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第四章 サンダーランド辺境伯領

第二百三十九話 今日は焦らずにゆっくり治療します

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 今日から二日間かけて、新たに入院した人を中心に治療していきます。
 今日は第三治療院に入院している人の治療をする為に、チェルシーさんと一緒に馬車に乗って現地に向かいます。

「あっ、既に多くの人が入院しているんですね」
「病室の空き待ちの人がいたのよ。寒くなって、体調を崩す人が増えたのよ」

 大部屋は、既に多くの患者で埋まっていました。
 そっか、寒くなると風邪をひいて体調を崩す人が増えるもんね。
 全部で三部屋ある大部屋も、殆どが埋まっているそうです。
 よーし、今日も張り切って治療しちゃうよ。
 早速シロちゃんと手分けをして、大部屋にいる人の治療を始めます。

「はい、おばあさん体調はどうですか?」
「おやおや、すっかり体調が良くなったよ。ありがとうね」

 風邪が悪化していたおばあさんも、すっかり調子が良くなってニコニコしています。
 やっぱり元気になると、とっても気分が良いよね。
 おばあさんはお話が好きみたいで、僕に色々と話しかけてきました。

「わあ、スライムが魔法を使ったよ。すごいねー!」

 シロちゃんは、小さな子どもに大人気です。
 時折魔法の玉をクルクルと捺せたりして、子どもを喜ばせていました。
 スライムが魔法を使うってだけでも、子どもは大興奮です。

「レオ君、そんな感じで良いのよ。ゆっくり時間をかけて話をするのも、治療の一つよ」

 いつもならスピード重視でぱぱぱっと治療しちゃうけど、今日は敢えて一人ひとりに時間をかけて治療しています。
 チェルシーさんも、それで良いって褒めてくれました。

「確かにスピード重視で治療しないといけない時もあるわ。でも、今日は治療する人数も決まっている。だから、そういう時は少し雑談を増やしてあげるだけで、患者の心が軽くなるのよ」

 チェルシーさんが教えてくれた事は、僕にも理解できました。
 さっき治療したおばあさんも、何気ない会話をしたらとっても喜んでくれたんだ。
 シロちゃんは喋れないけど、魔法を上手に使ってコミュニケーションを取っているよ。
 こうして、普段よりもゆっくりと、でもしっかりと治療をする事ができました。

 ガラガラガラ。

「今日はとっても勉強になりました」
「そうね。気持ちも安定していたし、何よりも頑張らなくちゃと気負いすぎてなかったわ」

 そういえば、昨日もフレアさんとミシャさんが僕の事を良く見てくれてコントロールしてくれました。
 一人になると、頑張らないとって思っちゃうんだよなあ。

「他人の為に頑張ろうと出来るのは、レオ君のとっても素晴らしい才能よ。それはとっても大切な事だから、これからも続けて良いのよ」

 チェルシーさんが、僕をぎゅっと抱きしめてくれながら優しく話しかけてくれました。
 何だかとっても心が温かくなって、思わずチェルシーさんを抱き返しました。
 そして、馬車は屋敷に到着しました。

「お帰りなさい。あら、レオ君良い顔しているわね」
「はい、今日は焦らずにゆっくりとお話しながら治療が出来ました」
「そう、それは良かったわ。ゆっくりと治療する事で、治療の確実性もきっと上がるわ」

 出迎えてくれたスーザンさんも、僕とシロちゃんをニコリとしながら撫でてくれました。
 やっぱり僕が無理をしなかったので、ホッとしている所があるみたいです。
 そのまま食堂に向かって、皆で昼食を食べる事になりました。
 因みに、ボーガン様とマシューさんはまだお仕事中です。

「そういえば、レオ君にってお礼が沢山届いたわ。お菓子とかが多かったけどね」
「前に、教会でも沢山のお菓子を貰いました。全部は食べ切れないので、少し貰って後は孤児院にあげちゃいました」
「レオ君らしいわね。じゃあ今回もそういう事にするから、後で食べるお菓子を選んでね」

 食事を食べながら、スーザンさんが僕に贈り物の話をしてくれました。
 折角のプレゼントだから、駄目にしちゃ申し訳ないもんね。

「それと、昨日の薬草採取がとても良かったって、街で噂になっているってよ」
「昨日は、フレアさんとミシャさんが丁寧に教えてくれたからですよ。二人は二つ名を持っている、とっても凄い冒険者ですから」
「レオ君も、とても丁寧に教えてくれたって話よ。悪い噂じゃないし、良い事だわ」

 スーザンさんがちょっとニヤリとしながら教えてくれたけど、沢山の人と一緒に薬草を採ったから色々な話が広まったんだね。
 こうして皆で御喋りしながら昼食を食べて、贈り物を確認してお昼寝をしました。
 今日は沢山魔力を使っていないけど、心がぽかぽかしていて気持ちよくお昼寝できそうです。
 僕とシロちゃんは、お互いに抱き合いながら眠りにつきました。
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