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第六章 バーボルド伯爵領

第三百八十二話 みんなで昼食を食べます

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 軍の施設の中には、何と大食堂もあるそうです。
 お弁当を持ってきている人もいるそうですが、大食堂は安くて美味しいそうです。
 僕とシロちゃんは、コレットさんと秘書さんと共に大食堂に向かいました。

「わあ、とっても広い食堂です! 百人以上座れそうですね」
「軍の福利厚生の一環として、昼食は無料で提供されますよ。味も栄養もばっちりです」

 コレットさんの説明を聞いて、僕はシークレア子爵の海軍の造船場の昼食を思い出しました。
 海軍の造船場でも、昼食は無料で提供されていたっけ。
 しかも、おばちゃんの作る食事もとっても美味しかった。
 コレットさんがいつも行く席があるそうで、僕も一緒についていきました。
 すると、そこにはこの軍の施設で一番の顔見知りの人がいました。

「おっ、コレットとレオ君も一緒か。どうやら、午前中の治療は終わったみたいだね」
「はい、後ほどご報告いたします」

 僕とコレットさんに声をかけたのは、マイスター師団長さんでした。
 マイスター師団長さんは部下と共に既に食事を食べ始めているので、僕もコレットさんと一緒にカウンターに向かいます。
 沢山のメニューがあったけど、僕の大好物があったのでそれを注文しました。

「すみません、トマトパスタをお願いします」
「はいよ、ちょっと待ってね」

 食堂のおばちゃんが、直ぐにトマトパスタを用意してくれました。
 僕とシロちゃんで一人前だから、ちょうど良いサイズです。
 トレーを持って、マイスター師団長さんのいる席に戻っていきます。
 すると、席の周りに人が沢山集まっていました。
 えっ、一体どういう事だろう?

「ははは、みんなレオ君の事が気になって集まって来たんだよ。私は昼食時は階級とか関係なく一緒に食べるから、こうして直属の部下以外も顔を出すのだよ」
「他の人も積極的に意見をいえる環境が整っているので、この軍の施設はとても風通しが良いのです」

 マイスター師団長さんの言葉をコレットさんが補足してくれたけど、みんながマイスター師団長さんを慕っているんですね。
 さてさて、では僕とシロちゃんもトマトパスタを頂きましょう。
 フォークにくるくると巻き取って、っと。
 ぱく、もぐもぐ。

「わあ、このトマトパスタとっても美味しいです! 粉チーズもかかっていて、何だか大人の味です!」
「「「かっ、可愛い……」」」

 僕もシロちゃんも、思わず満面の笑みになる美味しさでした。
 僕の周りにいる女性隊員が何か言っていたけど、特に気にせずに目の前のトマトパスタに集中します。
 一生懸命に食べる僕の事を、マイスター師団長さんもニンマリと見つめていました。

「レオ君は、本当にトマトパスタが大好きなんだね。これは、黒髪の魔術師様お墨付きを頂けたかな?」
「はい、お墨付きです。とっても美味しいです!」
「そうか、それは良かった。後で食堂のおばちゃんにも、レオ君がとても美味しかったと伝えておこう」

 こうして、僕とシロちゃんはあっという間にトマトパスタを食べ終えちゃいました。
 そして、午前中の治療の報告をする事になりました。
 とはいっても、殆どコレットさんが報告してくれました。

「午前中に、十人入院している大部屋を八部屋治療し終えました。午後は引き続き残りの大部屋を治療する予定で、明日から重症者のいる個室での治療を行う予定です」
「ふむ、そうか。サンダーランド辺境伯領などから報告の上がった治療人数よりも増えているね。レオ君も、日々成長しているって訳だね」
「えっ、既に八十人以上治療したって事なの?」
「流石は黒髪の魔術師っていわれるだけあるわね……」

 コレットさんの報告を聞いたマイスター師団長さんは、特に表情を変えることはありませんでした。
 対して、僕の周りにいる女性隊員からは少しざわめきが起きていました。

「レオ君は無理して治療を行っているわけではないんだよね?」
「はい、逆に少し抑え気味に治療を行っていました」
「それなら良いんだ。怪我人を治療して、逆にレオ君が倒れちゃったら元も子もないからね」

 マイスター師団長さんが、ニコッとしながら僕に話しかけてきました。
 僕とシロちゃんがオーバーワークにならない様に、気を使ってくれているみたいです。
 でも、僕もシロちゃんもまだまだ魔力がいっぱい残っているから、全然大丈夫ですよ。
 女性隊員さんとも少しお話しながら、昼食の時間は過ぎていきました。
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