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側で寄り添う
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しおりを挟む「スタウロ、どう? 甘みを少し控えて、苦みを残したから、スタウロの好みだと思うんだ。ルカは、もう少し、甘みが欲しいって、言っていたけれどね」
僕の言葉に、スタウロが、小さく鳴きながら、僕が差し出した果物の料理を、勢いよく食べてくれる。
「美味しい? 良かった!!」
僕は、そう言いながら、スタウロを撫でる。
スモ爺が、逝ってしまってから、僕は、スモ爺のいなくなった、ぽっかり空いた場所を見るたびに、泣いていた。そんな僕に、ルカやチィ、エミリィさん、ライキさん、ノルさん、キラさん、国の人たち、みんなが、僕に寄り添って、支えてくれた。そして、スタウロは、毎日、僕と共に、時間を過ごしてくれて、ライキさんも、スタウロのことを、任せてくれている。
「そうそう、今日は午後から、ライキさんに、スモ爺が託してくれたうろこを、加工してもらうんだ。僕、魔石を加工するところを見るのは、はじめてだ。エミリィさんと、ルカも、新しい魔石が欲しいらしくて、来てくれるんだって」
僕の言葉を、スタウロは、じっと聞いてくれて、小さく鳴いて、答えてくれる。
「そういえば、スタウロのうろこの魔石の色は、スモ爺に似ているね」
「スタウロの、うろこの魔石は、スタウロライト。石言葉は、強い保護力、結束。守りや魔除け、悪夢を祓ったり、天と地を結ぶとも言われているわね」
後ろから、エミリィさんの声が聞こえて、振り向くと、エミリィさんと、ルカが、敷地内に戻ってきていた。
「へぇ……。スモ爺の石は、最強の守護石、安眠だし、なんだか、二匹とも、僕を守ってくれているから、嬉しいな」
そう言いながら、スタウロを撫でると、スタウロは、気持ちよさそうに目を細める。
そのまま、僕たちは、ライキさんが使っている、工房へと向かったのだった。
「で、どんなアクセサリーが良いか決めたか?」
ライキさんの言葉に、僕は、笑顔で頷いた。
「色々、みんなに相談もして、考えたんですけれど、いつでも身につけておける、首飾りが良いかなと思ってます。後、この時計も一緒に、首からさげたいんですけれど、できますか?」
僕は、ポケットの中から、あの金色の懐中時計を取りだした。
この時計は、いつも、僕のポケットの中に入っている。忙しい毎日で、見ることを忘れていたけれど、スモ爺が死んでからというもの、毎晩、握りしめて、眠っている。
カチカチと進む針が、立ち止まってはいけない、と伝えてきている気がして。
「じゃあ、スモ爺の魔石を使って、この時計も身につけられる、首飾りにするな」
ライキさんの言葉に、僕は頷いて、時計と、スモ爺のうろこを渡す。
受け取ってくれた、ライキさんの顔色が、突然変わった。驚きのような、困ったような、悩んでいるような……。
「エミリィ、ちょっと」
声をかけられずにいると、ライキさんは、他の魔石を見ていた、エミリィさんを呼ぶと、時計と、スモ爺のうろこを渡す。エミリィさんも、驚いて、ライキさんを見た。
「これ……。時計と、うろこが、共鳴してる……?」
エミリィさんの言葉に、ライキさんは、黙って頷いた。
「共鳴……ですか?」
ルカも、僕の隣に来ていた。
「共鳴って?」
「魔石同士が、そうね、片方の力を使うと、もう片方も強くなることもあるし、相性の良い魔石を使うと、効果が高くなったりもするわ。でも、魔石の共鳴は、同じ龍からとれた魔石や、血の繋がった魔石、つまり、スモ爺とスタウロの関係のような魔石で、多く見られるのよ」
ルカが、分かりやすく教えてくれる。
「……え? じゃあ、その時計には、魔石が……?」
「その可能性が高いわね」
エミリィさんの言葉に、僕は驚いて、何も言えなくなった。
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