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美雪と早紀

4 異能力2

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「さてと、次は、早紀の番じゃな」

 祥子は早紀を自分の前に立たせようとするが、早紀はあせりながら手を振った。

「わ、私はいいです!あれは、ちょっと勘弁です。NG、NG。絶対ダメ!」

「ダメよ、早紀! ここの身内にさせてもらったんだから、これは義務よ。観念なさい!」

 先程、祥子に唇を奪われてしまった美雪…。自分だけでは絶対不公平だとばかり、早紀に後ろから抱き着ついて、無理やり立たせた。

「ちょ、ちょっと、美雪!
 え、ホントにダメ。祥子さん許して!お願いします!」

 必死の形相で、祥子を拝む早紀。心なしか、顔が青くなってきているようでもある。

 そこまでキスが嫌なのかなと、舞衣も首をかしげた。
 異性にされるのではない。同性からなのだ。但しディープキスだが……。

 ・・・まあ、嫌かもしれない。
 ・・・うん、嫌だろう。

「大丈夫じゃ、早紀。悪いようにはせぬ。まずは、落ち着け!」

 祥子が、早紀の顔を見詰めた。
 早紀は一七五センチと背が高いので、美雪の時のように屈む不要が無い。が、その祥子。早紀を見詰めたまま、当惑した表情となり、さらに首をひねった。

「こ、これは…、何じゃろう…。う~む。分からぬなあ…」

 早紀の顔は完全に青くなり、フラッと倒れてしまいそうになって、その場にへたり込んだ。

「ちょっと、早紀、大丈夫?!」

 真後ろで早紀を捕まえていた美雪が、驚いて坐りながら早紀の背中を支える。
 慎也もあわてて障子を開け、部屋に飛び込んだ。
 早紀は、意識を失ってはいない。が、唇の色まで青紫になっていた。

「ど、どうしたの!」

 慎也の問いに、狼狽ろうばい気味に祥子が答える。

「いや、能力を見ようとしただけじゃ。まだ口づけは、しとらんぞ。それに…。能力が分からぬ」

「へ?」

 慎也と舞衣は、怪訝けげんな視線を祥子に向けた。
 分からないとは、どういうことなのか…。今まで、祥子は対面して凝視した相手の潜在能力を即座に見極め、引き出してきたのだ。
 頭をポリポリ指で掻きながら、祥子は二人の疑問の視線に答えた。

「力は感じるのじゃ。それも、かなりの大きな……。じゃが、何の力かなのかが、分からぬ。ワラワも初めてのことで、混乱しとる」

 舞衣は、早紀の脇へ移動し、美雪と一緒に早紀を支えながら、再度、祥子に視線を向けた。

「ということは、能力を引き出すことは?」

「出来ぬな。分からぬものを無理に引きずり出して、おかしなことになっても困る。ワラワには、手に負えぬ」

 早紀は、だんだん落ち着いてきたようだ。顔に赤みが戻ってきた。少しホッとしたような表情をしているようにも見える。

「大丈夫、早紀? ごめんね」

 早紀を無理に立たせた美雪は、申し訳無いことをしまったと反省しきり…。
 真後ろから、心配そうにのぞき込んでくる美雪に、早紀はうなずいた。

「大丈夫。もう平気よ。ゴメンナサイ。実はアノ日なんで、ちょっと不安定になってるだけよ。もう、ホントに平気」

 そう言って、ウインクして笑顔を見せた。

 が、美雪は、その言い訳を逆に不審に思った。早紀の生理は、ついこの間終わったばかりだったはずなのだ。
 生理不順ということも、あるかもしれないが・・・。


 早紀の体調を気遣って、慎也は早退を勧めた。…雨の所為せいで、暇でもある。
 しかし、早紀は「もう大丈夫」と言って、頑として聞かず、その後も受付に坐り続けた。
 一人だけ先に帰れと言っても無駄だと、その日は、いつもより二時間程早く社務所を閉めることにした。
 参拝者も居なかったので…。
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