上 下
8 / 15

第7話 暗殺対象

しおりを挟む

「それで、エルは何を受けようとしたんだ?」


「これを見なさい」


エルが指をさし、その依頼書を見てみる。

【暗殺対象】リリネ・ヴァレンシア
【性別】女
【年齢】16
【特徴】王位継承権第一位。ヴァナンガルド魔法高等学院に通う生徒。
【期限】一年
【報酬】聖金貨10枚+階級の昇格

とこのように書いてあった。


「この人は王の娘。そして、何よりも警戒しないといけないのは彼女を取り囲む護衛よ。彼らは大会で実績を残した凄腕の持ち主。私たちでは到底かなわない」


「なら、エルならどうする」


「私は学院に入学する。学院までは護衛はついてないからそこが狙いどき。まぁ監視はあるけどね。でも流石にこの私では入学出来ないから...」


「俺らにか?無理だろ。亜人が入学できるはずないだろ」


「私にはそれが出来るのよ!変身魔法があるからね!龍太郎とリアの耳と尻尾を隠すぐらい容易いわ!ただ、1日ごとに魔法は掛け直す必要があるけどね」


確かにエルは小学生っぽくてあまりにも入学出来そうにない、それに代わり、俺となんとかリアならいけそうだ。それに、王位継承一位ということは次期の女王になるということではないか、そいつを殺すことによって、あの王様やこの国に復讐ができる。この依頼は願ってもない好機ではないだろうか。


「やってみる価値はある。でも入学ってのは難しいだろ」


「この学院には魔法を使えるものなら転入という形で入れるわ。龍太郎、あなた魔法は使えるわね?」


「治癒魔法だけなら使える」


「十分だわ。リアは?」


「強化魔法使えます」


「あなた達、駆け出し暗殺者の割には魔法は使えなのね。ってなんでここまで私は話したのかしら!バカなの私は!頑張ってやらなくて済むのに!」


エルは自分のことを悔いていた。
俺とリアは目配せをし、意見が一致した。


「エル。俺たちはこの依頼受けようと思う。もちろん協力してくれるな?」


「もちろんよ!私はやらなくても良いけど、龍太郎とリアがやるなら私もやるわ!私は影であなた達をサポートする」


「心強いな」


俺は依頼書を剥がし、受付に出す。


「依頼受理した。暗殺対象の暗殺はギルドが責任を持って請け負う。ただ、それ以外の暗殺はお前らが責任を負え。以上健闘を祈る」


そうして、俺たちはギルドから外へと出た。


「ってか何でそんなに詳しいんだ?エル」


先程から思っていたことを口にした。


「暗殺者ってのはね。情報戦なの。いかに情報を手に入れるかによって生死や暗殺の成功がかかってくるの。だから私は依頼書の隅々まで下調べしている。いつなんどき、何があるのかわからないからね。要するに情報を手に入れないといけないって言うことよ。これは肝に銘じておきなさい!」


情報戦というのは暗殺以外にも言えることだな。エルが下調べしてくれたおかげで、こうやって順調にことを進められている。それは素直にありがたいことだ。

俺たちは路地裏を歩いていき、大通りに出ようとするが、冒険者どもが騒ぎ立てていた。どうしても大通りを通らないと家に帰れないので、様子を伺っている所だ。


「おーーーい。皆んな聞いてくれ!ここら辺に二匹の亜人がいる!一緒に協力して見つけないか?」


「え、亜人がいるの‼︎」
「それって自由に動き回っているってこと!そんなこと許されないわ!」
「俺たちも協力するぜー!」
「私たちももちろんやるわ!」


酷いことに殆どの人たちが亜人探しを始めてしまった。このままでは流石に見つかってしまう。


「あなた達、何をしでかしたらこんな騒ぎになるの!バカなの?」


エルは大通りの様子を伺いながら俺たちに問う。


「この国がおかしいんだ。俺たちが亜人ってだけでこんな騒ぎ。可笑しいだろ?」


全く可笑しくない。残酷すぎる仕打ちをこの国で受けてきたのだ。笑えるはずがないのだ。ただこんな奴らに自分が劣っているとは思わない。だから、言える。


「確かに可笑しいわ。亜人の何が悪いのよ。それだったら私だって...。いや、、それにしても、本当こいつら胸糞悪いわ!国民が血眼になってまで探している。この国狂っているわ!」


エルは何か事情がありそうな口調だった。でも、この国の異常さにエルは異議を唱えていた。やはり仲間にして良かった。それは俺に限った話ではなく、リアも微笑を浮かべ、エルを見つめていた。


「エル。頼もしいです」


リアがエルに向けてそう言った。


「何よ。私はあなた達を導くの!任せなさいって言ったもの!私は頼もしいの!リア今更それを知ったの?流石に遅いわね」


「そうだったのかエル」


「龍太郎も!さっき言ったばかりなのに!はぁー。あなた達バカね」


エルが落ち込んだ様子を一度見て、俺は改めて大通りに目を向けた。


「こいつら全員殺すか」


「それも良いかもしれないけど。そんなことやったら指名手配されるわ。暗殺者は隠密に誰にもバレずにやるものよ。こんな大通りで人が殺されたら、騒ぎになって時期に捕まるわ。もし誰かに見られたらそいつら全員皆殺しにしなさい。そうしないと危なくなるわよ」


こんな少女が殺すだの誰にもバレずにだの、よくよく考るとおかしなもんだ。


「そうだな。早とちりしてしまった」


この国の復讐心が疼いてやまなかった。


「さて、大通りを通らなければ家に着けないと龍太郎は言っていたわね?」


「そうだ。大通りの先にある」


「なら、私に考えがあるわ」


「お得意の変身魔法か?」


「いや。違うわよ。頭悪すぎる!」


「教えてほしい?」


「あぁ。頼む」


誰にもバレずに通る方法があるなら知りたいものだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
※お読みいただきありがとうございます!これからの展開に期待してて下さい!
もしよろしければ感想をいただけると凄く嬉しいのでよろしくお願いします!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

嫌われ者の悪役令息に転生したのに、なぜか周りが放っておいてくれない

AteRa
ファンタジー
エロゲの太ったかませ役に転生した。 かませ役――クラウスには処刑される未来が待っている。 俺は死にたくないので、痩せて死亡フラグを回避する。 *書籍化に際してタイトルを変更いたしました!

クラス転移で神様に?

空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。 異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。 そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。 異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。 龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。 現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

処理中です...