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指輪・思惑
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「おかえりなさい。ラネンさん」
マスター室に入ってきたラネンに、キラが笑顔で言った。
「ただいま。ありがとう、キラ。エミリィの監視役を任せてしまってすまなかった」
「問題ない……と言いたいですが」
キラが、優しく苦笑した。
キラの視線の先には、イライラしながら、何か作業をしているエミリィがいる。
「……どうしたって?」
ラネンが、ため息をついた。
「国王様が、舞踏会の為に、ドレスを何着も送って下さったのですが……それが気にくわないようで……」
キラが、優しく苦笑したまま答えた。
「だって!!いくらなんでもこれは酷いわよ!!父様の方が、私を嫁に行かせる気がないのはよーーく分かった!!だけれど、こんな子供っぽいドレスを人前で着れるわけないでしょ!!デザインを変えて、直接職人に作り直してもらうわ!!」
エミリィは、怒りながらドレスのデザイン画に直しを入れている。
無言で覗き込むラネン。
「直すのは良いけれど、そんなに露出することないだろ」
エミリィが、ムスッとした顔でラネンを見た。
「じゃあ、俺はそろそろ行きますね」
「いや、すまない。キラにも聞いて欲しいことがあるんだ」
ラネンの言葉に、キラが不思議そうな顔をした。
エミリィも、手を止めて、不思議そうにしている。
「今日、親父のところに行って話をしていたら、外から、ルトとリルの気配がした。エリィ姫様のところにでも来ていたんだろう」
無表情で言うラネン。
キラが、少し心配そうな顔をする。
「あいつらに、何を聞かれたの?」
エミリィは、たかがそんなことかと言わんばかりに、ドレスの直しに戻りながら言った。
「親父の、いつもの口癖の部分を聞かれただろうな」
ラネンの言葉に、キラが、やっぱりと小さく呟き、ため息をついた。
エミリィは、また顔を上げた。その顔は、不気味に、楽しそうに笑っていた。
「マスター、さすがに意地悪しすぎでは?」
キラが、不安そうにエミリィに言った。
「なんで?これは私のせいじゃないし。それに、本当のことだし?」
キラが、真剣な顔でエミリィを見た。
「あの子達を、どこまで悩ませる気ですか」
「それ、わざわざ聞く?」
「わざわざ聞くんです」
「とことんに決まってるでしょ」
エミリィの言葉を聞いて、キラは、ため息をつきながらも、優しく苦笑した。
「あなたは本当に、昔から変わりませんね」
「それ、今の私には、怒りに触れるんだけど」
エミリィが怒った声で、ドレスのデザイン画をトントンと指で叩いた。
「それはすみません。だけれど、本当に露出は控えられた方が良いですよ。シーク王子様と踊らないといけないのですし、あなたを殺せる唯一の方のお怒りを買いますよ」
キラがわざとらしく笑って言うと、ラネンに合図をして、部屋を出た。
「……」
「無言で見られたら、怖いんだけど」
「……そんなに露出する必要があるか?」
デザイン画を見ながら言ったラネンに、エミリィが不機嫌な顔をした。
「だって、エリィはどうせ清楚にするんでしょ。だったら私は大胆に……」
そこまで言うと、エミリィは、ラネンの顔を見て、言葉を切った。
「その姿を見るのは、俺だけで十分だと思うけれど」
無表情で、だが、不機嫌なオーラをまとったラネンが言った。
「……しょうがないわねぇ!!」
エミリィは観念したように叫ぶと、またドレスのデザイン画の直しに戻った。
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