上 下
151 / 458
第三章 コバルトブルーレイク直轄領

第二百三話 コバルトブルーレイクの街の最後の夜です

しおりを挟む
 そしてコバルトブルーレイクの街を出発する前日の夕方、僕は魔導具修理工房での作業を終えました。
 昨日今日はピンブローチ作りはしないで、シロちゃんと一緒にとにかく魔石に魔力を充填する作業に集中しました。
 現時点で魔力充填が必要な魔石は無くなったので、僕もシロちゃんもホッとしています。
 これで、冬もバッチリ迎えられるね。

「レオ君、最終日まで色々とありがとうね。お陰様で、溜まっていた空っぽの魔石が全て使える様になったわ」
「後は、俺達が頑張る番だな」

 ジュンさんも職人さんも、キラキラと光る魔石を手にしてニコリとしています。
 僕は魔導具の修理は出来ないし、やっぱり職人さんは凄いよね。
 すると、職人さんが僕の首から下げている懐中時計型の魔導具を指さしたよ。

「レオ、完了手続きしている間にその魔導具をメンテしてやる。今まで頑張ったご褒美だ」
「わあ、ありがとうございます」

 僕は魔導具を職人さんに預けて、その間にジュンさんに依頼完了の手続きをしてもらいます。

「はい、これで良いわ。手続き完了よ」
「俺の方も終わったぞ。大切に使っているから、ほぼ手入れする必要はなかったな」
「皆さん、ありがとうございます。いつかコバルトブルーレイクの街にまた行きたいので、その時は宜しくお願いします」
「ええ、待っているわ」
「きっとレオの事だ、直ぐに話題になって様子がわかるだろうな」

 僕とシロちゃんは、ジュンさんや職人さんにお辞儀をして魔導具修理工房を後にしました。
 ピンブローチ作りも学べたし、とっても良い経験になったよ。
 僕は夕暮れの街を歩いて、冒険者ギルドに向かいます。

「はい、受付完了です。併せて、出発の手続きも行いましたわ」
「マヤさん、ありがとうございます」
「こちらこそ、ありがとうね。新しい街でも、頑張ってね」

 僕は、たまたま空いていたマヤさんがいる受付で手続きをしました。
 これで必要な手続きも終わったし、後は宿に帰るだけだね。

「レオじゃないか。明日出発らしいな」
「はい、サンダーランド辺境伯領に行きます。アマード子爵領からコバルトブルーレイクの街まで一緒に旅をして、とっても楽しかったです」
「俺等も楽しかった。ゴブリンの群れを倒したのは、良い思い出になったぞ」
「俺等はまたアマード子爵領に行くが、レオも気をつけてな」

 僕はコバルトブルーレイクの街まで一緒に旅した冒険者にも挨拶をして、宿に帰っていきます。
 ゴブリンの群れと戦ったのは偶然だったけど、戦闘訓練にもなって勉強にもなったよ。

「レオ君、お帰り。お風呂入ったら、皆で夕食にしましょう」
「今夜は、フルールさんが美味しい夕食を用意してくれているわ」

 宿に着くとユリアさんとイリアさんが待っていてくれて、ナナさん達も一緒にお風呂に入りました。

「はふー」
「こうして、レオ君と一緒にお風呂に入るのも暫くお預けね」
「成長したレオ君が、どんな姿になっているか楽しみですね」
「はふーーー」

 ユマさんとハナさんと一緒に湯船に浸かっているけど、大きくなったらお風呂には一緒に入れないかも。
 僕としては旅の前のお風呂を堪能するのに、意識が集中しちゃってます。
 やっぱり、僕はお風呂がとっても好きだなあ。
 シロちゃんも、気持ちよさそうに湯船に浮いています。

「わあ、凄い美味しそう!」
「今日は腕によりをかけたわ。いっぱい食べてね」

 お風呂後に皆で食堂に向かうと、お肉料理や野菜炒めが並んでいました。
 フルールさんの料理はとっても美味しいから、僕もシロちゃんもニコニコです。
 ユリアさんとイリアさんも、美味しそうにお肉を食べていました。

「そういえば、ナナさん達って料理出来るんですか?」
「出来るよ」
「出来ますよ」
「簡単な物でしたら」

 おー、ナナさん達は料理が出来るんだね。
 村に行った時にユリアさんとイリアさんは炊き出しをしていたから料理が出来るのが分かっていたけど、ナナさん達も手伝っていたから料理が出来るんだね。

「僕も、いつかは料理を出来るようにならないと」
「そうね、レオ君は野営する可能性もあるし、料理は覚えていて損はないわ」
「簡単な物から覚えていけば良いわよ」

 僕もシロちゃんもふんすってやる気を見せたら、ユリアさんとイリアさんがニコリとしながら僕とシロちゃんを撫でてくれました。
 パンだけ食べてるだけじゃ、駄目だもんね。
 そして、食事が終わったら部屋に戻って明日の準備をします。
 直ぐに出発出来る様に、明日の着替えだけ用意して後は全部魔法袋に入れました。

「私も準備完了よ。しかし、魔法って本当に便利だわ」
「色々な物が、小さな袋に入っちゃいますよね」

 ナナさんは、盗賊退治で得た報奨金で魔法袋を購入していました。
 ナナさんは魔法使い用の魔法袋だから、そんなに高くないんだって。
 他の人も、量はそんなに入らないけど汎用の魔法袋を購入しました。
 それでも、あるとないとじゃ大違いみたいです。
 そういえば、僕の魔法袋ってどれだけの荷物が入るのかな?
 魔法使い用だから魔力量によるみたいだけど、そこまで入れた事はないもんね。
 あと、シロちゃんも魔法袋は使えそうだね。

「レオ君、最後の日だから一緒に寝ませんか?」

 僕とシロちゃんは、ナナさんと一緒のベッドに入りました。
 今までも何回か一緒に寝ていたけど、今日で最後だもんね。

「冒険者になるって思った時はとても不安だったけど、レオ君や色々な人に出会えて少し自信がついたわ」
「今はナナさんは立派な魔法使いですから、依頼にはもう困らないと思いますよ」
「そうね。最初使える魔法が闇魔法って知った時はどうしようかと思ったけど、今は魔法が使える事に誇りを持っているわ」

 もうナナさんは一人前の魔法使いだから、きっともっともっと活躍するね。
 僕とナナさんはもう少しだけ話してから、眠りにつきました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜

福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。 彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。 だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。 「お義姉さま!」           . . 「姉などと呼ばないでください、メリルさん」 しかし、今はまだ辛抱のとき。 セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。 ──これは、20年前の断罪劇の続き。 喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。 ※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。 旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』 ※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。 ※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。

【完結】「父に毒殺され母の葬儀までタイムリープしたので、親戚の集まる前で父にやり返してやった」

まほりろ
恋愛
十八歳の私は異母妹に婚約者を奪われ、父と継母に毒殺された。 気がついたら十歳まで時間が巻き戻っていて、母の葬儀の最中だった。 私に毒を飲ませた父と継母が、虫の息の私の耳元で得意げに母を毒殺した経緯を話していたことを思い出した。 母の葬儀が終われば私は屋敷に幽閉され、外部との連絡手段を失ってしまう。 父を断罪できるチャンスは今しかない。 「お父様は悪くないの!  お父様は愛する人と一緒になりたかっただけなの!  だからお父様はお母様に毒をもったの!  お願いお父様を捕まえないで!」 私は声の限りに叫んでいた。 心の奥にほんの少し芽生えた父への殺意とともに。 ※他サイトにも投稿しています。 ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 ※「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※タイトル変更しました。 旧タイトル「父に殺されタイムリープしたので『お父様は悪くないの!お父様は愛する人と一緒になりたくてお母様の食事に毒をもっただけなの!』と叫んでみた」

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。 3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。 高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。 これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!! 転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?

水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが… 私が平民だとどこで知ったのですか?

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

婚約者に忘れられていた私

稲垣桜
恋愛
「やっぱり帰ってきてた」  「そのようだね。あれが問題の彼女?アシュリーの方が綺麗なのにな」  私は夜会の会場で、間違うことなく自身の婚約者が、栗毛の令嬢を愛しそうな瞳で見つめながら腰を抱き寄せて、それはそれは親しそうに見つめ合ってダンスをする姿を視線の先にとらえていた。  エスコートを申し出てくれた令息は私の横に立って、そんな冗談を口にしながら二人に視線を向けていた。  ここはベイモント侯爵家の夜会の会場。  私はとある方から国境の騎士団に所属している婚約者が『もう二か月前に帰ってきてる』という話を聞いて、ちょっとは驚いたけど「やっぱりか」と思った。  あれだけ出し続けた手紙の返事がないんだもん。そう思っても仕方ないよでしょ?    まあ、帰ってきているのはいいけど、女も一緒?  誰?  あれ?  せめて婚約者の私に『もうすぐ戻れる』とか、『もう帰ってきた』の一言ぐらいあってもいいんじゃない?  もうあなたなんてポイよポイッ。  ※ゆる~い設定です。  ※ご都合主義です。そんなものかと思ってください。  ※視点が一話一話変わる場面もあります。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。