共に生きるため2

Emi 松原

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~改めて幸せを・・・残りの数日・・・~

「冬美、体調はどうだ?」
草多が病室のベットで横になっている冬美に聞いた。
「大分いいよ・・・。」
微笑んで答える冬美。
草多も軽く微笑む。

【コンコン】

病室のドアをノックする音がした。

ドアが開いて、春美、夏美、秋美、睡蓮、鈴蘭が入ってくる。

「冬美、調子はどう??少しはマシになった?」
夏美が聞いた。
「大丈夫。」
夏美たちにも微笑む冬美。
「草多の調子は?大丈夫なの?」
春美が心配そうに草多に聞いた。
「問題ない。」
うなずく草多。
「よかった!!二人とも回復してるようで!!」
睡蓮が飛びながら言った。
冬美のベッドの周りに座る五人。
「そうそう!!ここにくる途中、有水さんと蒲公英さんが二人で居るの見たの。今日は二人とも仕事はないはずなのに♪」
夏美が楽しそうに言った。
「あの二人は、絶対に仕事仲間以上の関係ですわ。」
鈴蘭が笑いながら言う。
「そうかぁ??別に一緒に居るなんてよくあることだろ?」
秋美が不思議そうに言った。
そんな秋美を見てため息をつく夏美。
「まったく。本当に秋美は恋愛音痴ね。」
そう言って、夏美はニヤけた。
「しかも、この間有水さん、指輪ショップに居たんだよ!!絶対あの二人できてるって!!!」
睡蓮が笑う。
「指輪ショップで、なんでできてるんだ??そりゃあ二人で居たらできてんのかもしれないけどさ・・・。」
首をかしげる秋美。
「一人で指輪ショップに居るってことは、婚約指輪を買おうとしていた可能性が高いってことですわ。二人で居たら、結婚指輪の可能性が高いの。」
鈴蘭が秋美に教える。
「婚約指輪かぁ・・・・・。」
考える秋美。
「そういえば!!草多は冬美になんてプロポーズしたの?」
草多の方を向いて、笑う夏美。
「は・・・?」
慌てる草多。
「もぉ、夏美。いじめちゃだめだよ。」
笑う冬美。
「だってぇ!!知りたいんだもん♪」
笑いながら、夏美は冬美の方を向いた。
(そう言えば俺、ちゃんと冬美にプロポーズしたっけ??)
会話を聞きながら、草多は考えていた。
冬美との結婚指輪はもう買ってある。少し太めの大きさで、葉っぱと雪の結晶が彫ってある。葉っぱの所にはぺリドットという宝石が埋め込まれていて、雪の結晶の所にはダイヤが埋め込まれている。
冬美の方はぺリドットが大きく、草多の方はダイヤが大きめだ。
ぺリドットとは緑の宝石で、宝石の象徴の中の一つに夫婦の幸福という意味がある。これは草多をイメージしている。
ダイヤは冬美のイメージで、象徴は清浄無垢。純粋・不滅だ。
結婚式に使うため、今は大切に保管してあった。
(そうか・・・。冬美とは自然な流れで当たり前のように結婚へ向かっていたから、改めてプロポーズをしなかったんだ・・・。二人で結婚指輪は買ったけど、婚約指輪は買ってなかった・・・・。)
考える草多。
「それでねっ・・・夏美ちゃんたら・・・・・」
女の子たちはもう別の話題で盛り上がっている。

しばらくすると、冬美の主治医がやってきた。
そのため帰っていく女の子たち。

主治医の診察が終わった。
冬美はかなり回復してきているようだ。
「冬美、よかった。安心したよ。」
草多が冬美に優しく微笑んだ。
「うん。もうちょっとしたら家に帰れるね。」
笑う冬美。
うなずく草多。
「冬美、ちょっと大聖堂に行って来ていいか?すぐ戻るから。」
草多が冬美に聞いた。
「いいよ。最近私につきっきりだったんだから。気にしないで。気をつけて行ってらっしゃい!!」
笑いながら冬美が言った。
「少しでもなんかあったら、すぐ連絡してな。」
そう言うと草多は病室の外へ出て行った。


草多は指輪ショップの前に立った。
男一人で入るのは、なんとなく緊張する。
(有水さん、よく一人で入れたよなぁ・・・。)
そう思いながらも、草多はショップの中に入っていった。


「いらっしゃいませ。あら、草多さん。今日はどうしたんですか?冬美さんへのプレゼントですか??」
ショップの店員が草多を見て言った。
「いや、婚約指輪を買いたくて来たんですけど、何かいいのないですかね?」
草多が店員に聞く。
「婚約指輪?それでしたら、こちらの展示になります。」
店員に教えられた通り展示場所に行く草多。
そこには沢山の婚約指輪が展示されてある。
一つ一つをじっくり見ていく。
(どんなのがいいかな・・・。冬美の象徴として透明なのにするか・・・。けど、色物も絶対に似合うしな・・・・・。)
悩む草多。

ふと、草多の目が一つの指輪に止まった。
銀色のふちに、輝く緑色の宝石がついている。
草多はその指輪を手に取った。
宝石の中に、何か書いてある。
草多は宝石をのぞきこんだ。
そこには、赤い実と葉っぱが描かれていた。

「綺麗でしょう、その指輪。」
店員が草多に話しかける。
「その緑の宝石は、エメラルドなんですよ。エメラルドの象徴の一つに、幸運・幸福という意味があるんです。そして中に描かれている実はホーリーと言って、象徴の一つに永遠の輝きという意味があるんですよ。まさに、結婚指輪にピッタリでしょう?それに緑は草多さんの象徴でもありますから、お似合いだと思いますよ。」
笑顔で説明する店員。

指輪をじっと見つめる草多。
(永遠の輝き・・・。幸運・幸福か・・・・。)
「すみません、じゃあこれください。」

指輪を買って、草多はショップを後にした。



病室へ戻る草多。
冬美はスースーと眠っていた。
改めてプロポーズするなんて、緊張する。
「ん・・・・ん~」
草多の気配を感じ、目を覚ます冬美。
「あ、おかえり草多・・・。」
体を起こす冬美。
「大丈夫か?」
そう言いながら冬美のベットに腰掛ける。
「うん!!少し寝たから、とっても調子がいいよ♪」
笑顔で冬美が言った。
「草多が大聖堂に行ってから、人間と共存する方法を一生懸命考えたの。けどなかなかいい考えが浮かばなくて・・・そのまま寝ちゃってたんだ。」
続ける冬美。
「秋美達は何か考えたのかな?」
草多が冬美の肩を抱きながら言った。
草多の胸に頭をおく冬美。
「自然の素晴らしさを伝えたらってずっと言ってるけど、具体的な方法が思い浮かばなくてイライラしてるみたい。みんなそれぞれ、今一生懸命考えてるけどね。なかなか・・・。」
ため息をつく冬美。
「自然の素晴らしさか・・・。・・・・なぁ、冬美・・・妖精の世界の事を一番に考えないといけない今、俺は冬美の事をなにより優先して考えてしまうんだ・・・。人間と共存する道を探すのを選んだのだって、冬美を守るためだ。今の俺は、冬美を守るためなら平気で人間だって見捨てられる。攻撃することだって・・・。俺は種子蕾隊のメンバーとして失格なのかな・・・・。」
冬美を抱く手に力が入る。
「草多・・・・・。失格なんかじゃないよ。・・・ジェネレーションのこと、覚えてる?」
冬美が頭をもたれかけたまま、草多を見上げて聞いた。
「当たり前だ。」
「あの時、ジェネレーションのメンバーはみんな仲間のために、仲間を攻撃して、人間を攻撃してたんだから。・・・馬鹿なことだったのかもしれないけど、みんなそれだけ仲間を守りたかったんだよ。だから、草多の今考えてることって、考えて当たり前のことなんじゃないかなって思う。」
冬美が草多の胸に顔をうずめる。
「・・・どんなことだって、何かを得るには、それ相応の犠牲があるものだと思う。自分の大切なもののためなら、ついそこだけを考えてしまう。けどね、今,私は、人間も妖精も守りたい。・・・本当の笑顔で、草多との結婚式をしたいんだぁ・・・。」
「冬美・・・・・。」

草多は冬美が見ていないのを確認すると、冬美を抱いていないほうの手でポケットから指輪を出した。
そのままこっそり冬美を抱いた手に指輪を持ち替える。

草多は深呼吸をすると、冬美を抱いていた手を離した。
冬美が目を開ける。
冬美と向かい合わせになる草多。
そのまま、草多は冬美の左手を持つと、その薬指に指輪をはめた。
「そうた・・・・・・?」
何か言いたそうな冬美をよそに、草多は正面から思い切り冬美を抱きしめる。

「冬美・・・。今更改めて言うのもなんなんだけど・・・。俺は、冬美をこの世で一番愛してる。冬美の存在が、俺の幸せに繋がっていくんだ。何があっても、俺が絶対に守っていくから・・・だから、一生俺についてきてくれ。」
草多は胸の中の冬美を見た。
冬美がゆっくりとうなずく。
「草多・・・・・・ありがとう・・・・・。」
冬美の目から、涙がこぼれた。
草多は片手で冬美の涙を拭うと、そのまま冬美のあごを上げ、優しくキスをした。
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