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第四章 サンダーランド辺境伯領

第二百九十話 新たな旅立ちの日が決定

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「なる程、新たな黒髪の天使様の逸話が生まれたという訳か」
「ええ、とっても素晴らしいですわ。なけなしのお金を握りしめた女の子にリースを作ってあげただけでなく、女の子の母親も治して治療費はもう女の子から貰っていると言うなんて」
「ええ、とても素晴らしいですね。やはり、レオ君はレオ君なんだと改めて理解しました」

 現在、僕はボーガン様のお屋敷の応接室にいます。
 今日あった女の子の事を話したら、何だか凄く盛り上がりました。
 新たな黒髪の天使様の逸話って、何だか大げさに感じますよ。

「おっと、話を進めないと。まずはお礼だな。今年の花祭りは、久々の大盛況だった。黒髪の天使様の作ったリースを買うと幸せが訪れるという噂が広まってな、更にレオ君が色々な出店を絶賛していたのもあって人が絶えなかったぞ」
「我が家も多くの人が訪れて、久々に忙しい一週間でしたわ。多くの人がレオ君の作ったリースを購入していて、とっても嬉しそうでしたわよ」

 僕は頑張ってリースとピンブローチを作っただけなんだけど、それでも多くの人に喜んで貰えたんだね。
 僕もシロちゃんも、とっても満足です。

「来年以降どうするかは、商会の会長との相談だ。レオ君という強力なコンテンツがないから、別の案を考えないとな」
「フレアさんとミシャさんの作ったリースも、とっても人気がありましたよ。きっと来年も大丈夫です!」
「はは、そうか。レオ君の師匠ってのもあって、二人は更に有名になったもんな」
「「れ、レオ君!」」

 僕が褒めるとフレアさんとミシャさんはワタワタとしちゃったけど、来年も大丈夫な気がするよ。
 花祭り関連は、ひとまずこれで終わりみたいです。

「次は窃盗団の件だな。幸いにして、盗まれた物の多くを持ち主に返せた。盗まれてから日が経っていないのもあるだろう」

 沢山盗まれた物があるから、返すのは大変かと思っちゃったよ。
 でも、何とかなって良かったね。

「それから、ゴルビは死罪になる。過去に複数の強盗殺人を犯していて、元から捕まったら死刑になると決まっていたのだよ。他にも数人死刑になる」
「それは仕方ないかと。罪を犯したなら、相当の罰を受けるべきです」
「私も、ゴルビが犯した罪を聞いていました。ですので、彼は罪を償う必要があります」

 ゴルビの件は、フレアさんとミシャさんの中でも決着がついているみたいです。
 死刑の話を聞いても、淡々と答えていました。
 悪い事をしたら、罰を受けないとならないね。

「次はレオ君への話だ。シークレア子爵も絡んでいるが、どちらからというと国軍からの依頼だな」

 あれ?
 てっきりシークレア子爵領でのお仕事の話かと思ったけど、軍が絡んでいるんだ。
 一体何だろうね。

「仕事の話なのは間違いない。実は、これは帝国との紛争に係る件だ。帝国とは我がサンダーランド辺境伯領と隣のディフェンダーズ伯爵領だけでなく、海を通じても繋がっている。そして、この度の小規模な衝突を受けて、新たな軍船を作る事になった」
「もしかして、その軍船を作るのを手伝うのですか?」
「レオ君は賢くて、こちらの説明が省けて助かる。軍船を作る造船所で、木材の加工とかを手伝って欲しいそうだ。後は、工場が多くて怪我人もいるから、治療も行って欲しいらしい」

 おお、今度はお船を作るお手伝いをするんだね。
 僕とシロちゃんのカッター系魔法は切れ味抜群だから、どんな木でも切っちゃうよ。
 船を作る人って、どんな人なのかとっても楽しみです。

「その件で、軍からレオ君には出来るだけ早くシークレア子爵領に来て欲しいと依頼があったのだよ」
「分かりました。でも、お世話になった人に挨拶をしたいので、出発は明後日でも良いですか?」
「一日くらいなら問題ないだろう。レオ君は、本当にしっかりとしているな」

 サンダーランド辺境伯領には長くいたから、お世話になった人が沢山いるんだよね。
 ちゃんと、出発の挨拶をしないと駄目だよね。

「あの、家庭教師をしてくれたマリアナさんにも、出発の挨拶をしたいんですけど」
「おお、そうかそうか。明日の午後に呼んでおこう」

 そういえば、マリアナ先生にはピンブローチを作ってないよね。
 ミシャさんのお家に帰ったら、マリアナ先生の分のピンブローチを作らないと。
 こうして、僕の出発の日が決まりました。
 新しい旅にワクワクしているけど、仲良くなった人とのお別れはちょっと寂しいね。
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