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しおりを挟む……いつぐ、不審がったりしてなかった…よな?
チラリと視線をいつぐの方へと向けると、いつぐはいつもと変わりない様子で、机から次の授業の教科書を出しているところであった。
よかった、あの雰囲気だと別に俺あの後何か変なことを言ったりとかはしてないみたいだな。
ほっとすると共に、今度は別方向に視線をギギギ…と向ける。
! ……いない。もう教室から出て行ったのか、アイツは。
ぎこちない動きで視線を向けた先、そこに伊波コウの存在はすでになく、俺はなんでかこちらもこちらでほっ…と謎の安心感から息を小さく吐く。
すると、
「……なぁ、疾風。もしかしなくても藤枝くんと何かあったのか?」
「!!?」
「ああ、その顔…やっぱりそうなんだな」
「……っ」
まさにピンポイントというように遼太郎がそう声をかけてきたため、俺はバッと勢いよく伊波の方へ向けていた視線を目の前にいた遼太郎へと戻したのだった。
……なんというか、ほんとコイツの勘の良さはどうなってるんだか。
だが、遼太郎は俺の様子が変なのを察してこうして心配してくれてるんだろう。
中学の時から、それこそ最近だっていつぐへの気持ちに悩んでいた俺に何だかんだとアドバイスをくれたのだから。
だから俺は、意を決し顔をあげ。
「っ、あのよ……最近いつぐのヤツ、何でアイツと…な、仲が良いんだ…」
「藤枝くんと…あいつ? って誰のことだ?」
「アイツだよあの、」
「あのあいつ?」
「っだから伊波だよ、伊波コウっ!! …ってハッ、」
ヤバいっ思わず叫んじまった。
慌てて口を塞ぐと、上から「ああっ、伊波くんか」と遼太郎がポンっと手を叩きながら言い。
「確かに藤枝くんと伊波くん、ここんところよく二人でしゃべってるよなぁ」
「だろっだろっ!?」
「うおっ食いつきがすごいな疾風!?」
「っ!! …と、とにかくオマエから見てもそうなんだな、アイツらは…」
「? ああ、伊波くんがクラスメイトと積極的にしゃべってるところあんまり見たことないしな。なんでかはわからないけど」
「……やっぱり、そうなのか」
「疾風?」
「オマエは、あの二人が……っ、仲が良い理由…知ってんのか」
「へっ理由? ん~…いや知らないかな……というか、疾風が知らないのにおれが知ってるってのも変な話じゃないか? だってお前の恋人の藤枝くん絡みのことなのにさ」
「うぐっ…!!? ……っ、オマエはほんとによ……」
「ん? おれ何かまずいこと言っちゃったか?」
相談にのってもらうはずが逆に傷口に突然の塩を塗られ、一気に椅子から崩れ落ちそうになる俺。
こ、このド天然ヤロウが……思わずギッと睨みを利かせるようとしてしまうが。
けれど「あっそうだ、」遼太郎が何か思いついたのか、再びポンっと手を叩き。
「なら望月はっ?」
「あ?」
「藤枝くんの親友の望月なら、最近藤枝くんが伊波くんと妙に仲が良い理由とかも知ってるかもしれないぞ?」
「!! それだっもっちーだ!!!」
「そうそうっ。 っていうか藤枝くんの影響で疾風たまに望月のこともっちーって呼ぶことあるけど、毎回ギャップがありすぎてなんでか面白いよな、ははっ!」
俺がもっちーって呼ぶのの何がそんなに面白いんだよっとか、つーか俺も未だにふいにもっちーって言っちまうクセ抜けねぇな…とか色々言いたくなることはあったものの、俺はガタンっ!! とでかい音をたてながら立ち上がり。
「…あっすみません、いっつん。ボクちょっとトイレ行きたくなってしまったので、先に教室のほう行っててもらっていいですか?」
「あっうんわかった、じゃあもっちーの分の教科書オレが一緒に持ってくよ」
「あわわっありがとうございますいっつん…!」
「気にしないで、それじゃ先行ってるね」
「はいっではまた後で……よし、時間もないし急いでトイレに…」
「――おい、望月」
「ぴえっ!!? ……って、こ、この声は矢代くんですねっ…すみません、ついまた驚いておかしな声をあげてしまいまし」
「昼休み、ちょっと面貸せや」
「ひぎ――…」
「もっ望月ーー!!? 望月しっかりしろぉ!! こらっだから望月にその顔するのやめろって言ってるだろ疾風っ…!!」
「あ? だからこの顔は元からだっつーの」
こうして俺は、
昼休みにたっぷりといつぐの親友であるもっちーこと望月に、俺のここ最近抱えている二つの悩みのうちのひとつ
『恋人のいつぐが、クラスメイトの伊波コウと、異常に仲が良いコト』
について聞くためのコンタクトを、無事に取り付けることに成功したのだった。
この後、しばらく何故か立ったまま気絶してしまった望月が目を覚まさなかったため、二限目の授業にかなり遅れることになったのだが……何だ? 前から思ってたけど、もっちーはどっか身体でも弱いのか…?
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