茶を注いだグラスを二つのせたおぼんを持ちながら、ゆっくりと俺が座っていた自分のベッドまでご機嫌な感じの足取りで近寄ってきた。
おぼんを目の前の机に置いたのち、ギシリ…ベッドから音をさせつつ俺の隣へといつぐが腰を掛ける。
「っ、」それだけで、俺の心臓も一緒に音をたてた。
今現在の時刻は、いつぐの部屋の壁にかけてある時計を見るに午後の七時を少し過ぎた頃。
そう、いつぐの部屋。俺は今、いつぐの部屋……いつぐの『家』にいるのだ。
溢れでる気持ちのまま、いつぐを街中で思わず抱きしめてしまったあの後。
「ああっ、疾風発見! …って、あれ? もしかして藤枝くんも一緒か?」
「わわっほんとです! いっつんもいますっ…!」
「へ…って、ええっもっちー!? それに東堂くんもどうしてっ!?」
「!! りょ、遼太郎…望月…」
「よかったぁ、いくら待っても疾風が戻ってこないって望月から連絡あって、それで二人でこっちまで藤枝くんだけでなく疾風も探しにきたんだけどさ。なんだ、疾風先に藤枝くん見つけてくれてたんだな……ところで、二人はこんな街の往来で何抱き合ってんだ?」
「え……っ!!? なっ、やっ違っ、俺なにしてっ…!?」
「!! …ふ、ふはっ、疾風くん今頃慌ててって…あははっ」
「なっ、おいいつぐ笑いすぎだっての…!」
「ふふっごめんだってあんな突然大胆なことしてきて、なのに急に顔真っ赤にして慌てちゃう疾風くんがかわいすぎてそれで、」
「っ!? ……かわいくねぇし…バカじゃん…」
「可愛いよ、疾風くんはいつだって可愛い♡」
「…い、いつぐ…♡」
「……おーい、だからここ街の真ん中だぞぉ」
「はわわわわっ、人がっ皆さんが見てますぅ…!」
今思うと、マジで街の往来で何してんだよっ!? 正気かっ!? ……なことをしてしまったのち。
「……あ、あのよ、伊波はどうしたんだ…? さっきまで…っ、あのよくわかんねぇ店に一緒にいただろ…」
「えっ伊波くん? 伊波くんとはさっきのお店の前で別れたけど…?」
「え……はっ!? 別れたのか!? 何でっ!?」
「!? え、何でって…もともと今日の伊波くんとのお出かけの最終目的があそこの『party sweet colorful,』だったから、だけど……ん? 待って、というか何で疾風くんがオレと伊波くんがあのお店に行ったこと知ってるの?」
「……あっ!?」
「!! あっ、って…そういえば、何で疾風くんだけじゃなくもっちーや東堂くんもここに…」
「っ……ごめん、いつぐ…俺」
「えっ?」
「俺――…またオマエのこと、ストーカーしてた」
「へ………うええええっ!!??」
いつぐが伊波とすでに別れていたことに衝撃を受けながらも。
俺はいつぐに、また『ストーカー』をしてしまっていたことを正直に告げたのだった。
「えっと、何だかよくわからないけど……とりあえず、家で話そっか?」
とのいつぐからの言葉で、俺は遼太郎ともっちーの二人とその場で別れ……今、こうしていつぐの部屋のベッドの上にいるわけだけどもよ。
帰り際にアイツらは、
「えっ悪かったって…ははっそんな気にすんなよっ。なんか探偵みたいで楽しかったし、あとおれも色々個人的に良いコトあったからむしろラッキーだったぞ」
「あっえと、ボクも驚いたこととかもありましたが、何だかんだと楽しかったですっ…それに、っ……と、とにかく
全然大丈夫でしたので気にしないでください…!」
とは言ってくれたものの、
遼太郎ともっちーには迷惑かけまくったから、やっぱ近いうちに何か礼とかしないとな。
……それにしても、何で最後遼太郎はあんなご機嫌で、もっちーはあんな顔真っ赤にしてたんだ?
まぁ、そこは別にいいか。
それよりも、俺が今優先すべきことは……だから俺はベッドの上、グッと強く拳に力を入れ。
「っ、いつぐ…俺…俺は、」
「! …うん、どうしたの疾風くん」
「俺はっ、オマエと伊波のこと――…」
今日あったこと――今日だけじゃない、ずっと前から感じていた伊波のいつぐへの態度への思いも――全部、俺は嫌われる覚悟で、自分の気持ちのすべてをいつぐにぶつけた
のだが。
「っ……も、無理……オレの疾風くんがかわいすぎて、死ぬっ…今日がオレの命日になっちゃう…うぐぅっ…」
「――は?????」
数分後。
俺のすべての話を聞いたいつぐは――何故だか、自分のベッドの上で両手で顔を隠しながら一人悶えていた。
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