5 / 80
美雪と早紀
4 異能力2
しおりを挟む「さてと、次は、早紀の番じゃな」
祥子は早紀を自分の前に立たせようとするが、早紀は焦りながら手を振った。
「わ、私はいいです!あれは、ちょっと勘弁です。NG、NG。絶対ダメ!」
「ダメよ、早紀! ここの身内にさせてもらったんだから、これは義務よ。観念なさい!」
先程、祥子に唇を奪われてしまった美雪…。自分だけでは絶対不公平だとばかり、早紀に後ろから抱き着ついて、無理やり立たせた。
「ちょ、ちょっと、美雪!
え、ホントにダメ。祥子さん許して!お願いします!」
必死の形相で、祥子を拝む早紀。心なしか、顔が青くなってきているようでもある。
そこまでキスが嫌なのかなと、舞衣も首を傾げた。
異性にされるのではない。同性からなのだ。但しディープキスだが……。
・・・まあ、嫌かもしれない。
・・・うん、嫌だろう。
「大丈夫じゃ、早紀。悪いようにはせぬ。まずは、落ち着け!」
祥子が、早紀の顔を見詰めた。
早紀は一七五センチと背が高いので、美雪の時のように屈む不要が無い。が、その祥子。早紀を見詰めたまま、当惑した表情となり、さらに首を捻った。
「こ、これは…、何じゃろう…。う~む。分からぬなあ…」
早紀の顔は完全に青くなり、フラッと倒れてしまいそうになって、その場にへたり込んだ。
「ちょっと、早紀、大丈夫?!」
真後ろで早紀を捕まえていた美雪が、驚いて坐りながら早紀の背中を支える。
慎也も慌てて障子を開け、部屋に飛び込んだ。
早紀は、意識を失ってはいない。が、唇の色まで青紫になっていた。
「ど、どうしたの!」
慎也の問いに、狼狽気味に祥子が答える。
「いや、能力を見ようとしただけじゃ。まだ口づけは、しとらんぞ。それに…。能力が分からぬ」
「へ?」
慎也と舞衣は、怪訝な視線を祥子に向けた。
分からないとは、どういうことなのか…。今まで、祥子は対面して凝視した相手の潜在能力を即座に見極め、引き出してきたのだ。
頭をポリポリ指で掻きながら、祥子は二人の疑問の視線に答えた。
「力は感じるのじゃ。それも、かなりの大きな……。じゃが、何の力かなのかが、分からぬ。ワラワも初めてのことで、混乱しとる」
舞衣は、早紀の脇へ移動し、美雪と一緒に早紀を支えながら、再度、祥子に視線を向けた。
「ということは、能力を引き出すことは?」
「出来ぬな。分からぬものを無理に引きずり出して、おかしなことになっても困る。ワラワには、手に負えぬ」
早紀は、だんだん落ち着いてきたようだ。顔に赤みが戻ってきた。少しホッとしたような表情をしているようにも見える。
「大丈夫、早紀? ごめんね」
早紀を無理に立たせた美雪は、申し訳無いことをしまったと反省頻り…。
真後ろから、心配そうに覗き込んでくる美雪に、早紀は頷いた。
「大丈夫。もう平気よ。ゴメンナサイ。実はアノ日なんで、ちょっと不安定になってるだけよ。もう、ホントに平気」
そう言って、ウインクして笑顔を見せた。
が、美雪は、その言い訳を逆に不審に思った。早紀の生理は、ついこの間終わったばかりだったはずなのだ。
生理不順ということも、あるかもしれないが・・・。
早紀の体調を気遣って、慎也は早退を勧めた。…雨の所為で、暇でもある。
しかし、早紀は「もう大丈夫」と言って、頑として聞かず、その後も受付に坐り続けた。
一人だけ先に帰れと言っても無駄だと、その日は、いつもより二時間程早く社務所を閉めることにした。
参拝者も居なかったので…。
1
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
女子切腹同好会 ~2有香と女子大生四人の“切腹”編・3樹神奉寧団編~
しんいち
ホラー
学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れ、私立の女子高に入学した新瀬有香。彼女はひょんなことから“内臓フェチ”に目覚めてしまい、憧れの生徒会長から直接誘われて“女子切腹同好会”という怪しい秘密会へ入会してしまった。その生徒会長の美しい切腹に感動した彼女、自らも切腹することを決意し、同好会の会長職を引き継いだのだった・・・というのが前編『女子切腹同好会』でのお話。この話の後日談となります。切腹したいと願う有香、はたして如何になることになるのでありましょうか。いきなり切腹してしまうのか?! それでは話がそこで終わってしまうんですけど・・・。
(他サイトでは「3」として別に投稿している「樹神奉寧団編」も続けて投稿します)
この話は、切腹場面等々、流血を含む残酷・グロシーンがあります。前編よりも酷いので、R18指定とします。グロシーンが苦手な人は、決して読まないでください。
また・・・。登場人物は、皆、イカレテいます。決して、マネしてはいけません。
マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかもしれません。
世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、・・・多々、存在してしまうものなのですよ!!
勇者パーティーを追放された俺は腹いせにエルフの里を襲撃する
フルーツパフェ
ファンタジー
これは理不尽にパーティーを追放された勇者が新天地で活躍する物語ではない。
自分をパーティーから追い出した仲間がエルフの美女から、単に復讐の矛先を種族全体に向けただけのこと。
この世のエルフの女を全て討伐してやるために、俺はエルフの里を目指し続けた。
歪んだ男の復讐劇と、虐げられるエルフの美女達のあられもない姿が満載のマニアックファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる