真の敵は愛にあり

Emi 松原

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もう一つの覚悟の魔法

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こいつらが今やっていることは、本当に凄いと思う。だけれど……こいつらは、アマナに暴力を振るい、武器を向けた。
 その時、店の扉が開いた。
「いらっしゃいませ……」
「邪魔するよ」
 入ってきたのは、エミルさんと、ヨネルさんだった。
 慌てて、俺達はお辞儀をした。
「頭あげな。……来てたんだな」
 エミルさんが、俺たちに向かって言った。
 アマナが、エミルさんに、無言で頷いた。
 エミルさんがアマナを見た。
「……教えても良いという解釈で良いか?」
 エミルさんが、真剣な顔でアマナに聞いた。
「はい。コルの夢の為には、もう一つの覚悟の魔法が必要だと思いました。……私が、ヨネルさんのように、コルの支えになってみせます」
 アマナがハッキリと言った。
 なんの話だろう?
「じゃあ、今日は、子供達への勉強も訓練も、あんた達に任せるよ」
 エミルさんが、お辞儀をしたままの三人に言った。
 そして俺たちを見た。
「四人とも、ついてきな」
 エミルさんはそう言うと外に出た。ブランとモカが、俺たちを気にしながら、後に続く。俺も、アマナの車椅子を押して外に出ようとした。
「待ってくれ!コル、アマナ!」
 三人組の言葉に、俺とアマナは振り返った。そして驚いた。三人は、この国で一番格式の高い……エミルさん達にするお辞儀を、俺たちにしていたのだ。
「コル、アマナ。君たち二人には、本当に悪いことをしたと思っている。ごめん。許されることではないことも分かっている。許してくれとも言わない。だけれど……君たち二人のおかげで、今ここで、こうしていられることだけ伝えたい。コル、君の夢は馬鹿らしいと思っていた。だけれど、今はそう思っていない。もし、何か力になれることがあるのなら、力になりたいと思っている。今日は来てくれてありがとう。二人を応援している」
 俺は、しばらく何も言えなかった。
 だけれど、嘘はつきたくないと思った。
 正面からお辞儀をしている三人。あの時、俺に騎士団の志望を取り消すように迫った三人。本気の決闘を初めて行った三人……。
 俺は、少しずつ言葉を紡いだ。
「俺は……君たちを許すことはできない。俺にしたことは、もうなんとも思っていないけれど、アマナに暴力を振るったことだけは、絶対に許せない。だけれど……君たちとの決闘がなければ、俺が覚悟を決められなかったのも事実だし、君たちが今こうして頑張っているのも事実だ。だから……君たちのやっていることは、きっと素晴らしいんだと思う」
 三人は、頭を上げなかった。
「また、来させてもらうわ。文、嬉しかった。またくれたら嬉しいわ」
 アマナが笑顔で、空気を変えてくれた。
 そして俺とアマナは店を出た。
 三人は、ずっとお辞儀をしていた。
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