共に生きるため

Emi 松原

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共に生きるため

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夢華達は,月の村の北部に向かっていた。
海起と栄枝と別れてからは一人も刺客は出て来ていなかった。
「そろそろ,次の奴が出てくるかもな。しかも,誰が出てくるか全く分からない。」
有水が振り向きざまに言った。
「誰であろうと,あたいが蹴散らしてやるって」
秋美が言った。
「段々と冬美の気配がしてきた。近くに冬美は居る。」
草多が足を止めた。
「あたしも感じる。でも・・・まだ北部じゃないわよね・・・?」
夏美が草多に言った。
「いや・・・・・・・・冬美のおでましだ。」
有水が足を止めた。

目の前に,いつのまにか冬美が立っていた。

「・・・・・・・・・・冬美・・・・・何してんだよ!このままだったら,お前も捕まる・・・。」
秋美が声を掛けた。
冬美は静かに首を振った。
「わかってるけど,私は帰らない・・・・。」
「どういうことだよ!?」
「みんなに,謝りに来たの。心配と迷惑掛けてごめんなさい。けど,これが私の選んだ道。・・・分かって・・・。」
「わかんねぇよ!!!」
秋美が叫んだ。
「冬美・・・・お前や氷河には,別に目的があるんだろう??なんなんだ??」
有水が落ち着き払って聞いた。
「全て知りたいのなら,北部の集会所までたどり着いてください。」
冬美も落ち着き払っていった。
「冬美・・・。」
草多が何か言いたそうに進み出た。
「草多・・・・・。ごめんね。」
冬美が少し微笑んだ。
「私は,みんなに謝りたくて来ただけ。氷河には内緒で・・・。春美・海起・栄枝さんにも謝りたかった・・・。」
「・・・・・仲間どうしが・・・・傷つけ合ってるんだぞ・・・・?お前は,何にも思わないのか・・・?」
秋美が聞いた。
冬美は無言だった。
その時,冬美の隣に冬美よりも少し白に近い髪の色をした妖精が冬美の横に現れた。
「雪の妖精・・・・再雪<さゆき>・・・陰の妖精で,私たちの,同期よ。」
夏美が夢華にささやいた。
「あんたまで,ジェネレーションのメンバーだったの・・・??」
夏美が落胆した声で言った。
「冬美・・・早くあなたは戻って。氷河さんにバレルわよ。抜け出してきたんでしょう?・・・・ここは私の持ち場よ。」
再雪が言った。
「再雪,ありがとう。」
そう言うと,冬美の姿は見えなくなった。

「・・・ちくしょう・・・・。」
秋美が言った。

「どうしますか?戦いますか?」
再雪が全員に聞いた。
「私一人にかまっていたら,先に進めませんよ?それが分かっているから,そんなに人数が少ないんでしょう??誰が私と戦うか,決めて下さい。」
再雪が暗い顔で言った。
「私が,相手になる。」
夏美が再雪に向けて言った。
「私とあなたは,相性悪いもんね。」
夏美がほほえんだ。
「有水さんいいですよね??」
夏美が有水に聞いた。
「あぁ・・・やむおえない。夏美,お前が一番雪には強いもんな。」
有水が答えた。
「じゃあ,早く夏美以外の人は先を進めてください。」
再雪が道をあけた。
「こんなこと言うのもなんだけど,全員を止めなくていいの?」
蒲公英が進みながら再雪に言った。
「誰も,仲間どおしの争いなんて臨んでないんですよ。ただ,人間という生き物に対して我慢できなかっただけ。・・・私たちは全員抹消されて死ぬ覚悟です。目的が達成されたら・・・。・・・仲間の妖精達がこれ以上死んでいくのは見たくないんです。」
再雪が答えた。
「夏美・・・ささっと終わらせろよ。春美,それに海起と栄枝さんと北部まで来いよ。」
秋美が先に向けて歩きながら言った。
夏美は後ろを向いたまま無言で手を挙げた。

「さぁ,始めましょうか。」
再雪が夏美と向き合って言った。
「あんたとは,学生時代からよく喧嘩してたわね。」
夏美もかまえながら言った。
「そうね。冬美ほどではないけど私の力も弱くないのはご存じよね。・・・なつかしいじゃない。学生時代に戻ったみたいで。」
再雪もかまえた。
「あんたと私,気持ちが同じなのは分かってる。選んだ道が違うだけなのも。けど,掟は掟だから。今回はお遊びの喧嘩じゃないわよ。」
夏美息を吸った。
「どうぞ,本気で来なさい。罪を犯してることくらいわかってるんだから。」
再雪は夏美の攻撃を察知して防御の態勢になっている。
「・・・・・・・」
しかし,夏美は無言だ。
「どうしたのよ。早く来なさいよ。」
再雪がかまえを解きながら言った。

「あんたさぁ,本当に私と戦いたいの??」
夏美が唐突に話しかけた。
「戦いたいわけないじゃない。」
「じゃあやめましょうよ。」
「は???」
「あんたが戦いたくないなら,戦う理由なんてないじゃない。」
夏美が腰を下ろした。
「久々に,少し話さない??」
夏美が再雪に手招きをした。
再雪は面食らった顔をしていたが,しばらくすると無言で,夏美の隣りに腰を下ろした。

残り三十八時間・・・・。
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