真の敵は愛にあり

Emi 松原

文字の大きさ
上 下
28 / 83
配属・戦場へ

1-1

しおりを挟む


俺たちは次の日から、時間の空いている第一騎士団の人たちに、次々と決闘を申し込まれていた。
 俺は、何かが吹っ切れていて、騎士団の中でも一番強い人たちの胸を借りて訓練できると思って、積極的に決闘を受けていた。
 戦法はいつもアマナがすぐに組み立てていてくれていたし、ブランも、俺と前に出て戦うタイミングが、回数を重ねるごとに声を出さなくても動きだけで合うようになったし、モカの魔力供給が絶えず行われていた為、強い人たちとの決闘は、目に見えて俺たちチームの連携を上達させていた。
 もちろん、魔獣を倒す訓練も行った。戦場では、レッド王国は魔獣で攻撃してくるのだから、魔獣の特徴も覚えないといけない。実際には、もっと大きくて力の強い魔獣と戦わなければいけない。俺たちは、教官にレベルを調整してもらいながら、合同訓練を重ねた。
 一日一日があっという間に過ぎて、ついに明日、俺たち新人の配属が発表される。そうすれば、俺たちは戦場に出ることになる。
 正直、不安はあまりなかった。それだけ、ブランとモカ、そしてアマナといることが安心できたのだ。だけれど、ブランとモカは少しソワソワしている様子だ。アマナは、いつものように笑っている。
「ブラン、モカ、不安なのか?」
 俺たちは、俺の部屋で集まって話をしていた。
「不安ではないが、何か、計算外のことが起きるような気がしてならない。ここに来てから、計算外のことばかりだ」
 ブランが難しい顔で言った。
「計算外のことって?」
 俺は首をかしげると、ブランを見た。
「新人は、第三騎士団以下に配属されるのが妥当なはずだ。だけれど、俺たちは第一騎士団の人間と決闘している。それは配属を決める特別騎士団の方々の耳に入っているはずだ。もし俺たち新人が第三騎士団以上に配属されるなんてことがあったら、計算外だということだ」
 ブランが説明してくれた。その説明に、モカが激しく頷く。
「その通りですっ!コルとアマナちゃんは勧誘者ですっ!第三騎士団以上に配属される可能性は十分にありますっ!そうすれば、ますます注目の的になってしまうのです……」
 それを聞いて、アマナがクスクスと笑った。
「あら、別に良いじゃない。だって、コルは特別騎士団を目指しているのよ?上の部隊に入れるなら何も問題ないわ。それに、私ずっと三人を見ていたけれど、あなた達は本当に良いチームだと思うわ。だから、どこに配属になっても胸を張っていて」
「アマナ、実は俺、よく分かってないんだけれど……。部隊が上になるほど偉いことは分かっているんだけれど、もっと具体的には、何が違うんだい?」
 俺はアマナに向き直った。
「部隊が上になるごとに、最前線に立つことになるのよ。つまり、戦闘で最も危険に晒されるわ。だけれどその分、特別騎士団の人たちと近い位置で戦うことができるわ」
「そっか……」
 沈黙が続いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈 
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

余命六年の幼妻の願い~旦那様は私に興味が無い様なので自由気ままに過ごさせて頂きます。~

流雲青人
恋愛
商人と商品。そんな関係の伯爵家に生まれたアンジェは、十二歳の誕生日を迎えた日に医師から余命六年を言い渡された。 しかし、既に公爵家へと嫁ぐことが決まっていたアンジェは、公爵へは病気の存在を明かさずに嫁ぐ事を余儀なくされる。 けれど、幼いアンジェに公爵が興味を抱く訳もなく…余命だけが過ぎる毎日を過ごしていく。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

虐げられた令嬢、ペネロペの場合

キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。 幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。 父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。 まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。 可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。 1話完結のショートショートです。 虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい…… という願望から生まれたお話です。 ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。 R15は念のため。

処理中です...