上 下
179 / 458
第四章 サンダーランド辺境伯領

第二百三十一話 フレアさんがサンダーランド辺境伯領に来た理由

しおりを挟む
「さて、二人とも執務室に来てもらおう。ああ、到着の手続きなら合わせて行なおう」

 僕とお姉さんは、ホークスターさんの後をついていきながら二階に上がって行きました。

「お姉さん、助けてくれてありがとうございます」
「私こそ余計な事をしちゃったかな? 君が、あの黒髪の魔術師のレオ君だったとはね。私はフレア、宜しくね」

 フレアさんは歩きながらお礼を言った僕の頭を撫でてくれて、手を繋いでくれました。
 キリリとしているけど、とっても優しいお姉さんだね。

「ここが私の執務室だ、ソファーに座ってくれ。この二人の到着の手続きをしてやってくれ」
「畏まりました」

 ホークスターさんの執務室に入ると、綺麗なピンク色の長髪の女性が仕事をしていました。
 僕とフレアさんは、その女性に冒険者ギルドカードを渡しました。

「丁度、別件で下に降りてきた所だったんだよ。そうしたら、急に騒ぎが起こって見に行ったんだよ。フレアが酔っ払いにしたのも、正当防衛で良いだろう。何せあの馬鹿は、ナイフに手をかけていたからな」

 ホークスターさんも、ソファーに座りながら話をしてくれました。
 丁度、騒ぎが起きたタイミングで一階の受付にいたんだね。

「レオ君は、フレアとは初めて会うね。魔剣士型の剣士で、火の魔法剣を扱う事ができるぞ」
「凄い! 僕、中々魔法剣が上手くならないので、フレアさんの事をとっても尊敬します!」
「私は、放出魔法が出来ない魔法使いなのよ。私からしたら、万能魔法使いのレオ君の方が凄いと思うわ」

 僕とシロちゃんが凄いビックリしていると、フレアさんもちょっと頬を赤くしながら僕の事を褒めてくれたよ。
 僕は魔法剣の凄さを知っているから、フレアさんはとっても凄いと思うよ。
 そんなはしゃいでいる僕の事を、ホークスターさんもニコニコしながら見ていました。

「フレアは面倒見が良くてな、わざわざ別の街から知り合いの見舞いに来たんだよ。まあ、レオ君が治療しちゃったがな」
「あの治療院に入院していたんですね。でも、僕もフレアさんはとっても優しいと思いますよ」

 ホークスターさんと僕が褒めたらフレアさんが更に顔が赤くなっちゃったけど、フレアさんらしいと思うよ。

「手続き完了しました。レオ様の依頼金については準備が必要なので、後ほど冒険者ギルドにおこし下さい」
「「ありがとうございます」」

 ここで、ホークスターさんの秘書っぽい人が僕とフレアさんに冒険者カードを返却しました。
 これでやる事が終わっちゃったけど、どうしようかな?

「フレアさん、僕も治療院について行って良いですか? 回復魔法を使って、どうなっているか見に行きたいので」
「良いわよ。一緒に行きましょうね」

 僕とシロちゃんは、フレアさんと一緒にホークスターさんの執務室を後にしました。

 トコトコトコ。

 僕とシロちゃんは、フレアさんと手を繋ぎながら街を歩いて行きます。

「フレアさんは、普段はどんな依頼を受けているんですか?」
「普段は、害獣駆除や動物や魔物の討伐が多いわ。でも、薬草採取にお手伝い系などもやるわよ」

 フレアさんは二つ名がある凄腕だから、どんな依頼でも完璧にこなしそうだね。

「レオ君は、治療院でどうやって治療をしたの?」
「僕とシロちゃんで、広範囲回復魔法を使いました。なので、実は各治療院で一回しか回復魔法を使っていませんよ」
「レオ君は、本当に凄い魔法使いなんだね……」

 フレアさんはビックリしちゃったけど、一度に沢山の人が良くなった方が良いよね。
 こんな話をしながら、僕達は教会に到着しました。
 第一治療院に、フレアさんのお友達が入院していたんだね。

「おや、レオ君ではないか。それに、紅の剣士様も一緒ですな」
「ブラッドリーさんも、治療院に来ていたんですね」
「ミサの終わりに寄ったのじゃよ」

 第一治療院に入ると、入口にブラッドリーさんがいました。
 とっても偉い人だけあって、今日も忙しそうですね。
 ブラッドリーさんとは入口で別れて、僕とフレアさんは女性部屋に向かいます。

「失礼します。あっ、ミシャ!」
「フレア、来てくれたのね」

 部屋に入ると、フレアさんが一人の女性の所に向かいました。
 青いロングヘアで、ちょっと小柄な女性です。
 僕も、フレアさんの後をついていきます。

「初めまして、レオです。この子はシロちゃんです」
「君が噂のレオ君ね。私はミシャ、剣士よ。治療してくれてありがとうね」
「ミシャは私の幼馴染で、剣を教えてくれたのよ」

 ミシャさんは、僕の頭を撫でながら挨拶してくれました。
 フレアさんに剣を教えたって事は、きっと凄腕の人なんだね。

「ミシャさんは、もう体は大丈夫なんですか?」
「ええ、病気で入院していたけど、レオ君のお陰ですっかり良くなったわ」

 ちょっとミシャさんが細いのが気になって、僕はミシャさんの調子を確認しました。
 うーん、まだまだもやもやっとしたのが、ミシャさんの体の中にあるよ。

「ミシャさん、もう一回回復魔法をかけますね」

 僕は回復魔法と聖魔法の合体魔法を、両手に準備しました。
 回復魔法だけだと、まだ駄目な気がしました。

 シュイーン、ピカー!

「こ、これがレオ君の魔法……」
「凄い、更に体が軽くなってきたよ……」

 僕の合体魔法は上手くいったみたいで、ミシャさんの体の中にあったもやもやが綺麗さっぱりなくなりました。
 フレアさんもミシャさんも、とっても驚いた表情をしているよ。

「これで、もっと良くなったと思いますよ。後は、ゆっくりと休んで下さいね」
「レオ君、本当にありがとうね。体が生まれ変わったみたいに軽いわ」

 ミシャさんも、とっても良い笑顔になってくれました。
 治療が上手くいって良かったね。
 フレアさんとミシャさんは、この後取っている宿に向かうそうです。
 僕も良い気持ちになりながら、ボーガンさんの屋敷に戻りました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜

福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。 彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。 だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。 「お義姉さま!」           . . 「姉などと呼ばないでください、メリルさん」 しかし、今はまだ辛抱のとき。 セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。 ──これは、20年前の断罪劇の続き。 喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。 ※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。 旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』 ※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。 ※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。

【完結】「父に毒殺され母の葬儀までタイムリープしたので、親戚の集まる前で父にやり返してやった」

まほりろ
恋愛
十八歳の私は異母妹に婚約者を奪われ、父と継母に毒殺された。 気がついたら十歳まで時間が巻き戻っていて、母の葬儀の最中だった。 私に毒を飲ませた父と継母が、虫の息の私の耳元で得意げに母を毒殺した経緯を話していたことを思い出した。 母の葬儀が終われば私は屋敷に幽閉され、外部との連絡手段を失ってしまう。 父を断罪できるチャンスは今しかない。 「お父様は悪くないの!  お父様は愛する人と一緒になりたかっただけなの!  だからお父様はお母様に毒をもったの!  お願いお父様を捕まえないで!」 私は声の限りに叫んでいた。 心の奥にほんの少し芽生えた父への殺意とともに。 ※他サイトにも投稿しています。 ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 ※「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※タイトル変更しました。 旧タイトル「父に殺されタイムリープしたので『お父様は悪くないの!お父様は愛する人と一緒になりたくてお母様の食事に毒をもっただけなの!』と叫んでみた」

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?

水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが… 私が平民だとどこで知ったのですか?

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

婚約者に忘れられていた私

稲垣桜
恋愛
「やっぱり帰ってきてた」  「そのようだね。あれが問題の彼女?アシュリーの方が綺麗なのにな」  私は夜会の会場で、間違うことなく自身の婚約者が、栗毛の令嬢を愛しそうな瞳で見つめながら腰を抱き寄せて、それはそれは親しそうに見つめ合ってダンスをする姿を視線の先にとらえていた。  エスコートを申し出てくれた令息は私の横に立って、そんな冗談を口にしながら二人に視線を向けていた。  ここはベイモント侯爵家の夜会の会場。  私はとある方から国境の騎士団に所属している婚約者が『もう二か月前に帰ってきてる』という話を聞いて、ちょっとは驚いたけど「やっぱりか」と思った。  あれだけ出し続けた手紙の返事がないんだもん。そう思っても仕方ないよでしょ?    まあ、帰ってきているのはいいけど、女も一緒?  誰?  あれ?  せめて婚約者の私に『もうすぐ戻れる』とか、『もう帰ってきた』の一言ぐらいあってもいいんじゃない?  もうあなたなんてポイよポイッ。  ※ゆる~い設定です。  ※ご都合主義です。そんなものかと思ってください。  ※視点が一話一話変わる場面もあります。

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。