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~大精霊様の決断・・・別れの時・・・~
妖精の国は正午になっていた。
大精霊様の部屋に集まる種子蕾隊。
秋美の目は希望で輝いていた。
まだ間に合う。まだ、希望の光はある。必ず・・・・・。
そう信じていた。
大精霊様が部屋に入ってくるまでは・・・・・・・。
大精霊様は今まで見せたことのない顔をして部屋に入ってきた。
青ざめて絶望した顔・・・・。
誰もが、何も言えずただ大精霊様を見つめていた。
「皆の者・・・落ち着いてよく聞くのじゃ。人間の計画が早まった。人間界の今日、戦争が始まる。もう、人間を変えることはできないかもしれぬのう・・・・・。」
大精霊様の言葉に、秋美が立ち上がった。
「なんだよ・・・・なんだよそれ!!あたい、考えたんだ!!水湖さんの幻術を使って、人間を、あたいらの仕事場へ・・・楠木の下に誘導するんだ!!そしたら・・・そしたら・・・命の尊さが・・・・・必ず分かるって・・・・・・・・」
秋美は泣いていた。
「国のトップの男も、その秘書も、地下室から出る気はないようなのじゃ。秋美・・・よくそこまで考えたのう。間に合わなかったのは誰のせいでもない。」
大精霊様は、ふっと笑顔になった。
「しかし、秋美の案はいい考えだと思うのう・・・。なんとか実行させてやりたいのう・・・・。」
大精霊様はそう言うと、決意を固めたようにうなずいた。
「皆の熱心さを見ての、わしも少し頑張ってみようとずっと考えていたのじゃ。この最悪な状況は、予想できていた。だからの、わしもずっと対策を考えていた。・・・人間の戦争を止める方法はまだ一つだけあるのじゃよ。」
笑顔で言う大精霊様を、全員が驚きの表情を浮かべ無言で見つめていた。
「わしの呪文を使っての、兵器を、雲のはるか上で相殺させるのじゃ。そうすれば少しの間、誰にも被害がない。その少しの間に、人間をなんとかして変えるのじゃ。それでも駄目なら・・・その時が、諦める時だとわしは思うのじゃよ。」
その言葉を聞いた瞬間、精霊たちの顔が青ざめた。
「大精霊様・・・まさかあなたは・・・・・・幻の呪文と言われる、キャンドル<ロウソク>を実行する気ですか・・・?」
桜の言葉に、微笑んでうなずく大精霊様。
精霊たちの顔に、不安が広がった。
冬美の顔も青ざめていた。
「おい、冬美、そのキャンドルってなんなんだよ・・・??」
秋美が冬美に聞いた。
妖精たちが冬美の言葉に耳を傾ける。
ゆっくりと、冬美は説明を始めた。
「妖精界で幻の呪文があるの。それがキャンドル。・・・その呪文は、寿命が近い妖精・もしくは精霊、大精霊が使える呪文で、自分の生きてきた人生すべてを呪文にこめるの。そのこめる思いが強いほど、呪文の力も上がる。その力は私たちからしたら想像もできないほど強い力で、一度だけ、この地球すべてに影響を及ぼせるほどの力を発することができる。・・・・・けど・・・・・けどね、キャンドルを使ったら・・・使った者は、そのまま寿命が来て死ぬんだよ。・・・・・ロウソクは、消える瞬間にひときわ大きな炎を発する。それでこの呪文はキャンドル<ロウソク>って言うんだよ・・・・・・・・。」
震え始めた冬美の肩を、草多が無言で抱いた。
秋美はまた立ち上がって居た。
「じじい!!何考えてるんだよ!!!!!そんなのやめろよ!じじいはまだ元気じゃねぇか!!!!まだ寿命なんて・・・・・。」
叫ぶ秋美。
「大精霊様、私も反対です。妖精界には、まだ大精霊様が必要です。どうか考え直してください。」
桜も立ち上がっていた。
「もう、みんなできることはしました。・・・・もう、もういいじゃないですか。もう誰も犠牲にならなくて・・・・。このまま、この世界で生きましょう。そしてやり直しましょう。」
有水も必死で止めようとしている。
それでも大精霊様は微笑んでいた。
「かつて・・・妖精は人間と共に共存し、この地球を栄えさせてきた。共に必要な存在であった。わしはその頃を知っておる。もしもう一度その頃のように共存することができるのであれば、わしは、その姿を若い皆に見てもらいたい。人間と妖精。どちらも尊い命を持った者じゃ。・・・分かってほしいのう。」
「そんなの・・・わかんねぇよ!!!!」
全員が秋美を見た。全員、歯を食いしばって泣いていた。
「あたい・・・・あたい、じじいが居なくなるなんて考えたくねぇよ!!!だってあたい・・・ガキの時からじじいに迷惑ばっかかけて・・・・。・・・あたい、まだじじいに何にもしてねぇよ・・・・。それなのに・・・それなのに・・・・・・・・。」
泣き叫ぶ秋美の肩を海起が抱いた。
無言で涙を流す海起。
「私、学生時代いつも先生に手がつけられないくらい再雪と喧嘩しては、大精霊様に優しくしかってもらってました・・・。妖精になった今だって、事あるごとに大精霊様を頼っています。・・・大精霊様が居なくなったら、私たちの青春も消えてしまう気がします・・・・・。寿命で大精霊様が逝ってしまうのは納得できます。けど・・・人間を止められるかも分からないのに、命を捨てないでください!!」
泣きながら訴える夏美の言葉にうなずく再雪。
「私だってそうです・・・。ずっと、秋美と学校を抜け出してはさぼって・・・。そのたびに大精霊様が探しに来てくれて・・・・。私が隔離室に入っている時もずっと・・・・ずっと・・・私を、私たちを見捨てずに見守っていてくれました・・・・。私、もうすぐ結婚するんですよ。大精霊様が・・・私たちの結婚式でオーラの融合をしてくれる予定じゃないですか・・・・。結婚が決まったとき、楽しみにしてるって、言ってくれたじゃないですか。」
冬美も立ち上がっていた。
秋美と草多が、冬美の言葉にうなずく。
「皆にそこまで想ってもらっている、わしは幸せじゃ。じゃからこそ、最後まで皆にわしの姿を見ていてほしいのじゃ。皆がなんと言おうと、わしの決意は変わることはない。わしにとって、皆は・・・大事な未来を担っていく、大事な仲間じゃ。最後はカッコイイ姿を見せたいのじゃよ。」
大精霊様は相変わらず微笑んでいる。
「さて、緊急じゃから簡単ではあるが、新しい大精霊の認定の儀式をするでな。四季の精霊もじゃ。桜、冬美、前に出るのじゃ。」
大精霊様の強い言葉に、泣きながら前に出る桜。冬美もそれに従った。
「桜の精であり、四季の精霊である桜・・・この者を、妖精界の長として認定する。」
大精霊様は桜の前でそう言うと、桜に向かって呪文を唱えた。
桜のオーラが、一段と強くなっていく。髪は一層綺麗な金髪になっていた。
「・・・ありがとうございます」
桜が頭を下げた。
大精霊様は続いて冬美の前に立った。
「冬の妖精、冬美。この者を、妖精界の四季の精霊として認定する。」
また大精霊様が呪文を唱える。
冬美の髪の毛は銀色の濃さを増していく。
栄枝が、涙を流しながら拍手をした。
次々と、全員が拍手をしていった・・・・。
その様子を、大精霊様はいつもの笑顔で見守っていた。
「さて、皆の者。人間界にいこうかの。わしの最後の姿を、しっかり見届けるのじゃ。」
大精霊様が歩き始めた。
もう、誰も何も言わなかった。
全員が黙って、大精霊様に従っていた。
妖精の国は正午になっていた。
大精霊様の部屋に集まる種子蕾隊。
秋美の目は希望で輝いていた。
まだ間に合う。まだ、希望の光はある。必ず・・・・・。
そう信じていた。
大精霊様が部屋に入ってくるまでは・・・・・・・。
大精霊様は今まで見せたことのない顔をして部屋に入ってきた。
青ざめて絶望した顔・・・・。
誰もが、何も言えずただ大精霊様を見つめていた。
「皆の者・・・落ち着いてよく聞くのじゃ。人間の計画が早まった。人間界の今日、戦争が始まる。もう、人間を変えることはできないかもしれぬのう・・・・・。」
大精霊様の言葉に、秋美が立ち上がった。
「なんだよ・・・・なんだよそれ!!あたい、考えたんだ!!水湖さんの幻術を使って、人間を、あたいらの仕事場へ・・・楠木の下に誘導するんだ!!そしたら・・・そしたら・・・命の尊さが・・・・・必ず分かるって・・・・・・・・」
秋美は泣いていた。
「国のトップの男も、その秘書も、地下室から出る気はないようなのじゃ。秋美・・・よくそこまで考えたのう。間に合わなかったのは誰のせいでもない。」
大精霊様は、ふっと笑顔になった。
「しかし、秋美の案はいい考えだと思うのう・・・。なんとか実行させてやりたいのう・・・・。」
大精霊様はそう言うと、決意を固めたようにうなずいた。
「皆の熱心さを見ての、わしも少し頑張ってみようとずっと考えていたのじゃ。この最悪な状況は、予想できていた。だからの、わしもずっと対策を考えていた。・・・人間の戦争を止める方法はまだ一つだけあるのじゃよ。」
笑顔で言う大精霊様を、全員が驚きの表情を浮かべ無言で見つめていた。
「わしの呪文を使っての、兵器を、雲のはるか上で相殺させるのじゃ。そうすれば少しの間、誰にも被害がない。その少しの間に、人間をなんとかして変えるのじゃ。それでも駄目なら・・・その時が、諦める時だとわしは思うのじゃよ。」
その言葉を聞いた瞬間、精霊たちの顔が青ざめた。
「大精霊様・・・まさかあなたは・・・・・・幻の呪文と言われる、キャンドル<ロウソク>を実行する気ですか・・・?」
桜の言葉に、微笑んでうなずく大精霊様。
精霊たちの顔に、不安が広がった。
冬美の顔も青ざめていた。
「おい、冬美、そのキャンドルってなんなんだよ・・・??」
秋美が冬美に聞いた。
妖精たちが冬美の言葉に耳を傾ける。
ゆっくりと、冬美は説明を始めた。
「妖精界で幻の呪文があるの。それがキャンドル。・・・その呪文は、寿命が近い妖精・もしくは精霊、大精霊が使える呪文で、自分の生きてきた人生すべてを呪文にこめるの。そのこめる思いが強いほど、呪文の力も上がる。その力は私たちからしたら想像もできないほど強い力で、一度だけ、この地球すべてに影響を及ぼせるほどの力を発することができる。・・・・・けど・・・・・けどね、キャンドルを使ったら・・・使った者は、そのまま寿命が来て死ぬんだよ。・・・・・ロウソクは、消える瞬間にひときわ大きな炎を発する。それでこの呪文はキャンドル<ロウソク>って言うんだよ・・・・・・・・。」
震え始めた冬美の肩を、草多が無言で抱いた。
秋美はまた立ち上がって居た。
「じじい!!何考えてるんだよ!!!!!そんなのやめろよ!じじいはまだ元気じゃねぇか!!!!まだ寿命なんて・・・・・。」
叫ぶ秋美。
「大精霊様、私も反対です。妖精界には、まだ大精霊様が必要です。どうか考え直してください。」
桜も立ち上がっていた。
「もう、みんなできることはしました。・・・・もう、もういいじゃないですか。もう誰も犠牲にならなくて・・・・。このまま、この世界で生きましょう。そしてやり直しましょう。」
有水も必死で止めようとしている。
それでも大精霊様は微笑んでいた。
「かつて・・・妖精は人間と共に共存し、この地球を栄えさせてきた。共に必要な存在であった。わしはその頃を知っておる。もしもう一度その頃のように共存することができるのであれば、わしは、その姿を若い皆に見てもらいたい。人間と妖精。どちらも尊い命を持った者じゃ。・・・分かってほしいのう。」
「そんなの・・・わかんねぇよ!!!!」
全員が秋美を見た。全員、歯を食いしばって泣いていた。
「あたい・・・・あたい、じじいが居なくなるなんて考えたくねぇよ!!!だってあたい・・・ガキの時からじじいに迷惑ばっかかけて・・・・。・・・あたい、まだじじいに何にもしてねぇよ・・・・。それなのに・・・それなのに・・・・・・・・。」
泣き叫ぶ秋美の肩を海起が抱いた。
無言で涙を流す海起。
「私、学生時代いつも先生に手がつけられないくらい再雪と喧嘩しては、大精霊様に優しくしかってもらってました・・・。妖精になった今だって、事あるごとに大精霊様を頼っています。・・・大精霊様が居なくなったら、私たちの青春も消えてしまう気がします・・・・・。寿命で大精霊様が逝ってしまうのは納得できます。けど・・・人間を止められるかも分からないのに、命を捨てないでください!!」
泣きながら訴える夏美の言葉にうなずく再雪。
「私だってそうです・・・。ずっと、秋美と学校を抜け出してはさぼって・・・。そのたびに大精霊様が探しに来てくれて・・・・。私が隔離室に入っている時もずっと・・・・ずっと・・・私を、私たちを見捨てずに見守っていてくれました・・・・。私、もうすぐ結婚するんですよ。大精霊様が・・・私たちの結婚式でオーラの融合をしてくれる予定じゃないですか・・・・。結婚が決まったとき、楽しみにしてるって、言ってくれたじゃないですか。」
冬美も立ち上がっていた。
秋美と草多が、冬美の言葉にうなずく。
「皆にそこまで想ってもらっている、わしは幸せじゃ。じゃからこそ、最後まで皆にわしの姿を見ていてほしいのじゃ。皆がなんと言おうと、わしの決意は変わることはない。わしにとって、皆は・・・大事な未来を担っていく、大事な仲間じゃ。最後はカッコイイ姿を見せたいのじゃよ。」
大精霊様は相変わらず微笑んでいる。
「さて、緊急じゃから簡単ではあるが、新しい大精霊の認定の儀式をするでな。四季の精霊もじゃ。桜、冬美、前に出るのじゃ。」
大精霊様の強い言葉に、泣きながら前に出る桜。冬美もそれに従った。
「桜の精であり、四季の精霊である桜・・・この者を、妖精界の長として認定する。」
大精霊様は桜の前でそう言うと、桜に向かって呪文を唱えた。
桜のオーラが、一段と強くなっていく。髪は一層綺麗な金髪になっていた。
「・・・ありがとうございます」
桜が頭を下げた。
大精霊様は続いて冬美の前に立った。
「冬の妖精、冬美。この者を、妖精界の四季の精霊として認定する。」
また大精霊様が呪文を唱える。
冬美の髪の毛は銀色の濃さを増していく。
栄枝が、涙を流しながら拍手をした。
次々と、全員が拍手をしていった・・・・。
その様子を、大精霊様はいつもの笑顔で見守っていた。
「さて、皆の者。人間界にいこうかの。わしの最後の姿を、しっかり見届けるのじゃ。」
大精霊様が歩き始めた。
もう、誰も何も言わなかった。
全員が黙って、大精霊様に従っていた。
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