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第五章 シークレア子爵領

第三百五十二話 僕の初めての料理

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 翌日は教会でなくスラム街での出張治療なんだけど、ここにもライサさんがついてきました。
 昨日と同じく護衛もついているし、出張治療の近くではモゾロフさん達が朽ちている建物を解体しています。

「いくぞー!」
「「「せーの」」」

 バキバキバキ。

 多くの人が、順々に建物を解体していきます。
 僕もシロちゃんもライサさんも、出張治療の準備が整うまで解体現場から少し離れたところで見学しています。
 今日は造船場も鉄板の搬入待ちで、手の空いた職人さんが解体のバイトをしています。

「こうして、徐々にスラム街の改善を進めているんですね。空いたスペースでは、集合住宅の建築が進んでいますし」
「そうなんですよ。シークレア子爵領は人口も増えておりますので、徐々にスラム街を解体できる様にしておりますわ」

 今日はアンジェラさんが一緒についていて、ライサさんにスラム街解体の状況を説明していました。
 集合住宅の建設も進んでいて、造船場で働いている男の子の一家も集合住宅ができたら移り住む予定です。
 僕たちは治療の準備ができたので、出張治療の場所に向かいます。

「最近は、レオ君がいない時にも出張治療に来てくれて本当にありがたいぞ」
「レオ君がシークレア子爵領にずっといてくれる訳ではないので、ポーションや生薬を使って治療をしているんですわ」

 治療を受けにきた老人がアンジェラさんと話をしているけど、僕も年が明けて少ししたら次の目的地に向かう予定です。
 アンジェラさんはその事を分かっているので、早めに対策をうってくれています。
 もちろん、僕もシロちゃんも治療できるときは全力で行なっているけどね。

「レオ君が来たのがきっかけですが、こうして色々なところの改善に乗り出す事ができました。私もいずれは嫁に行く身ですが、それまではシークレア子爵領の為に頑張って行きますわ」
「私も早くシークレア子爵領の一員になれるように、精一杯頑張りたいですわ」

 もしかしたら、今日はアンジェラさんとライサさんがゆっくり話せるようにとセルゲイさんが配慮したのかもしれない。
 二人の会話を聞いて、そんな事を思いました。

「今日は治療も順調ですし、重症の人もいないですね」
「今までレオ君が継続的に治療をしてくれたお陰ですわ」

 午前中の治療も無事終了し、スラム街で解体作業をしている人向けに炊き出しを行います。
 ここで、僕は初めての作業を行います。

 トントン。

「えっと、こんな感じで良いですか?」
「そうそう、上手ですよ」

 僕は、初めて料理を作ってみます。
 シロちゃんは念動で野菜を浮かべてホーリーカッターで野菜を刻んでいるけど、僕はあえて包丁を使って野菜を切って行きます。
 アンジェラさんと一緒に来ている侍従の人に教えてもらいながら、少しずつ野菜を刻んでいきます。

「指を切らない様に、猫の手で切るのがコツなんですね」
「そうですわ。料理も訓練を行なえば、誰でも上達しますわよ」

 頑張って野菜を切ったけど、初めて教わる事が多くてとっても勉強になりました。
 いつもユリスさんや食堂のおばちゃんの作った料理を食べているけど、料理って本当に大変なんだ。
 今度は、刻んだ野菜とお肉を大きな鍋で煮ていきます。
 と、ここでモゾロフさん達がやってきました。

「おっ、今日はレオが料理をしているのか。最初は薄味にして、あくを良く取れよ。段々水分が飛んで濃い味になってくるぞ」
「そういえば、皆さん料理が得意なんですよね。とっても羨ましいです」
「まあ、おやじとかーちゃんの手伝いを小さい頃からやっていたからな。野営とかで凄く役にたったぞ」

 僕がお鍋の番をしているのを見て、セルゲイさんが色々とアドバイスをしてくれました。
 料理を覚えれば色々な事に役に立ちそうだから、頑張って覚えないと。
 ユリスさんとオリガさんの教えだと、とっても厳しい気がするね。
 さてさて、味見をしてみてと。

「こんな感じでできました。どうでしょうか?」
「うん、良い感じですね。では、火を止めて器に盛り付けましょう」
「盛り付けは、私も手伝いますわ」
「私も手伝います。レオ君も頑張って料理をしましたね」

 侍従の人の合格を貰ったので、僕はアンジェラさんとライサさんと一緒に作った料理を器に盛り付けます。
 さてさて、みんなの反応は?

「初めて作ったにしては上出来だ。良い味だぞ」
「そうだな。良い感じにできているぞ」

 職人さんが、ニカっとしながら僕に答えてくれました。
 ユリスさんやオリガさん、食堂のおばちゃんに比べたら全くかなわないけど、それでも普通に食べられるスープが出来上がったよ。
 僕もシロちゃんも、ホッと一安心です。

「黒髪の天使様が初めて作った料理を食べる事ができたなんて、絶対に他の方に自慢できますわ」

 ライサさんは、なんだが別方向で僕の作った料理を食べて感動していました。
 今度はもっと美味しい料理ができる様に、僕もシロちゃんも頑張って勉強しようと心に決めました。
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