共に生きるため

Emi 松原

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共に生きるため

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夢華が妖精界から帰ってきて6年がたった。
夢華は今高校2年生だ。
夢華は今都会の高校に通っている。
一つ上の学年には優姿が居る。
夢華は帰ってすぐ,優姿に連絡をとった。
中学校は地元で通ったが,高校を優姿の居る学校に行くと決め,今は寮で暮らしている。
優姿の通っているのは名門の学校,入るのは並大抵のことではなかったが,なんとか合格して通っている。
勉強したり,遊んだり,相変わらず忙しい。
夢華には夢ができた。
自分の実家のある田舎に,児童養護施設を作ることだ。
夢に向かって,一直線に進んでいる。

優姿は帰ってから信時と仲直りした。
無事に中学受験も合格したが,もう親のいいなりではなかった。
自分で可能性を広げていけば,外でいくらでも世界が作れる。愛情も誰かに与えれば,自分にも返ってくる。そう学んだからだ。
優姿は自分で選んで,この学校へ来たのだった。
優姿にも夢がある。
この地球の緑を,自然をもっと増やしていき,人間達に癒しの効果を得れるような発明をすることだ。
優姿は,大学の環境学部に合格を決めていた。

信時は相変わらず周りに不良と見られていて,あまり評判のよくない学校へ通っている。
しかしもちろん信時にも夢がある。
自分と同じように不良と呼ばれ,世間からはじかれている子供達を受け入れ,愛情を与えることのできる更正施設を作ることだ。

進む道は違うけれど,優姿と信時,夢華は仲が良く,一緒によく話したり出かけたりしていた。

道哉は野球の強い遠くの学校に進学したため,夢華と会う機会は少なくなっていたが,今でも連絡を取り合っている。


「ねぇ,もうすぐ秋休みだよね!!二人とも,あたしの実家においでよ!!行きたい場所があるんだ!!」
夢華が優姿と信時に言った。
「おっ,いいなぁ!!俺も自然の多い場所で休みを過ごしたいと思ってたんだ。」
信時が即座に了解する。
「夢華の育った場所もみてみたいしな♪」
優姿もすぐに賛成した。


秋休み,三人は夢華の実家に帰っていた。
都会の町は,この6年でさらに便利になった。
その反面,自然が失われている。
だが夢華の実家は相変わらずだ。
信時と優姿は,夢華に連れられ,あの獣道を抜けていった。

もちろん,変わらず楠木は立っていた。
そしてその葉は赤い。
それが何を意味しているか,優姿と夢華には分かっていた。

「秋美,居るのかな・・・。」
夢華がつぶやいた。
「俺達,もう見えなくなっちまったんだな。」
優姿が答える。
「なんのことだよ??」
信時が聞いた。
優姿と夢華は,目を見合わせて笑い合った。
「なんなんだよ!!」
信時はブーたれて,そこらへんを散策し始める。
「あれから6年たつのに,相変わらず自然は破壊され続けて人間達も良い方向へ向かってるとは言えない。けど,あたしたち一人一人が諦めずに行動していけば,絶対に仲間はできる。絶対にいつか叶う。だから・・・見ていてね。」
夢華が楠木に向かってささやいた。
「自分が心を開けば,自分が想いを伝えれば,必ず答えてくれる人がいる。裏切られることもある,憎まれることもある,それでも必死で,俺達は生きていく。」
優姿も楠木に向かってささやく。
「なぁーなにしてんだよー」
信時が戻ってきた。
「夢華と内緒の話!」
わざとちゃかしながら優姿が言った。
「あはは!!!」
夢華も笑っている。


そんな夢華達を,秋美は見つめていた。
微笑みながら。
秋美の後ろには,春美,夏美,睡蓮,そして髪が薄い赤色の有樹が居る。
四人も笑って夢華達を見ていた。
「そういえば,そろそろ冬美が隔離室から帰ってくる時間だろ?パーティーの準備は再雪や鈴蘭,それに麻美がしてるし,時間があったら海起や水湖や大樹も来るって言ってた。迎えに行こうぜ。」
秋美が三人に言った。
夏美がため息をつく。
「あんた・・・・ほっんとうに恋愛音痴ねぇ。草多が迎えに行くに決まってるでしょ。私たちは家で待ってればいいの!!」
夏美が言った。
「草多,この数年間,毎日隔離室の冬美の所へ行って,アタックしてたもんね~。さすがに氷河さん一筋だった冬美ちゃんも負けるって!!」
睡蓮が楽しそうに言った。
「誰かさんは海起にアッタクされてることに気づいてないけどね!!」
春美が笑顔でちゃかす。
「なんだって!!??海起は誰にアッタクしてんだよ!!」
秋美が三人に聞いた。
四人は目を合わせて,一瞬,分からないの!?という顔をしたが,すぐに大声で笑い出した。
「わけわかんねーーーーよ!!!!」
海起にアッタクされている事に気が付かない,恋愛音痴が叫んだ。


大聖堂の前に草多は居た。
この数年,毎日のように暇を見つけては通っていた。
長い時間をかけて,冬美も心を開くようになっていた。
大聖堂から,有水と栄枝,それに蒲公英と水仙が出てきた。
「おっ,草多!!ついに今日だな!!」
栄枝が草多の肩を叩く。
「よかったじゃないか。これで,毎日来なくてもすむもんなぁ??」
有水が草多に笑いかけた。
蒲公英と水仙も,笑っている。
四人は草多を残し,大聖堂を後にする。
入れ替わりに海起が帰ってきた。
海起は今,精霊になるための試験を控えている。
「迎えか?」
海起が草多に言った。
「あぁ,もうすぐ試験だな。がんばれよ。」
草多が海起の背中を叩く。
「まったく,お前がうらやましいよ。この6年,どんだけアタックしても俺は気が付いてもらえないんだから。」
海起がため息混じりに言った。
しばらく話した後,海起は大聖堂に入っていった。

草多は待ち続けていた。

しばらく待っていると,ついに,大聖堂から大精霊様に連れられた冬美が出てきた。

「冬美・・・・おかえり・・・・・。」
優しい笑顔で,草多が言った。
冬美は微かに微笑んでうなずいた。
「ほう,迎えかのう。じゃあ,あとは草多に任せるかな。」
そう言うと,大精霊様は笑いながら中へ入っていく。
冬美は無言で歩き出した。
一旦止まってゆっくり深呼吸すると,また歩き出す。
草多が冬美の隣りに並んで,一緒に歩き始めた。
いつのまにか背が冬美に追いつこうとしている。
「みんな,パーティーするってはりきってるぜ。」
草多が言った。
草多の言葉に,冬美が笑顔を見せる。
そんな冬美の手を,草多が握った。
しっかりと草多の手を握り返し,二人は歩き始めた。


あの時のような,秋の夕暮れが広がっている。
夢華達は獣道を戻ろうとしていた。
まず信時が先に進む。
続いて優姿。
夢華は帰る前,もう一度楠木を振り返った。
一瞬・・・・・
ほんの一瞬だけ・・・
秋美達が笑っている姿を見た気がした。






誰かを信じる時,人は優しい姿になれる。
そして初めて,夢の華を咲かすことができるのだ。




END

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