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第四章 サンダーランド辺境伯領

第二百十九話 何故か復旧現場にいた人

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 サンダーランド辺境伯領への旅も十日目に入りました。
 道中色々あったけど、全部が良い経験になりそうですね。
 僕とシロちゃんは、今日も街道の復旧作業のお手伝いをしています。

「うーんしょ、っと」

 ボコ、ドサ。
 ボコ、ドサ。
 ボコ、ドサ。

 僕とシロちゃんは、競うように念動を使って土砂を麻袋に入れて行きます。
 他の人もどんどんと土砂を除去していくので、段々と退避スペースが広くなってきました。
 でも、午前中頑張っても残念ながら全面開通は出来ませんでした。

「うーん、もうちょっとだったんですけどね」
「仕方ないさ。予想以上に遅れるって事は多々あるさ」

 昼食を食べながら、僕とシロちゃんはちょっと不満を漏らしていました。
 復旧作業の進捗を邪魔しているのが、時々土砂の中から見つかる大きな石や岩です。
 僕やシロちゃんが魔法を使って岩を粉々にしているけど、その度に作業が止まってしまいます。

「大丈夫だ、また岩が見つかったとしても今日中には全面開通するだろう。もうちょい頑張ろうや」

 僕は担当者に励まされて、ちょっとやる気を取り戻しました。

「そうだ、土砂崩れ現場を直す所を見せると言ったが、昼食明けに見せてやろう」
「本当ですか?」
「ははは、こういう顔は子どもらしいな。だったら、さっさとめしを食っちまえ」

 担当者が僕を土砂崩れ復旧現場に連れて行ってくれるそうです。
 どんな作業をしているのか、とっても楽しみです。
 僕とシロちゃんは、一気に昼食を食べちゃいました。

「おお、凄い! 土の入った麻袋を、上手く組み合わせているんですね」
「互い違いになるように、麻袋を組んでいくのがポイントだ。ただ土を盛るだけじゃあ直ぐに崩れるし、麻袋もただ積めば良いわけじゃない。レンガ造りの家だって、レンガを交互に積むから強い建物になるんだぞ」

 崩れた現場は土台からしっかりと土の入った麻袋を積んでいって、また崩れない様にしています。
 積むのもバランスを考えての職人技なので、僕とシロちゃんはお手伝い出来ないね。
 やっぱり工事現場の職人さんも凄いんだね。
 復旧現場を見せて貰った後は、再び土砂を念動で麻袋に入れる作業を再開します。

 ボコ、ドサ。
 ボコ、ドサ。
 ボコ、ドサ。

「ふう、もう少しで退避スペース側の土も無くなるね」

 午後は良い感じに作業が作業が進んだので、もう少しで馬車二台分の通過スペースが確保出来ます。
 このタイミングで、僕とシロちゃんは担当者に声をかけられました。

「おーい、この辺の土を一気に退かす事は出来るか? 土壁側に纏めてやっちゃえば大丈夫だ」
「えーっと、シロちゃんと一緒にやってみます」

 僕の身長十人分位の長さの土を一気に念動で退かして欲しいと言われたので、僕もシロちゃんも張り切って準備をします。

 シュイーン。

「えい!」

 ボコン!

「「「おお、すげーな。あの量の土を一気に動かすなんて」」」

 初めてだから少し不安もあったけど、上手くいって良かった。
 周りの人は僕とシロちゃんの魔法に思わずびっくりしているけど、僕とシロちゃんは集中して宙に浮かんだ土を少しずつ移動させます。

 ドサッ。

「ふう、上手く行ったよ」

 パチパチパチ。

 僕とシロちゃんがホッとしていると、僕の後ろから拍手が聞こえてきました。
 拍手をしているのは子爵様と男爵夫人様と、えーっと初めて見る大柄な男性だよ。

「いやあ、初めて見たが凄い魔法だな。流石は黒髪の魔術師といった所だな」

 そして大柄な男性が、物凄く良い笑顔をしながら僕に近づいてきました。
 茶髪の髪をオールバックにして、整えたおひげと筋肉ムキムキな体も相まって凄い迫力だよ。
 先ずは挨拶をしてみよう。

「えっと、初めまして。僕はレオです。このスライムは、シロちゃんです」
「おお、小さいのに礼儀正しいな、感心だ。私はサンダーランド辺境伯のボーガンだ」

 ええー!
 何でここに、僕の旅の目的地であるサンダーランド辺境伯様がいるの?
 僕もシロちゃんも、思わずビックリしちゃったよ。

「ははは、大分驚いているようだな。この街道が使えないと、我が領も大分困るのだ。それに街道の維持は、領地貴族の義務だ。多くの恩恵を得ている代わりに、何かあったら即時対応しないといけないのだよ」

 笑いながら豪快に答えているボーガン様だが、その後本当の目的をぶっちゃけていた。

「まあ、どちらかというと、黒髪の魔術師の実力を見たくてここにやってきたのだがな。いやあ、このとても固い土壁といい大量に土を動かした念動といい、私の期待以上だ」

 ボーガン様はちょっと怖い印象を持っていたけど、こうして話を聞く限りとっても気さくな感じがするよ。
 丁度休憩時間になったので、そのまま皆集まって話をする事になりました。
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