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第五章 シークレア子爵領

第三百五十六話 新魔法の練習をします

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 僕とシロちゃんは、料理だけでなく新しい魔法の習得も頑張っています。
 造船場でずっと細かい魔力制御が必要な作業をしていたので、思った以上にパワーアップしたみたいです。
 夏前に僕とシロちゃんは解毒魔法を覚えたけど、解毒魔法は聖魔法の一種なんだって。
 なので、安息日の今日は他の魔法を覚えていこう思います。

 ペラペラ、ペラペラ。

 僕とシロちゃんは、部屋のベッドの上で魔法の本をめくります。
 どんな魔法が良いかなって思いつつ、とっても面白い魔法を見つけました。

「あっ、飛翔魔法だって。上手くいけば、僕とシロちゃんがお空を飛べるかもね」

 無属性魔法の中に、飛翔魔法ってものがありました。
 浮遊魔法で宙に浮いて、飛翔魔法で空を飛べるんだって。
 何だか魔法使いっぽくて、僕もシロちゃんもとってもワクワクします。
 浮遊魔法は、身体中を魔力で包んで宙に浮かび上がるイメージみたいです。

「よーし、頑張ってやってみよう!」

 僕とシロちゃんは、魔法の本をベッドの上に置いてさっそく浮遊魔法を使ってます。
 えーっと、体を魔力で包み込む感覚でっと。

 シュイーン、シーン。

「うーん、やっぱりいきなり上手くいかないね。でも、諦めないよ」

 僕もシロちゃんも、最初のチャレンジは失敗しちゃいました。
 でも、最近覚えた魔法はとっても難しいものばかりだったから、いきなり成功はしなかったんだよね。
 僕とシロちゃんは、落ちても安全なようにベッドの上で浮遊魔法の練習を続けて行きます。
 そして十回以上の失敗を重ねた後、ちょっと休んで練習を再開した時でした。

 シュイーン、ふわっ。

「わあ、ちょっとだけ浮かび上がったよ!」

 何となくこうかなって感覚を掴んだら、僕もシロちゃんもベッドから一メートルくらい浮かび上がりました。
 魔力を調整すると、うまく上下に浮いたり沈んだりできます。
 何よりも、いつもよりも視線が高くなったのがとっても面白いです。
 ザンギエフさんみたいな大きな人って、こんな感じで周りが見えているんだね。 その後も、僕とシロちゃんは浮遊魔法を練習しました。
 もしかしたら飛翔魔法も使えるかもしれないけど、午前中は浮遊魔法を完璧に出来るように練習します。
 そして、昼食前最後の練習をしている時でした。

 コンコン。

「レオ君、シロちゃん、昼食だよ」
「「あっ」」
「って、ええ! レオ君とシロちゃんが宙に浮いている!」

 昼食ができたと部屋にナディアさんが入ってきたんだけど、宙に浮いている僕とシロちゃんを見てもの凄くびっくりしちゃいました。
 僕もシロちゃんも、ビックリしたナディアさんの大きな声にビックリしちゃいました。
 そして、ナディアさんの大きな声を聞いたオリガさんが急いで僕の部屋に入ってきました。

「ナディアちゃん、レオ君に何かあったの? って、あら、レオ君とシロちゃんが宙に浮いているわ」
「はっ、はい。その、浮遊魔法の訓練をしていました……」
「なるほど、レオ君は新魔法を練習していてナディアちゃんがビックリしちゃったのね」

 流石はオリガさんです、何でナディアさんがビックリしちゃったのか直ぐに理解してくれました。
 その間に、僕とシロちゃんは浮遊魔法をやめてベッドの上におりました。
 全てを把握したオリガさんが、未だに尻餅をついているナディアさんにある事を質問しました。

「そういえばナディアちゃん、レオ君の部屋に入る前にノックはしたかしら?」
「えっ、もちろんしたよ」

 うん、確かにドアをノックする音は聞こえたんだよね。
 でも、誰がノックをしたか分からなかったんだよね。

「じゃあ、レオ君の声が返ってきてから部屋に入ったかしら?」
「あっ、ごめんなさい。ノックをしたら直ぐに部屋に入っちゃいました……」
「もう、ナディアちゃんは駄目じゃない。レオ君、ナディアちゃんがごめんね」

 あっそっか、僕が返事をして部屋の中に入ればナディアさんはビックリしなかったよね。
 その点を指摘されて、ナディアさんはしょぼーんってなっちゃいました。

「レオ君、ごめんなさい。キチンと返事してから入ればよかったよ」
「確かに、浮遊魔法をやめて返事をすればナディアさんはビックリしなかったですね」
「ううん、それよりも宿の人として失敗しちゃった。反省しないと」

 ナディアさんは、しょぼーんとしたまま僕に謝ってきました。
 驚いたっていうより、宿の従業員として失敗しちゃったんだね。

「じゃあ、きっちりと謝ったら昼食にしましょう。せっかくの美味しい食事が冷めちゃうわ」

 そして、オリガさんが場を締めて僕たちは食堂に向かいました。
 ちなみに、僕の部屋で何があったかを昼食の時に話をしたら、ザンギエフさん達が僕の魔法じゃなくてナディアさんが注意で済んだ事にビックリしていました。
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