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第三章 コバルトブルーレイク直轄領

第百四十六話 コバルトブルーレイク直轄領の代官

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 カラカラカラ。

 僕達を乗せた馬車は、急いで代官邸に向かっています。

「今回の件で、代官が何かしたって可能性があるんでしょうか?」
「いや、それはないだろう。この街の代官は、非常に優秀だ。恐らくこの毒が混入したポーションの件で、何かを掴んでいたのだろう」

 馬車の中で腕組みをしながら考えているチャーリーさんに話しかけたけど、セルカーク直轄領みたいな代官とは違うんだね。
 うーん、何があったか分からないから、実際に代官に会って聞いてみた方が良いですね。
 という事で、僕達は代官邸に到着しました。

「マリアージュ侯爵様、お待ちしておりました。執務室にご案内いたします」

 代官邸に着くと、直ぐに代官邸で働く職員が出迎えてくれました。
 応接室じゃなくて執務室に案内されるって事は、それだけ重要な話なんだね。

 コンコン。

「失礼します、マリアージュ侯爵様と黒髪の魔術師殿がお見えになりました」
「入ってくれ」

 部屋の中から、渋い声が聞こえてきたよ。
 そして、部屋に入るとソファーの所に守備隊長さんとギルドマスターが立っていて、執務机の前には白髪の頭をビシッとオールバックにしたダンディーな初老の男性が立っていました。

「マリアージュ侯爵様、お忙しい中お越しいただき申し訳ありません。また、クリスティーヌ様にもご迷惑をおかけしました」
「いやいや、代官にも苦労をかけるな」

 チャーリーさんは、代官さんと笑顔で握手しています。
 確かにこの代官さんは、とっても良い感じがするよ。

「初めまして、レオです」
「君が、あの有名な黒髪の魔術師のレオ君だね。私は、このコバルトブルーレイク直轄領の代官をしているシェファードだ。村をゴブリンから救ってくれて、本当にありがとう。いずれ、レオ君とも話をしようと思っていたんだよ」

 代官のシェファードさんは、ニコリとしながら僕と握手をしてくれました。
 そして、僕達もソファーに座りました。

「実は、薬屋が不正に安くポーションを製造して販売しているという件を把握しておりまして、秘密裏に調査をしておりました。そして、丁度本日私どもも守備隊に本格的な調査を依頼した所でした」

 シェファードさんがチャーリーさんに申し訳なく話をしていたけど、あの女の子がポーションを飲んだのは本当にタイミングが悪かったんですね。
 次に、守備隊長さんが話を始めました。

「薬屋を強制捜査した所、薬草に適当な草を混ぜてポーションを製造していました。更には、何回も薬草を使い回していたのも確認しました。そして、本日店頭に並んだポーションに毒草が製造過程で混ざっていました。大人なら影響は少ないのですが、クリスティーヌ様の様な子どもが摂取するととても影響が大きくなります」
「そんな、そんな酷い方法でポーションを作っているなんて……」
「レオ君の言う通りです。既に、店主以下従業員も拘束している。クリスティーヌ様の殺人未遂についても、過失が疑われています」

 そんな良い加減なポーションを作るなんて、薬屋として失格ですね。
 僕の憤りに、守備隊長さんが同意してくれました。

「レオ君が、毒消しポーションで治療できると解明してくれて助かったわ。あの後、冒険者ギルドにもあのポーションを飲んで体調が悪くなったという相談があったのよ」

 ギルドマスターも、苦笑しながら話をしてくれました。
 ポーションはやっぱり冒険者が使う事が多いから、今回の毒が混入したポーションを購入したのもほぼ冒険者だったんだって。

「そして、薬屋から薬屋と黒幕と言われる貴族との繋がりを示す書類も見つかりました。黒幕は、バーサス子爵です」
「バーサス子爵か。貴族主義の中でも、贅沢主義とまで言われる奴だ。奴なら、こんな馬鹿な事をして平民から金を集めても全く不思議ではないな」

 守備隊長さんが事件の黒幕を教えてくれたけど、その貴族の名前を聞いてもチャーリーさんは全く驚きませんでした。
 というか、ため息をつきながら呆れていました。

「先程、バーサス子爵が別荘に入ったという連絡が入りました。既に容疑が固まっていますので、この後強制捜査を行います」
「コバルトブルーレイク直轄領で起きた事ですので、代官である私も守備隊に同行します」
「それなら、私も同行しよう。バーサス子爵には、私も一言言わなければ気が済まない」

 結局、この場にいる全員がバーサス子爵の別荘に乗り込む事になりました。
 僕も含めて、全員がバーサス子爵に対して怒っているもんね。
 守備隊も動くそうなので、早速僕達も馬車に乗ってバーサス子爵の別荘に向かいました。
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