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祐介さんの悩み事?
しおりを挟む「マッスル!!」
かけ声と共に、俺は軽トラに野菜を乗せる。
「ほんじゃあ、いきいきカフェに持ってってくるけん!!」
軽トラの運転席の扉を開けながら、俺は美沙さんに声をかけた。
「うん、気をつけて。うちはこれ片付けたらお店にいくけん」
「分かった。そっちも気をつけて」
俺は美沙さんにそう言うと、軽トラでいきいきカフェへと向かう。
美沙さんは、吉岡のおじさんと、俺と一緒に畑をすると同時に、あのお店でも継続して働いている。
いきいきカフェは、最近お客さんが増えて活発になってきたと同時に、観光地と合わせて小さなイベントも開催するようになった。
これは、祐介さんが情報収集してネットで宣伝しているお陰だ。
それに、ののさんのアイデアで、地域でのイベントも開催している。それも小さなものだけれど、準備段階から知っている俺は本当に凄いと思っている。
「お疲れ様です!」
俺は裏口から、野菜のカゴを持っていきいきカフェへと入った。
「あ、陽介さん!お疲れ様です!聞きましたよ!!ついに、神楽団の定期公演で舞うらしいですね!!」
祐介さんにそう言われて、俺は思わず顔面筋が赤くなった。
今までずっと裏方で手伝いながら練習をしていた俺だったが、団長さんに、今度の定期公演でついに舞うように言われたのだ。
定期公演は、その神楽団が好きな人が多く見に来る。だからこそ若手として見られるのは怖いけれど、俺は凄く楽しみだった。
「祐介さんも、資格試験がもうすぐじゃね」
俺が言うと、祐介さんは苦笑する。
「勉強量が足りないんじゃないかって不安ですけど……」
祐介さんはそう言うけれど、祐介さんはいつも俺と一緒に勉強を続けていた。
店内では、ののさんが笑顔で接客している姿が見える。
うん、今日もいつものように平和だ。
夕方、俺はいつものように文夫じいちゃんの部屋だった場所で、祐介さんと勉強をしていた。
でも、どこか祐介さんの元気がない。どうしたのだろう。筋肉痛だろうか。
「祐介さん?どしたん?」
俺の言葉に、ぼうっとしていた祐介さんは、ハッとした顔をする。
「あ……すみません、考え事をしていて……」
「考え事?」
俺の言葉に、祐介さんが頷いた。
「お疲れ様、お茶持って来たよ……ってどしたん、二人して深刻な顔して」
タイミング良くふすまが開いて、美沙さんが驚いた声で言った。
「あ……いや……」
祐介さんが言葉を濁す。
「どーせ、ののちゃんのことじゃろ?」
美沙さんが、少し面白がるように言って、ふすまを閉めて俺の隣に座った。
有り難くお茶を受け取って、祐介さんと美沙さんを交互に見ていると、また祐介さんがため息をついた。
「ののは……?」
「次の地域イベントの交流会の打ち合わせに行ったよ。でも考えこんどったけえ、絶対何かあったとは思った」
美沙さんの言葉に、祐介さんは何処か安心したように、参考書の下から何冊もの雑誌を取り出した。そして、俺たちの前に置く。
「……結婚式?」
見慣れないその文字に、俺の頭の筋肉がはてなで埋め尽くされた。
「実は……ののに結婚式の話を出したんです。僕なりにこういうのも読んで……。お義父さんやお義母さんも楽しみにしていると思ったし……。でも、ののは、結婚式なんてしなくて良いって……」
「理由はなんて?」
美沙さんが、祐介さんを真っ直ぐに見ながら聞いた。
「お金も時間もかかるから面倒くさいと言ってはいますが……」
そう言って、祐介さんは下を向いた。
「分かっているんです。本当は、僕に気を遣っているって。僕が方言を話さないのは、カフェのお客さんと交流しやすいようにでもありますが、元々こっちで友達が少なかったのも大きいし、就職を機に、大学時代の友達とも疎遠になっています。それに向こうから逃げて来たのもある。だから、僕が傷つく可能性があることを避けようとしてくれているって」
「……」
俺と美沙さんは黙って話を聞いた。
「でも、ののは本心では結婚式をしたいんじゃないかと思って。だって、この雑誌……置いてあるのを見るたびに、ののは目で追っていたんです。」
そこまで言って、祐介さんはまたため息をついた。
俺は、目の前に積まれた雑誌を適当にパラパラと開いてみた。
うむ、全く分からない。
お金のなんちゃら、挨拶のなんちゃら、マナーのなんちゃら、筋肉が混乱を起こしている。
美沙さんが、少し考えるように、別の雑誌を手に取っていた。
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