上 下
204 / 509
第五章 シークレア子爵領

第二百九十九話 男爵様は苦労人

しおりを挟む
 倒したゴブリンの処理も終わり、ゴブリンキングもシロちゃんのアイテムボックスに入れました。
 怪我をした人の治療も、バッチリ終わりました。
 まずは、これで一安心だね。

 ぴょーん。

「シロちゃん、凄かったよ。カッコ良かったよ!」

 僕の頭の上に乗ったシロちゃんを、いっぱい褒めました。
 何と言っても、単独でゴブリンキングを倒しちゃったもんね。

「いやあ、黒髪の魔術師が連れているスライムは、ゴブリンキングよりも強いのかよ」
「スライムが武器を使うのもすげーけど、それでゴブリンキングを倒すんだもんな」

 僕の周りに冒険者が集まってきて、口々にシロちゃんが凄かったって褒めていたよ。
 シロちゃんは、ちょっと照れたみたいで軽くふよふよと揺れていました。
 さてさて、いつまでも森の中にいるわけにもいかないので、僕達は森を抜けて街に戻ります。

「ふう、流石に今回は死ぬかと思ったぜ」
「そうだな。まさかゴブリンの襲撃があるとは思わなかったぞ」

 森の中から街道まで出てくると、冒険者も守備隊の人もようやく張り詰めていたものがとけたみたいです。
 ゴブリンの襲撃は、完全に予想外だったみたいですね。

「集まった皆に感謝する。こうして、何とか街の脅威を排除する事ができた。まだまだ作戦は続けるが、今日はゆっくりと休んでくれ」

 男爵様が兜を取って、作戦に参加してくれた人に感謝していた。
 兜を取った男爵様は、青色の短髪でとってもダンディーな人だったよ。

「守備隊長とギルドマスターは、屋敷に来てくれ。今後の事を話し合おう」
「「畏まりました」」

 激しい戦闘があった後なのに、まだまだお仕事があるんだね。
 皆さん、本当にお疲れ様です。

「レオ君にも危ない所を助けてもらい感謝する。冒険者ギルドに討伐したものを出した後で良いので、屋敷に寄ってくれないか?」
「あっ、はい。分かりました」
「では、守備隊がレオ君を屋敷まで送ります」

 急に僕も討伐に参加しちゃったから、色々と話があるんだね。
 僕とシロちゃんは、守備隊の人と一緒に冒険者ギルドに向かいました。

 どーん。

「な、なんじゃこりゃー! ゴブリンキングじゃないか! しかも、このゴブリンの討伐証の数はなんだよ!」

 シロちゃんが討伐した数々のものを出したら、卸担当の職員がビックリしちゃったよ。
 森の中でこんな事になっていたなんて、全然思わないもんね。

「では、後の対応は我々で行います。レオ君は、他の隊員と共に屋敷に向かって下さい」

 ありがたい事に、説明は守備隊の人がしてくれるんだって。
 僕とシロちゃんは、他の守備隊の人と共に冒険者ギルドを後にして屋敷に向かいました。

「あっ、見えてきました。冒険者ギルドから直ぐなんですね」
「この男爵領自体、それほど大きくありません。とはいえ、領民は中々の数がおりますよ」

 守備隊の人が色々と説明してくれたけど、沢山のお家が建っているね。
 そんな事を思いながら、僕は屋敷に入りました。
 屋敷に入ると、直ぐに応接室に案内してくれました。
 守備隊の人とはここまでですね。

「失礼します」
「おお、来たか。座ってくれ」

 男爵様に促されて、僕は席に座りました。
 直ぐにお茶とお菓子が出されました。

「レオ君には、本当に助けて貰った。今日参加した者と領民を代表して感謝する」
「僕も、皆さんを助ける事ができて、本当に良かったです。でも、馬車便でも沢山のオオカミを倒しだしたけど、何かあったんですか?」
「身内の恥を晒す事になるが、これは先日亡くなった父の悪政が原因だ」

 男爵様のお父さんの悪政って、何かあったのかな?

「父は貴族らしい贅沢な暮らしを好んで、街の防衛費にあまりお金を出さなかったんだよ。少ない予算で何とかやりくりをしていたのだけど、どうしても対応するのが限界だったんだ」
「そんな事があったんですね。街道を巡回する守備隊の人の人数も限られます」
「まさにその通りだ。しかし、父が亡くなったので、何とかしようと対策をしていたんだよ」

 男爵様が溜息をついているけど、今までも本当に苦労していたんだね。
 守備隊長さんもギルドマスターも、男爵様の言葉を聞いてうんうんと頷いています。

「まさかゴブリンの襲撃があるとは思わなかったが、逆にゴブリンキングの流通によりある程度資金が出来る。これからは、討伐依頼を増やす予定だ」
「そこそこ腕がある冒険者なら、この森は宝の山ですもんね」
「そういう事だ。幸いにして、我が領内にいる冒険者は腕が立つ者が多い」

 となると、これからは街道も安全に通行できる様になるんだね。
 馬車便を使う人も、一安心だね。

「レオ君に支払う報酬は、纏めて冒険者ギルド経由で支払おう。後払いになって悪いな」
「僕は急ぎでお金を必要としていないので、全然大丈夫ですよ」
「ご厚意に感謝する。その代わりといってはなんだが、今夜は我が家に泊まってくれ。領を救った恩人として、歓迎しよう」

 えー、僕は屋敷に泊まるために討伐を手伝った訳じゃないんだけど。
 でも、折角なのでご厚意に甘える事になりました。

「レオ君の武勇伝は数多く聞いているが、実際に目にすると現実はもっと凄いと感じたよ。夕食の際にでも、話を聞かせてくれ」

 あっ、サンダーランド辺境伯領に向かう最中でも伯爵様と色々とお話をしていたっけ。
 ニコニコとする男爵様を見ると、あの時と同じ様になる気がしたよ。
しおりを挟む
感想 146

あなたにおすすめの小説

異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~

樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。 無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。 そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。 そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。 色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。 ※この作品はカクヨム様でも掲載しています。

チート転生~チートって本当にあるものですね~

水魔沙希
ファンタジー
死んでしまった片瀬彼方は、突然異世界に転生してしまう。しかも、赤ちゃん時代からやり直せと!?何げにステータスを見ていたら、何やら面白そうなユニークスキルがあった!! そのスキルが、随分チートな事に気付くのは神の加護を得てからだった。 亀更新で気が向いたら、随時更新しようと思います。ご了承お願いいたします。

幼少期に溜め込んだ魔力で、一生のんびり暮らしたいと思います。~こう見えて、迷宮育ちの村人です~

月並 瑠花
ファンタジー
※ファンタジー大賞に微力ながら参加させていただいております。応援のほど、よろしくお願いします。 「出て行けっ! この家にお前の居場所はない!」――父にそう告げられ、家を追い出された澪は、一人途方に暮れていた。 そんな時、幻聴が頭の中に聞こえてくる。 『秋篠澪。お前は人生をリセットしたいか?』。澪は迷いを一切見せることなく、答えてしまった――「やり直したい」と。 その瞬間、トラックに引かれた澪は異世界へと飛ばされることになった。 スキル『倉庫(アイテムボックス)』を与えられた澪は、一人でのんびり二度目の人生を過ごすことにした。だが転生直後、レイは騎士によって迷宮へ落とされる。 ※2018.10.31 hotランキング一位をいただきました。(11/1と11/2、続けて一位でした。ありがとうございます。) ※2018.11.12 ブクマ3800達成。ありがとうございます。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

一家処刑?!まっぴら御免ですわ! ~悪役令嬢(予定)の娘と意地悪(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。

せっかく転生したのに得たスキルは「料理」と「空間厨房」。どちらも外れだそうですが、私は今も生きています。

リーゼロッタ
ファンタジー
享年、30歳。どこにでもいるしがないOLのミライは、学校の成績も平凡、社内成績も平凡。 そんな彼女は、予告なしに突っ込んできた車によって死亡。 そして予告なしに転生。 ついた先は、料理レベルが低すぎるルネイモンド大陸にある「光の森」。 そしてやって来た謎の獣人によってわけの分からん事を言われ、、、 赤い鳥を仲間にし、、、 冒険系ゲームの世界につきもののスキルは外れだった!? スキルが何でも料理に没頭します! 超・謎の世界観とイタリア語由来の名前・品名が特徴です。 合成語多いかも 話の単位は「食」 3月18日 投稿(一食目、二食目) 3月19日 え?なんかこっちのほうが24h.ポイントが多い、、、まあ嬉しいです!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。