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第七章 王都

第四百六十話 控室での話

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 喧騒が収まると、僕の前に行きと同じ係の人が現れました。
 また、先程の控室に戻るそうです。
 僕は、頂いた剣を魔法袋にしまいます。
 すると、マイスター師団長さんとかもついてくることになりました。

「控室には、恐らく閣僚もくるだろう。謁見の間に残っていた近衛騎士から連絡は行くだろうが、改めて話をした方が良い」
「その、色々とありがとうございます」
「気にすることはないよ。これも仕事のうちだ。それに、ゴルゴン侯爵の今後の行動も気になる」

 歩きながら、マイスター師団長さんが手を顎に当てながら色々と考えていました。
 他の人達も話をしていたけど、やっぱり話題はゴルゴン侯爵の件でした。
 そして、控室には閣僚だけでなく何と陛下もいました。

「どっかの馬鹿に、レオが堂々と物申したと聞いてな。是非とも、直接聞いてみたいと思ったのだよ」

 陛下、そんな野次馬みたいなことを言わなくても良いと思いますよ。
 しかも、ゴルゴン侯爵を馬鹿と言っているし。
 陛下に限らず、他の人も僕を見ながらニヤニヤとしていました。
 とにかく話を聞くために、僕たちも席に座ります。
 すると、チャーリーさんがあのゴルゴン侯爵について話し始めました。

「まあ見て分かると思うが、奴は貴族のための利益を追求する組織のトップだ。面倒くさいことに、そこそこの数がいるんだよ」
「だから、徒党を組んで僕に圧力をかけてきたんですね」
「そういうことだ。奴は、謁見で物申すことによって自分の勢力の維持を図ろうとした。レオ君が持つ影響力を危惧したのと、陛下に物申すことができる影響力を誇ろうとした。しかし、ものの見事に目論見は外れ、八つ当たりをする為に謁見後にレオ君に詰め寄ったんだ」

 かなり呆れた感じでチャーリーさんが説明してくれたけど、ゴルゴン侯爵はやっぱり面倒くさい人なんだね。
 更に、陛下が頭の痛いことを言ってきました。

「あの馬鹿は、父上の頃から自分に不利になることは平気で反論していた。そして、若くして王位を継いだ余にも変わらない、いやもっと頻度を上げて反論していた。余も国内の安定に努めないとならなかったので、今まではある程度話は聞くようにしていた」

 陛下がまだ若いことにつけ込んで、言いたい放題していたなんて。
 本当に、自分のことしか考えていないんだ。

「しかし、ここに来て風向きが変わった。閣僚も奴らの影響下のあるものを排除し、真に国のことを思う者で構成した。軍も、一丸となっている。そして、レオの存在だ」
「えっ、僕の存在、ですか?」
「レオは、既に民衆に多大な影響力を持っている。レオは、ただ治療していただけだろうがな。教会の説法を通じてレオの存在は全国に広がっていて、尊いものだと尊敬の念を集めている」

 陛下の話に、この場にいる人たちが激しく同意していました。
 僕としては、治療を頑張ろうと、目の前のお仕事を頑張ろうとしただけなんだよね。
 僕が複雑な表情をしていると、チャーリーさんが苦笑しながらアドバイスをしてくれました。

「レオ君は特に気にせずに、悪いことをしないで目の前の仕事を頑張れば良いんだよ。それだけで、今は十分だよ」
「そ、そうですよね。僕が特別なことをする必要はないですもんね」
「普通に治療をして、冒険者活動をして、勉強をすれば良い。なにせ、レオ君はまだ七歳だからね」

 チャーリーさんの話を聞いて、僕はホッとしちゃいました。
 まだまだ治療をしないといけない人は沢山いるし、たまには害獣駆除とかもしたいなあ。
 そして、ギルバートさんが更に追加情報を教えてくれました。

「レオ君、あいつらは今日のパーティーには来ないよ。自分たちの勢力が閣僚から一掃されたから、パーティーに出るもんかと自ら宣言していた。もちろん招待状も送っていない」
「それを聞いて、とってもホッとしました。また言い争いになるかなと、ちょっと思っていたんです」
「奴は、パーティーの場でも平気で文句を言ったり泥酔したりする。だから、まともな貴族なら招待することもない」

 他の貴族も、ゴルゴン侯爵の被害を受けていたんだ。
 それでは、パーティーに招待されなくても仕方ないよね。
 話はこれくらいで終わり、ついでに閣僚と軍の幹部でこのまま会議をするそうです。
 僕は一足先に屋敷に帰ることになり、係の人に案内されながら馬車乗り場に移動しました。

 パカパカパカ。

「はあー、とっても疲れちゃったよ」

 馬車に乗った瞬間、僕は背もたれに寄りかかって溜息をついちゃいました。
 貴族の世界って、本当に面倒くさいですね。
 僕はずっと冒険者をするのがいいなって、改めて思っちゃいました。
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