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第八章 帝国との紛争

第五百三十話 シークレア子爵領に到着

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 翌朝、天気も良く絶好の旅日和となりました。
 僕たちも早起きして、出発の準備を整えます。

「皆さま、どうか道中お気をつけて下さいませ」
「皆さまのご活躍を祈っております」

 兄妹の見送りを受け、僕たちは再び馬車に乗り込み旅を始めました。
 出発前にユキちゃんが馬に回復魔法をかけていたけど、元気そのものみたいです。

「ユキちゃんはとても優しいわね。昨日たくさん走ったから、馬を気にかけていたのね」
「アン!」

 アイリーンさんが、ユキちゃんを抱っこしながら笑顔でなでなでしていました。
 この辺が、動物と会話できるユキちゃんならではなのかもしれませんね。
 僕も、ユキちゃんをなでなでしてあげました。
 さてさて、今日は何もなければ夕方前にはシークレア子爵領に到着します。
 でも、暫くはあの問題のあった森が続きます。
 軍ができるだけの討伐をしたとはいえ、まだまだ油断なりません。

 シュイン、ズササ!

「「「ギャイン!」」」

 とはいえ、現れたオオカミとかも御者席に移動したシロちゃんがあっという間に倒します。
 念動を使って獲物をアイテムボックスに回収しているので、後で血抜きをするそうです。

「このくらいの出現頻度でしたら、この規模の森では普通ですね」
「だと、軍の害獣駆除が効果あったんですね」
「そう考えて良いですね。もう少し害獣駆除をしても問題ないかと」

 カーラさん曰く、これなら普通の馬車便でも問題なく通過できるそうです。
 ついでってことで、アイリーンさんが通信用魔導具で軍に報告していました。
 後は、男爵領兵と冒険者にお任せですね。
 こうして少しだけオオカミとの戦闘があったけど、殆ど問題ない程度で済みました。
 そして、無事に夕方前にはシークレア子爵領に到着し、僕たちは屋敷に入りました。

「まさか、このような件で再び会うとは思ってもいませんでしたわ」

 まさかの短期間での再開に、ライサさんも困惑しきりでした。
 結婚式が終わって、一ヶ月ちょいしか経っていないですもんね。

「軍も慌ただしく動いております。旦那様もとても忙しくしておりまして、アンジェラ様と共に本日も海軍の基地に向かっております」
「新婚なのに、とても大変ですね。アンジェラさんの婿入り相手を探すのも、これでは当分駄目なのでは?」
「ええ、その通りになります。お義母様も、今は致し方ないと嘆いておりました」

 アンジェラさんは政務能力がとても高いから、この緊急事態だからこそよりその力が生きるのでしょう。
 すると、ライサさんがこんな事を言ってきました。

「私も皆さまのお力になりたいと思い、旦那様に相談してあることを冒険者に頼みました」
「あること、ですか?」
「ええ、もうそろそろ来るかと思いますわ」

 いったい何のことなのかなって思っていたら、廊下から大きな足音が聞こえてきました。
 そして、応接室に筋肉ムキムキの大男が姿を現しました。

「おお、ちょうどタイミングが良かったな」
「あっ、ザンギエフさん!」

 突然現れた特徴的な髪型の大男に、アイリーンさんたちはとてもビックリしちゃいました。
 でも、普段軍で厳つい男たちに接しているので、怖がることはありませんでした。

「奥様、ご依頼の件はバッチリだ。全部ギルドに預けたから、明日朝には準備出来ているぞ」
「流石は一流の冒険者ですわね」

 二人が良い仕事したと良い顔をしているけど、いったい何の話だろうか。
 すると、ライサさんが種明かしをしてくれました。

「簡単なことですわ。冒険者の皆さんに、薬草をたくさん集めて貰ったのですよ」
「怪我人が多くなると、ポーションも必然的に必要になる。サンダーランド辺境伯領やディフェンダーズ伯爵領でも、恐らく薬草集めが推奨されているはずだ」
「わあ、皆さんありがとうございます。僕もシロちゃんも、いっぱいポーションを作ります!」

 ドヤ顔のザンギエフさんに、僕たちはペコリとお礼をしました。
 カーラさんは薬草関係のスペシャリストなので、きっととても役に立つはずです。
 その後も夕食の時間までみんなとおしゃべりをしていたけど、やっぱりメインは僕がシークレア子爵領でどんなことをしていたかでした。
 アイリーンさんたちは、シークレア子爵領最強のオリガさんに興味津々でした。
 オリガさんに勝てる人って、軍にもそうそういないような気がするね。
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