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初恋、失恋、そして災害
一瞬で始まり終わる恋。
しおりを挟む午後、俺はじいちゃんと歩いて、新しくオープンを控えているという店に行った。
ログハウスのような、お洒落な木でできているお店。
吉岡のおじさんの娘さんが、カフェを始めるらしい。
その向かいには、結城さんが働いている農業用品や、直売所があるお店。カフェでは、ここの野菜やお米を使うと言っていた。
「あ、陽介さん、来られてたんですね」
中から、仕事場の制服を来た結城さんが出てきた。俺は、少し驚いた。
初めて会った時とは、比べものにならないくらい、キラキラしている。
働いて、筋肉でもついたのだろうか?
結城さんは、俺たちに挨拶すると中へ戻っていく。
「あ、ツネオさん。それと……陽介さんですね。お手伝いに来てくれると、父から連絡がありました。ありがとうございます」
柔らかい女の人の声が聞こえて、俺は振り返った。
………………。
マッスーーーーーーーーーーーーーール!!
俺の心で、何かが落ちた音がした。
こんなに優しく柔らかく笑っている、綺麗な人は見たことがない。
それに……なんだか、まとっているものがとても素敵なのだ。
他の人とは、見え方が違う。
俺の全身の筋肉が、痙攣しているようだった。
これが……これが、恋というものなのか!?
「本当に助かります。運ぶものが多くて、女の私一人じゃなかなか進まなくて。父は畑もありますし、祖父も祖母も、もう歳ですから」
「な、なんでもします!!」
俺は、思わず大きな声を出していた。
自分の声にびっくりする。
どうしよう、驚かせたかな?
「ふふっ、ありがとうございます。私、ののと言います。よろしくお願いしますね」
「はい!!」
そのまま俺は、ののさんの言うまま、木材を運ぶ。お店は、外観は出来上がっているものの、中はまだ何も揃っていない状態だった。
だから、俺はののさんからリストを貰って、重いものから店の中に運んでいくこととなった。
うん、良い筋トレだし、午前中に腰を痛めない持ち方も吉岡のおじさんから教えて貰ったし、頑張るぞ!!
じいちゃんは、ののさんと話している。
いけないのではないかと思いつつ、思わず耳を傾けてしまうのが人間ではなかろうか。
「……はい。祐介さんは、数日後に戻ってこれるって」
「そうか。えかったのう。(良かったね)夫婦の夢が叶うんじゃけぇ」
「ふふっ、ツネオさん、まだ夫婦じゃなあよ。まだ婚約者じゃけぇ」
……………………。
マッ……ッス…………ル…………。
思わず、思い荷物を落としそうになった。
そうだよな。こんな綺麗な人に恋人がいない方がおかしいじゃないか。
……俺の初恋は、一瞬にして砕け散った。
《クスクス》
《若いって、良いね》
風と共に、あの声が聞こえてくる。
この声の正体はまだ分からないけれど、せめて慰めて欲しい……。
《ねぇ、ちょっと危なくない?》
《うん、注意した方が良いかも》
……ん?
なんだろう。いつもは単語しか聞こえない声が、ハッキリと会話のように聞こえる。
突然の出来事に、俺の心は混乱していた。
一目惚れで恋をして、一瞬で失恋してすぐこの声……。
一体何なんだ?
まぁ、帰りにじいちゃんに話せば良いか。
そう思って俺は荷物運びに戻ったのだった。
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