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第七章 王都

第五百話 結構大騒ぎに

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 謁見の間から会議室に移る際、手を繋ぎながらマヤちゃんに何かあったかを聞いてみた。

「あのね、おっきいおじちゃんがいたから見えなかった」

 おおう、そういうことだったんですね。
 マヤちゃんはまだ小さいから、厳つい軍人貴族の足で隠れて何も見えなかったんだ。
 念の為にシロちゃんに確認しても、全く同じ答えだった。
 こっそりと、魔法障壁を張っていたみたいです。
 ある意味良かったと、ホッと胸を撫でおろした。

「こんな小さい子にいったい何をしようとしたのか。呆れてものが言えんな」
「もう貴族ではなく、只の犯罪者だ」
「結局、親も親なら子も子だな」

 他の貴族も、口々に僕を襲った旧ゴルゴン侯爵一派を非難していました。
 何を考えていたのか、しっかりと取り調べて貰わないと駄目ですね。
 それは、この人も同じ考えでした。

「弱いものいじめをするつもりが、逆に反論されて激昂して斬りかかると。まさに愚の極みだ」

 会議室に着くと直ぐに話し合いが始まったけど、陛下も頭を抱える程の大暴挙です。
 他の閣僚も、心底呆れた表情をしていました。
 ちなみに、マヤちゃんは僕が抱っこしています。

「奴らには、短期間で何か問題を起こしたら取り潰しもあり得ると通達していた。なのに、よりによって謁見の間で剣を抜くとは。王国歴史にもない暴挙だ」
「陛下、謁見の間で剣を抜くのはとても悪いことですよね?」
「仮に謁見中に剣を抜いて襲ったら、普通に死罪もありうる。そのくらいのことだ」

 陛下が淀みなく返答したけど、もう駄目駄目ですね。
 あの旧ゴルゴン侯爵一派に厳罰が待っているのは必死です。

「結果的に、王都にいるゴルゴン侯爵の勢力は一掃されたことになる。しかし、地方にはまだゴルゴン侯爵の息のかかった者がいる。帝国の対応を最優先にしつつ、地方の動向にも気をつけるように」
「「「はっ」」」

 こうして、色々とドタバタした謁見は何とか終わり、僕とマヤちゃんは先に屋敷に帰ることになりました。
 はあ、まだお昼前なのにとても疲れちゃった。
 すると、屋敷でも大変な騒ぎで迎えられた。

「レオ君、謁見後に斬りかかられたって聞いたけど大丈夫だった?」
「レオ君も、マヤちゃんも、怪我はなかった?」

 屋敷に着くなり、モニカさんとターニャさんが僕とマヤちゃんの体に怪我はないかとペタペタと触ってきた。
 更にウェンディさん、アレックスさん、クリスちゃん、ユキちゃんも僕とマヤちゃんの体を心配そうに触ってきた。
 僕としては、何でこんなに早く謁見後の件が広まっているのか不思議だった。
 取り敢えず、応接室に行って話を聞くことにしました。

「もう、王都の貴族は殆ど知っているはずよ。過去にもない大暴挙が起きたって」
「しかも、僅か七歳の男の子に寄って集って剣を抜いて襲いかかった上に、何もできずに敗れ去ったって話よ」

 結果的には、僕は魔法障壁を展開して自分の身を守っていただけなんだよね。
 何もできずにというか、何もしていないんだよね。
 すると、モニカさんが情報を付け加えてくれました。

「剣が折れるほどの力で斬りつけたのが、とても問題なのよ。謁見の間で、殺意を持って行動したことの動かぬ証拠なのよ」
「あっ、そういうことなんですね。でも、僕も魔法障壁を使いました……」
「自分の身を守る為の行動だったら問題ないわ。もし、レオ君が命令なしに反撃したら問題があったかもしれないわ」

 おお、流石はターニャさんです。
 とっても詳しく解説してくれました。
 あの場では、僕が反撃するまでもなく近衛騎士が直ぐに動いていましたもんね。
 この話はこれでおしまいかと思ったら、更に続きがありました。

「あの、この後お母様が来ることになったのよ。二人の様子を見に来るって言っていたわ」
「えっ、ヒルダさんがやってくるんですか?」
「そうなのよ。心配している上に、旧ゴルゴン侯爵一派に激怒しているらしいわ」

 おおう、何ということでしょう。
 ある意味、怒涛の展開となりそうです。
 そして、僕とマヤちゃんは慌ててやってきたヒルダさんに怪我はないかと体中をペタペタと触られたり、心配そうに抱きしめられました。
 更に延々と旧ゴルゴン侯爵一派の愚痴を聞かされた結果、謁見の時よりも疲れちゃいました。
 昼食が終わると、疲労困憊の僕とマヤちゃんは一緒にお昼寝タイムに突入しました。
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