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樹神奉寧団編

63 樹神奉寧団編 私、死ぬの?!

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「しっかりして、有香! 今すぐ人を呼ぶから、待っててね!」

 私から離れようとする百合の手を掴み、引き寄せる。
 あ、イタタ・・・。衝撃がお腹の傷に響くよ・・・。

「百合。大丈夫。行かないで。ここに居て」

 とは言ったものの・・・。
 この傷、実は、かなりヤバいです。一刻も早く救急車を呼ぶ必要があります。
 いや、救急車を呼んでも、無理だな……。出血がひど過ぎるし、これだけお腹の中身をグチャグチャにされちゃったら、お医者さんも手の施しようが無いでしょう。

 それに、そもそも、この教団本部へ救急車なんて呼べる?
 それ、無理ですって。

 ということは・・・、
 私は、もう助からない?

 私に待っているのは、“死”ということ。

 たくさんの人々を殺めてきた私にも、ついに死ぬ時が来ました・・・。

 それならば、親友の百合の腕の中で逝きたい。
 大好きな百合に抱かれながら、安らかな旅立ちを・・・。


 じゃ、なくってですね。

 何の根拠もない。何の確証もない。でも、何故だか、大丈夫だって気がするんです。

 右手を傷口にかぶせる。
 ああ、温かい。自分の手だけど、凄く温かい。それに、痛みが消えてゆく・・・。

「ゲホッ、オエエエ~ッ。オエエエエエ~ッ。オエエエエエ~ッ」

 さっきより更に盛大に血反吐を吐く。百合に掛からないように顔を横へ向けて…。
 酸っぱいゲロというより、すっごく苦くて、排泄物臭も漂う大量の血反吐。強烈に不味い。
 だけど、吐いてスッキリした。痛みも殆どなくなった。

 右手を傷口からどけると・・・。

 傷が無い!

「う、うそ・・・、す、スゴイ!」

 オロオロしながらも私を支え続けてくれていた百合。驚愕の表情で私のお腹を見詰めてる。
 いや、私自身もビックリですよ。

 そうだ、鬼神様が言っていたよ。私は即死状態の傷を負わなければ死なない体だって。
 それ、こういうことなんだ・・・。

「百合、その女を拘束して! 気を失っているだけだと思うから」

「わ、分かった」

 速攻で百合は、転がって伸びている多恵を縛り上げる。あら、鼻血出して気絶してる。まあ、私を刺したんだから、それくらい、どおってことないよね。

「私、まだ体がだるいから、尋問は百合に任せてよいかな?」

「もちろんよ。何でこんなことしたか、キッチリ吐かせるわ」

 何度か頬をひっぱたいて無理やり正気を取り戻させて行った百合の拷問。いや、スゴイと言うか、エゲツナイね。細入衆のやり方かな? 手の指の生爪を一枚ずつ剥ぎ取るの…。直視に耐えない。
 生きている人間の内臓出しちゃうヤツが何を言うって?
 それは、そうですけども・・・。

 多恵は左手小指に続く2枚目、薬指の爪を剝がされたところで音を上げた。

 彼女は、妹の敵討ちに来た・・・のではなくて、私に取って代わって斎巫になろうとしていたのでした。
 斎巫は前任者が死亡した後に一定の儀式を行って次が就任します。私がそうだったように…。
 しかし、なんと、もっと手っ取り早い交代方法があったのです。
 それは、生きている斎巫の生心臓を抉り出して食べるという……。食べた者は、そのまま次の斎巫となって鬼神様が乗り移ります。
 こっちの方が断然簡単だし、余計な供物も要らないよ!
 実際のところ、過去にはこの方法で交代したという例も結構あったみたい。

 多恵は、この方法を教主から聞いたと言う。
 彼女、教主の愛人の一人だったのです。最近はアイツ、毎日彼女の元へ通っていたみたい。
 浮気者め、許しがたし!!

 なんですって? 私なんかよりも多恵を新しい斎巫にして、正式な妻に迎えたいだなんて言っていたって?!

 それで、この方法を教えただなんて、それじゃあ、アイツが黒幕!!

 ん? 彼からやれとは言われていない? あくまで方法を教わっただけで、私の判断で決行したですって?
 いや~、それ、上手く誘導されてただけでしょうに。
 とにかくアイツは、許せない!!

 アイツ、今何してるのかな?と思ったら、鬼神様が教えてくれました。(鬼神様は霊体だから、どこでも即座に見に行けるもんね)
 部屋で、こっちの様子を頻りに気にしているって。
 やっぱり、こうなるように誘導してたに違いない。間違いなく、クロですよ。どうしてくれよう…。

 だけども、その前に、実行犯のお仕置きです。生贄として来ていますので、キッチリ生贄にはなってもらいますが、普通に屠殺するんじゃあ、私の気が晴れない。
 アイツの愛人ですし、私を殺して斎巫になり替わろうとしたんですからね…。
 よし、生贄なんだから、あれです。

 逆さ吊り!!

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