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樹神奉寧団編
33 樹神奉寧団編 <挿入話 柴田百合>
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<挿入話>
・・・柴田百合・・・
―――――――――
私は美森女子高等学校の一年生、柴田百合。
あの…、私には、少し気になる子がいます。
それは、高校の同級生……。
あ、男の子じゃありません。だって、女子高ですからね。
その子の名前は、新瀬有香。同じクラスでも、あまり話す機会が無かった子。
だけど、彼女の方から声をかけてきてくれました。巻き藁の切り方を教えて欲しいだなんて・・・。
私の家は居合の道場です。居合道柴田流の宗家ってことになっています。私も小さい頃から修行させられました。そのことを知って訊いてきたのですね。
でも、若い女子がそんなこと…。何故?
いや、実は私、理由を知っています。
彼女は秘密の同好会『女子切腹同好会』に入会したのです。そして、切腹する会員の介錯をすることになった…。斬るのは巻き藁では無く、生きている人間の首なんです!
なぜそんな秘密会のことを私が詳しく知っているのかですって?
いや、だってね。その会の秘密保持の裏工作をしたりしているの、私の家ですからね……。
正確に言うと、私の家も…と言った方が良いのかもしれません。全部で何家あるのか秘密にされていて分かりませんが、複数(…確実に10は超える…)あります。その内の一つが私の家なのです。
この裏工作をしている者は細入衆と呼ばれます。取り仕切っているのは御頭様と呼ばれる存在です。
切腹同好会事務長から御頭様に指示がゆき、御頭様から命じられて、細入衆が動きます。
細入衆は原則世襲。その家の当主と子息が構成員となり、通常は、2~3家が組となっていて、組単位で仕事をします。
ただ私の家は少し特殊で、道場門下生の一部も構成員になっているために、他家とは組まず“柴田組”として単独で動きます。
そして私も、細入衆柴田組の構成員なんですよね。柴田の娘ですから。
そんな訳で、有香が秘密にしていること、私はみ~んな知っているんですよねぇ……。
新瀬有香、どこにでも居そうな普通の子です。でも、なぜか惹かれるんですよ。
ナンなんでしょうね? 不思議な子です。
それに、内臓フェチだなんて…。よく分かんない子ですよ。
彼女、私たちが捕まえたスパイの首を切断しちゃったんですって…。
それから、同好会副会長の成嶋夏実の首も切った。さらに、会長、あの美人生徒会長谷本美紀の介錯も、彼女が…。
凄すぎる。人間の首を斬るのって、結構難しいのですよ!
とにかく、とっても気になる子です。
さて、困ったことになりました。教主様が亡くなられただなんて…。
あ、教主様というのは、宗教団体“樹神奉寧団”の代表者のことです。私たち細入衆は樹神奉寧団傘下の存在なのです。
次の教主には鬼頭家血筋の御曹司が就任。30年ぶりの交代ですが、これは何も問題ありません。
ただ、前教主は斎巫を兼ねていた。というか、元々は彼女の夫が教主であったのが、死後は斎巫をしていた彼女が教主にも就任したというコトらしい。
問題は、こっち。斎巫の方。70年ぶりの交代です。斎巫は樹神様を体に宿して仮の肉体となるという、教団にとって最も重要な存在。
誰でもなれるのではなく、鬼頭の血を引く女だけであり、一度就任すると死ぬまで辞められない。そして、樹神様を宿すために完全な不老になるのですよ。就任時の姿から老けないのです。
完全な不老だなんて、そんな話があるはずが無いと思うでしょ?
しかし、前斎巫は60歳くらいの見た目だった。つまりその年齢よりも上で就任しています。(就任前にも“恩恵”を受けていたでしょうから…)
更にそこから70年務めて、見た目は就任時と変わらない…。写真が残ってますからね。間違いありません。眉唾の話ではない。これは、本当に本当の話なんですよ。
そんな奇跡の存在“斎巫”。早く次の斎巫を選定し、その就任の儀式を行わなければならない。その為には、多数の供物=贄が必要…。
取り敢えず、その贄の調達が急務。しかし、今まで贄の大部分を供給してきた女子切腹同好会は、現在の会員が有香一人のみ。
最近就任したばかりの新事務長……あ、学校の保健の先生“緒方先生”なんだけど……も焦ってる。
「候補になりそうなのを、とにかく探しなさい」と、細入衆への指令が出ています。「そうしないと、あなたたち細入衆も困るでしょう?」って…。
何故に細入衆が困るかって?
それはですね。必要な贄が足りない場合は、細入衆の血族から出すことになっているのです。これはず~っと昔からの取り決めです。
御頭様が管理する細入衆贄候補の名簿。細入衆一族の12歳から35歳までの結婚していない娘の名が記されています。
結婚すると名は消されてゆき、12歳になった娘は名簿の末端に追加される。名簿自体は非公開で誰の名が記されているのか不明だけど、変動があるたびに、当事者には現在の順位が知らされる・・・。
その名簿の現在の筆頭の名前は、柴田百合。私なんです!
贄が足りなければ、私が真っ先にこの命を差し出さなければならないのですよ。
そんなの、絶対イヤだよ!!
父も門下の細入衆も必死になって候補を探してくれました。切腹同好会会長である有香のナイスな働きもあり、あと数人で私は助かりそう? いや、まだ危ない?
いったい、後、何人必要なの??
そんな時です。事務長からの同好会勧誘者身辺調査の指令があり、対象者に私の名前が入っているというのです。
細入衆は世襲ですが、その存在は絶対の秘密です。事務長であっても構成員のことは知らなくて直接指令を出す御頭様しか面識が無い。
つまり、事務長=緒方先生は、私が細入衆だというコトは知らないのです。
御頭様に呼び出された父と私。…私、初めて御頭様に御目通りしましたよ。
この件は取り敢えず保留にしてあるそうです。しかし、いつまでも保留のままにしておけません。
どうするか問われます。不適格者として報告することもできるがって・・・。
父は私の方を見ます。私に決めさせるつもりのようです。
どうせ私は贄候補の筆頭。ならば別に切腹同好会に入会しても…。
それに、この同好会の会員は、必ず切腹しなければならないというコトでもありません。入会して有香を助け、ドンドン新しい会員を入れてバンバン切腹に導けば、私は助かる・・・。
「適格者として、ご報告いただけますでしょうか。私、切腹同好会に入会したいです」
頭を下げながら、そうお答えしました。
有香に呼び出されました。指定の公園は学校から近くて人が居ないところ。私を同好会に勧誘するつもりね。
でも二人きりになっても、有香はナカナカ話を切り出さない。じれったいな。
「女同士の関係を望んでいるの?」なんて、チョット揶揄ってみる。
いや、有香となら、それも良いかも・・・。
とにかく無事、私は女子切腹同好会の会員、そして副会長になりました。
最初の会合から、いきなり会員の切腹ですよ。
有香ってばナイス! ありがとう!
そして・・・。有香、スゴイよ。
介錯、ホントに一太刀で綺麗に首を斬っちゃった・・・。
凄過ぎる・・・。カッコイイ・・・。最高・・・。
なんか、アソコがジーンとして、濡れてきちゃう・・・。
ああ、私、有香のこと“好き”になっちゃったかもしれない!
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