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樹神奉寧団編

30 樹神奉寧団編 プロローグ<緒方由美>

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<プロローグ>
・・・緒方由美・・・

―――――――――

 困ったことになりましたよ。教主様が、突然亡くなられただなんて!

 ・・・あ、失礼。私は美森女子高等学校養護教諭の緒方由美、30ウン歳です。
 そして教主様というのは、宗教団体“樹神奉寧団きしんほうねいだん”の代表者鬼頭公美子きとうきみこ尊師(143歳)のこと。自らの体に鬼神様を下ろすことのできる不老の存在で、その不老の力を信者に分け与えてくださっていた貴き御方なのです。
 しかし、階段から落ちて首の骨を折り、即死・・・。いくら鬼神様の力を受けた不老の存在といえども、不死では無いのですからね。

 鬼神様のお力を受けられるのは教主様のみ、いや、正確に言うと“斎巫”様のみ。
 亡くなった先代教主鬼頭公美子尊師は、斎巫職を兼ねた存在・・・というか、こちらも正確に言うと、斎巫様が教主を兼ねていたというのが正しいんだけど・・・。

 斎巫…普通に読めば、「いつきのかんなぎ」でしょうかね。でも教団では最初の「いつ」を省略して「きのかんなぎ」と読みます。
 キのカンナギ…。建前上は「樹の巫」、実際には「鬼の巫」。
 ……鬼神様(樹神様)を体に宿すことの出来る巫女というコトですね。

 教団の表向き代表者“教主”には、教団序列第2位であった鬼頭一族の御曹司鬼頭慎吾氏が就任しました。
 まだ若いですよ23歳です。鬼頭公美子尊師の直系子孫ではありませんが、鬼頭本家に一番近い存在です。
 彼は、唯一鬼神様の声を聞くことが出来るという特殊能力保持者。であるから、ナンバーツーの地位にあったのであり、彼が教主に就くことには誰も異存ありません。
 ただ、対外的な教団トップは教主なのですが、教団にとって最も重要で、崇められる存在なのは、斎巫の方。
 鬼神様のお力を受けられなければ、教団は成り立たなく、崩壊してしまいます。そのお力を受けられるのは唯一“斎巫”のみですからね。

 斎巫は、就任すれば死ぬまで辞められなく、前職が死亡した場合にのみ、次が選出されます。今回の交代は70年ぶりとのこと。(不老の存在ですからね…)
 その斎巫になる資格を持つのは鬼頭の血を引く女。実は私もその一人。
 私の旧姓…父方の姓…は紀藤(きとう)で、鬼頭家の傍流なのです。

 ですので、“新教主様”から斎巫に立候補しないかと誘われました。
 その上、「斎巫になった暁には僕の妻になってもらいたい」ですって?!

 新教主は、かなりイケメンで私好みではあるんだけど…。
 良いの?こんな私で・・・。私、10も年上よ?!

 この勧誘は、新教主の部屋に呼ばれて、二人きりでといった状況でのコト。
 そして、そこで誘われるがまま私は・・・その年下“教主様”と、ベッドの上で・・・、濃厚な肉体関係を結んでしまいました。

 私、もう30超えてますからね。それなりには経験あります。でも、彼…とっても上手!!
 潮を吹くなんて体験させられたの、私、初めて・・・。

 このイケメンのテクニシャンが私の夫に?

 でも彼は10歳も年下・・・。

 いや、斎巫になれば私は不老の存在となり、その時点の肉体をキープできる。一方、その他の者は鬼神様の恩恵を受けても、完全な不老にはならない。
 だから、そのうち彼の方が老けて丁度良くなり、更には私が逆転するんだ。じゃあ、問題ないよ。

 地位としても、名目上は教主がトップでも、鬼神様の直接の恩恵を受けられる斎巫は別格であり、崇め奉られる存在…。
 教団の実質的トップになれる・・・最高じゃないですか!

 私は新教主の提案を受け入れました。

 ただ、一つ問題が・・・。
 立候補するのは私だけで無いのです。
 彼曰く、必ず複数人が候補となって鬼神様の選択を受けなければならないというのです。鬼神様が選んだ方が斎巫になれるということなのですよ。
 ですが、これに関しても、彼は鬼神様に口添えしてくれるという…。
 彼は鬼神様の声を聞くことが出来る唯一の存在ですからね。鬼神様と意思疎通ができる。だから、私が選ばれることは、間違いないですって!

 この年まで独身で来た甲斐がありましたよ。
 ついに私にも、超特大級の春が廻って来たのですうぅぅ~!!

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