上 下
177 / 458
第四章 サンダーランド辺境伯領

第二百二十九話 治療は一先ず完了です

しおりを挟む
 がちゃ。

「ほ、報告します。数人を除いて退院可能となっております」
「ほぼ全て、ですか……」

 シスターさんが応接室の中に入ってきて、治療結果を教えてくれました。
 スーザンさんは言葉を失っていましたが、僕とシロちゃんはちょっと不満です。

「レオ君、どうしたの?」
「うーん、全員一度に治せればと思っていたんですけど。僕はまだまだです……」

 チェルシーさんが僕の事に気がついてくれたけど、全員退院出来た方が絶対に良いよね。
 シロちゃんの魔力を使っての広範囲魔法だとしても、もう少し訓練を頑張らないと。

「ほほほ、何という向上心じゃ。これ程の魔法を使っても、全く慢心する事がないとは」
「そうですね。ふふ、やっぱりレオ君はレオ君ですね」

 ブラッドリーさんも僕の隣にいるスーザンさんも、僕にニコリとしてくれました。
 さて、第三治療院での治療は一先ず終わりなので、僕達は馬車に乗って第四治療院に向かいます。

「おや、第三治療院の治療は早く終わったみたいだね」

 第四治療院の前で、何故かマシューさんが僕達を待っていました。

「あなた、どうしたんですか?」
「冒険者ギルドに書類を出したついでに、レオ君の魔法がどんなものか見に来たんだよ」

 マシューさんは、お仕事のついでに第四治療院にやってきたんだね。
 だったら、あまり待たせたらいけないから直ぐに治療を終わらせないと。

「わあ、第四治療院はとても大きいんですね」
「サンダーランド辺境伯領でも、一番新しい治療院なんだよ。だから、施設も大きく作ったんだよ」

 マシューさんが第四治療院について説明してくれたけど、これは頑張って回復魔法を使わないとだね。
 早速大部屋に移動すると、またもやシスターさんが沢山いました。
 ここでも僕の魔法を見たいのと、魔法を使った後の怪我人の容態を確認する為みたいですね。
 僕としては、ただ回復魔法を使っているだけなんだけどなあ。

「では、始めます!」
「「「おおー」」」

 僕とシロちゃんが魔力を溜め始めると、周りにいたシスターさんや怪我人が声を上げました。
 今回は治療院が広いから、いっぱい魔力を溜めないと。

 シュイン、シュイン、シュイン。

「な、何という事だ。何重にも魔法陣が展開されているぞ」

 マシューさんは僕とシロちゃんの周りに現れた魔法陣の数に驚いていたけど、今回は僕も全力でいくよ!

「えーい!」

 シュイーン、シュイーン、シュイーン!

 僕とシロちゃんを中心にして、光が一気に広がりました。
 眩しいほどじゃないけど、中には手をかざして光を遮っている人もいます。
 僕とシロちゃんは、建物中に回復魔法が行き渡ったのを確認して、魔力の放出を止めました。
 段々と光が収まり、元の明るさに戻ります。

「ふう、わわっと」

 ふらっ、どさ。

 思った以上に魔力を使ってしまったので、僕はよろけて尻もちをついてしまいました。

「レオ君、大丈夫なの?」
「てへへ、一気に魔力を使ったので、ちょっと疲れちゃいました」

 直ぐに僕の所にチェルシーさんが駆け寄ってくれたけど、意識を失う程じゃないから大丈夫です。
 僕も頭をポリポリとして、失敗したと苦笑いです。

「な、何だあの魔法は。痛いのが全く無くなったぞ」
「あれだけの魔法を使って、ちょっと疲れた程度とは。黒髪の天使様は、とんでもない魔法使いですわ」

 怪我人もシスターさんも、とっても驚きながら体をペタペタと触っていました。
 後はシスターさんの確認待ちになるけど、この第四治療院は大きいから確認にも時間がかかりそうだね。

 ひょい。

「あっ、マシューさん一人で歩けますよ」
「いやいや、ふらついて尻もちをついた人が何を言っている。大分お疲れだから、このまま屋敷にも戻るよ」
「そうね、二日続けて大魔法を使ったのだから、部屋で休んでいてね」

 マシューさんだけでなく、スーザンさんも僕とシロちゃんを撫でながら気を使ってくれました。
 ここは、素直にお願いした方が良さそうだね。
 僕とシロちゃんは、マシューさんに抱っこされたまま馬車に乗り込みました。

「すー、すー」
「おや、レオ君はどうしたのかい?」
「父上、レオ君はとんでもない大魔法を使ったので、疲れてしまった様です」
「そうか、ではゆっくりと休ませてあげた方が良いだろうな。こうみると、まだあどけない男の子だな」
「そうですね。明日はゆっくりと休ませます」
「すー、すー」

 僕は馬車の中でマシューさんに抱っこされたまま寝てしまったので、屋敷についても抱っこされたまま部屋に送られました。
 そのまま、おやつの時間までぐっすりとねちゃいました。
 因みに後で教えて貰ったけど、第四治療院の怪我人は全員退院できるそうです。
 今度は回復魔法がキッチリと成功して、僕もシロちゃんも一安心でした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた

杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

追放された公爵令嬢の華麗なる逆襲

 (笑)
恋愛
クリスティーナ・ベルフォードは、名門貴族の令嬢として誇り高く生きていたが、突然の婚約破棄とともに人生が一変する。過去の自分を捨て、新たな道を歩む決意をした彼女は、辺境の地で事業を立ち上げ、次第に成功を収めていく。しかし、彼女の前に立ちはだかるのは、かつての婚約者や貴族社会の陰謀。彼女は自らの信念と努力で困難を乗り越え、自分の未来を切り開いていく。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

大人のマナー講習会でアシスタントをしたら婚約しちゃいました

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私はアリアナ・ワトソン。没落男爵令嬢です。父が詐欺師に騙され、多額の借金を負い王都の屋敷を手放し領地に戻ってきました。しかしそれでも生活は厳しく、私は顔が周りにあまり知られていなかったので、食堂でウェイトレスとしてアルバイトを始める事にしました。そのおかげで、毎日美味しいパンが買える様になり満足していました。 そんなある日、食事に来たお客さんにアシスタントをしないかとの話しを持ちかけられます。 その仕事は何と!? 大人のマナー教室第2弾です。

【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜

白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。 舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。 王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。 「ヒナコのノートを汚したな!」 「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」 小説家になろう様でも投稿しています。

義兄に告白されて、承諾したらトロ甘な生活が待ってました。

アタナシア
恋愛
母の再婚をきっかけにできたイケメンで完璧な義兄、海斗。ひょんなことから、そんな海斗に告白をされる真名。 捨てられた子犬みたいな目で告白されたら断れないじゃん・・・!! 承諾してしまった真名に 「ーいいの・・・?ー ほんとに?ありがとう真名。大事にするね、ずっと・・・♡」熱い眼差を向けられて、そのままーーーー・・・♡。

【R18】幼馴染の魔王と勇者が、当然のようにいちゃいちゃして幸せになる話

みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。 ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで

転生したので生活環境(ダンジョン)作ります。

mabu
ファンタジー
気がついたらダンジョンコアとして転生してしまったので開きなおって生活環境を整えていこうと思います。 普通に環境を整えるのとは違うみたいだけど 好きにしてイイそうなので楽しみます! 書き溜めをしてから投稿していこうと思っていたのですが 間違えて即投稿してしまいました。 コチラも不定期でマイペースに進めていくつもりの為 感想やご指摘等にお応えしかねますので宜しくお願いします。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。