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~感謝~
それから数ヶ月がたち,人間界に春が来た。
その日,フラワー・ドリーム主催のボランティアに守我と由岐は参加していた。
もちろん夢華と優姿,そして取材に来ている信時が居る。
ボランティアの内容は,元は氷の世界だった場所。守我の兵器により,赤と黒の世界になった場所への植林だ。
夢華の施設の子供達,その子達の友達,保護者,そしてフラワー・ドリームのメンバー達により木の苗や花,水,土,肥料などが運ばれていた。
一つ一つ丁寧に,植物を植えていく。
その中で,ひときわ一生懸命働き汗を流していたのが守我だった。
守我は空を見上げた。
青い空が広がっている。
子供達の笑い声が,その場所一帯に響き渡っていた。
子供達がはしゃぎ,笑う様子を見て守我は心から微笑んだ。
自分のしてきた事への後悔は消えない。
思い出すだけで恐ろしくなり,寝られなくなる。
そのたびに夢華の言葉を思い出し,守我は前へと進んでいた。
今,国とフラワー・ドリームは協力し,まだまだ課題は残るが少しずつ前へと向かっている。
守我の周りに子供達が集まってきた。
「ねぇ!!守我のお兄ちゃん見て!!僕こんなに上手に木の苗を植えたよ!」
1人の子供が言った。
「守我のお兄ちゃん,私が植えた花の方が上手だよね!?」
別の子供が守我の手をとる。
「みんな,上手だよ。」
笑いながら守我が言った。
「ねぇ見て!!由岐のおじちゃん,僕たちより植えるのが下手だよ!!」
それを聞いて笑う子供達。
少し凹んだ様子の由岐。
「こらっ!!そんなこと言っちゃダメでしょ!!」
夢華が近づいてきて子供達をたしなめた。
「ほらほら,まだまだ植える植物が残ってるぞ。」
優姿も笑いながら言った。
守我は周りを見渡した。
子供達を回り声をかける夢華。
様々な人と協力をして植物を植えていく優姿。
子供達にからかわれながらも笑顔を返す由岐。
その様子を取材する信時に,頑張る子供達。
守我は,大きく深呼吸をしてとびっきりの笑顔になった。
そしてまた,みんなと共に作業に戻っていった。
その場所に,妖精・そして精霊達も居た。
植物が地に根付き,栄えられるよう手助けしていく。
守我の姿を見て,妖精達は微笑んでいた。
「やっと・・・終わったな・・・・・。じじい・・・あたいたち・・・・まだ共存できるよな・・・・。」
秋美が微笑んだ。
「あぁ。できるさ。」
その隣に海起が居る。
「それに,これで何も心配せずに恋愛できるわよねっ!?」
ニヤニヤしながら夏美がちゃかす。
「そうそう。明日はやっと冬美ちゃんと草多くんの結婚式なんだし!!そろそろ・・・ねぇ!?」
睡蓮も飛びながら笑っていた。
「なっ・・・なんだよ!!別に俺は・・・・・。」
赤くなりながら,うつむく海起。
「そんなこと言って。そろそろ素直になるべきですわ。」
鈴蘭も笑っていた。
再雪と春美も笑っている。
当の秋美はそんなことお構いなしに,冬美の所へ行った。
「なぁ冬美!!明日はやっと結婚式だな!!」
秋美が冬美に言った。
うなずきながら微笑む冬美。
「秋美,遅刻するんじゃねーぞ?」
笑う大樹。
「そうそう!!冬美と草多の大事な日なんだから♪なっ,草多!!」
水湖が草多を見た。
「冬美より目立ったら,なにされるか分からないぞ。」
草多が秋美に笑顔で言った。
「そんなことないわよ・・・。」
苦笑する冬美。
「次に結婚するのは海起かなぁ・・・?」
面白がった目で,笑いながら水湖が海起を見た。
真っ赤になる海起に笑う女の子達。
「いや,次は俺と蒲公英だ。」
有水がさらりと言った。
海起よりさらに真っ赤になる蒲公英。
クスクス笑う栄枝に精霊達。
「やっぱり二人ともそういう関係だったんですねっ!」
「いつプロポーズされたんですか!?」
女の子の妖精達が,蒲公英に群がった。
恋愛事情に詳しくない大樹,水湖,海起は驚いて有水を見つめている。
「まっ,お前の恋も実ると良いな!」
海起を見ながらそう言って有水は笑った。
「ほらほら,手が止まってますよ。」
優しく微笑む桜の声で,妖精達はまた,人間達と共に作業を進めていった。
夕方になり,すべての作業が終わった。
家路につく人間達。
妖精達も,妖精界へ戻っていく。
その場所に,冬美は残っていた。
微かな声で冬美が呪文を唱えると,小さな氷の花束が現れ地面に置かれた。
「氷河・・・。あなたが居たところ,もう氷の世界ではなくなってしまった。けど・・・,人間達がこんなに植物を植えてくれたよ。・・・守我を許すことはできないかもしれない。けど,守我が今頑張っているのは事実だから。それは認めたい。・・・氷河・・・・。私,明日草多と結婚するよ。・・・・本当に,本当に感謝してるよ。」
冬美の目から涙がこぼれた。
「私・・・今,幸せだよ。辛くて辛くて,消えてしまいたくなった日も沢山あった。でも,私,今心から笑えるよ。氷河・・・・・。」
そう言ってしばらく冬美はその場に立っていた。
そして,ゆっくりと妖精界へ戻っていった。
冬美の様子を遠くから見つめている二人の影があった。
有水と栄枝だ。
二人は冬美のいた場所に近づき,冬美の置いた氷の花束を見た。
「あの日を思い出し,感謝します。私は幸せですって意味の花言葉がある花束だな。」
有水が微笑んだ。
「あぁ・・・。冬美らしい。」
栄枝も微笑む。
「妖精達,みんなお前が結婚することにびっくりしてたな!」
栄枝が笑いながら言った。
「お前もそろそろ考えたらどうだ?」
いたずらっぽく笑う有水。
二人は空を見上げた。
空は,夕焼けの綺麗な赤色で染められていた。
それから数ヶ月がたち,人間界に春が来た。
その日,フラワー・ドリーム主催のボランティアに守我と由岐は参加していた。
もちろん夢華と優姿,そして取材に来ている信時が居る。
ボランティアの内容は,元は氷の世界だった場所。守我の兵器により,赤と黒の世界になった場所への植林だ。
夢華の施設の子供達,その子達の友達,保護者,そしてフラワー・ドリームのメンバー達により木の苗や花,水,土,肥料などが運ばれていた。
一つ一つ丁寧に,植物を植えていく。
その中で,ひときわ一生懸命働き汗を流していたのが守我だった。
守我は空を見上げた。
青い空が広がっている。
子供達の笑い声が,その場所一帯に響き渡っていた。
子供達がはしゃぎ,笑う様子を見て守我は心から微笑んだ。
自分のしてきた事への後悔は消えない。
思い出すだけで恐ろしくなり,寝られなくなる。
そのたびに夢華の言葉を思い出し,守我は前へと進んでいた。
今,国とフラワー・ドリームは協力し,まだまだ課題は残るが少しずつ前へと向かっている。
守我の周りに子供達が集まってきた。
「ねぇ!!守我のお兄ちゃん見て!!僕こんなに上手に木の苗を植えたよ!」
1人の子供が言った。
「守我のお兄ちゃん,私が植えた花の方が上手だよね!?」
別の子供が守我の手をとる。
「みんな,上手だよ。」
笑いながら守我が言った。
「ねぇ見て!!由岐のおじちゃん,僕たちより植えるのが下手だよ!!」
それを聞いて笑う子供達。
少し凹んだ様子の由岐。
「こらっ!!そんなこと言っちゃダメでしょ!!」
夢華が近づいてきて子供達をたしなめた。
「ほらほら,まだまだ植える植物が残ってるぞ。」
優姿も笑いながら言った。
守我は周りを見渡した。
子供達を回り声をかける夢華。
様々な人と協力をして植物を植えていく優姿。
子供達にからかわれながらも笑顔を返す由岐。
その様子を取材する信時に,頑張る子供達。
守我は,大きく深呼吸をしてとびっきりの笑顔になった。
そしてまた,みんなと共に作業に戻っていった。
その場所に,妖精・そして精霊達も居た。
植物が地に根付き,栄えられるよう手助けしていく。
守我の姿を見て,妖精達は微笑んでいた。
「やっと・・・終わったな・・・・・。じじい・・・あたいたち・・・・まだ共存できるよな・・・・。」
秋美が微笑んだ。
「あぁ。できるさ。」
その隣に海起が居る。
「それに,これで何も心配せずに恋愛できるわよねっ!?」
ニヤニヤしながら夏美がちゃかす。
「そうそう。明日はやっと冬美ちゃんと草多くんの結婚式なんだし!!そろそろ・・・ねぇ!?」
睡蓮も飛びながら笑っていた。
「なっ・・・なんだよ!!別に俺は・・・・・。」
赤くなりながら,うつむく海起。
「そんなこと言って。そろそろ素直になるべきですわ。」
鈴蘭も笑っていた。
再雪と春美も笑っている。
当の秋美はそんなことお構いなしに,冬美の所へ行った。
「なぁ冬美!!明日はやっと結婚式だな!!」
秋美が冬美に言った。
うなずきながら微笑む冬美。
「秋美,遅刻するんじゃねーぞ?」
笑う大樹。
「そうそう!!冬美と草多の大事な日なんだから♪なっ,草多!!」
水湖が草多を見た。
「冬美より目立ったら,なにされるか分からないぞ。」
草多が秋美に笑顔で言った。
「そんなことないわよ・・・。」
苦笑する冬美。
「次に結婚するのは海起かなぁ・・・?」
面白がった目で,笑いながら水湖が海起を見た。
真っ赤になる海起に笑う女の子達。
「いや,次は俺と蒲公英だ。」
有水がさらりと言った。
海起よりさらに真っ赤になる蒲公英。
クスクス笑う栄枝に精霊達。
「やっぱり二人ともそういう関係だったんですねっ!」
「いつプロポーズされたんですか!?」
女の子の妖精達が,蒲公英に群がった。
恋愛事情に詳しくない大樹,水湖,海起は驚いて有水を見つめている。
「まっ,お前の恋も実ると良いな!」
海起を見ながらそう言って有水は笑った。
「ほらほら,手が止まってますよ。」
優しく微笑む桜の声で,妖精達はまた,人間達と共に作業を進めていった。
夕方になり,すべての作業が終わった。
家路につく人間達。
妖精達も,妖精界へ戻っていく。
その場所に,冬美は残っていた。
微かな声で冬美が呪文を唱えると,小さな氷の花束が現れ地面に置かれた。
「氷河・・・。あなたが居たところ,もう氷の世界ではなくなってしまった。けど・・・,人間達がこんなに植物を植えてくれたよ。・・・守我を許すことはできないかもしれない。けど,守我が今頑張っているのは事実だから。それは認めたい。・・・氷河・・・・。私,明日草多と結婚するよ。・・・・本当に,本当に感謝してるよ。」
冬美の目から涙がこぼれた。
「私・・・今,幸せだよ。辛くて辛くて,消えてしまいたくなった日も沢山あった。でも,私,今心から笑えるよ。氷河・・・・・。」
そう言ってしばらく冬美はその場に立っていた。
そして,ゆっくりと妖精界へ戻っていった。
冬美の様子を遠くから見つめている二人の影があった。
有水と栄枝だ。
二人は冬美のいた場所に近づき,冬美の置いた氷の花束を見た。
「あの日を思い出し,感謝します。私は幸せですって意味の花言葉がある花束だな。」
有水が微笑んだ。
「あぁ・・・。冬美らしい。」
栄枝も微笑む。
「妖精達,みんなお前が結婚することにびっくりしてたな!」
栄枝が笑いながら言った。
「お前もそろそろ考えたらどうだ?」
いたずらっぽく笑う有水。
二人は空を見上げた。
空は,夕焼けの綺麗な赤色で染められていた。
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