小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

第二章 アマード子爵領

第九十六話 ゆっくりする、はずでした……

　からからから。

「せっかくだから、本だけでなくレオ君に似合いそうな服も選びましょう」
「そうね。可愛らしい服を選んであげましょうね」
「冬服とかは、また買ってあげるね」

　今は本屋さんに向かう馬車の中だけど、何故か皆は僕の服を買う話まで進んでいるよ。
　でも、メアリーさんもグレイスさんもデイジーさんも楽しそうに話をしているから、とても断れない雰囲気です。
　先ずは最初の目的地である、本屋さんに到着です。

「この国の製本技術も、昔と比べるとかなり向上したわ」
「そうなんですね。でも、本に文字を書くのって大変ですよね？」
「今は、専用の魔導具で本に文字を書くから大丈夫よ」

　メアリーさんが僕に教えてくれたけど、本に文字を書く魔導具もあるんだね。
　だから、色々な本が売られているんだ。
　僕は色々な本を眺めながら、目的の魔法使いの本のコーナーに辿り着きました。

「うーん、この本を持っているから、次のレベルの本がどれだか確認しないと」
「それでしたら、この二冊がお勧めです。中級レベルになりますが、充分に扱えるかと」

　一緒に店員さんがついてくれたので、お勧めの魔法使いの本を選んでくれました。
　中身をパラパラと見たけど、確かに今持っている本よりも少し難しくなっています。
　この二冊を買う事にしよう。
　さて、来店して五分で目的終了なのですが、何となく次は時間かかりそうな気がします。
　という事で本屋さんの直ぐ近くにある服屋さんに移動したのですが、何か僕には場違いみたいな高級店の気がします。

「これは、皆様方お揃いで。今日はどういったご用件でしょうか？」
「今日は、ここにいるレオ君の服を見繕って欲しいわ」
「巷で話題の小さな魔法使い様ですね。では、冒険者服も合わせてコーディネートいたしましょうか？」
「ええ、お願いね」

　あれ？
　メアリーさんと店員さんが冒険者服まで作るって言っているけど、僕はてっきり普通の服だけかなと思っていたよ。
　そして、店員さんに囲まれて先ずは採寸を行う事に。
　紐の様なもので、体の色々な所を測っていきます。

「レオ君は本当に体が小さいわね。成長しても使える様に、少し大き目で作っても全然問題ないわね」
「でも、小さいレオ君もとっても可愛いけどね。わあ、この色も良く似合うわ」

　グレイスさんは、僕が成長しても暫く使える様にと配慮してくれています。
　デイジーさんは僕に布を当てていて、どの色が良いか迷っていました。
　冒険者服はフードがついた上着を着る形になり、その下に普段着を着ます。
　
「靴も良い物を揃えて良いわね。何せ、レオ君は結構歩くんだから」
「レオ君はダガー型の木剣を使っているけど、もう少し良い木剣を用意しても良いんじゃないかな？」
「レオ君の髪を縛る紐も、可愛い物があっても良いわね」
「あの、その……」

　そして、案の定色々な装飾品まで色々追加購入する事になりました。
　僕は皆さんにあれやこれやと色々なものを試着されていて、全て終わって馬車に乗ると疲れて眠ってしまいました。
　そのまま、デイジーさんと一緒にお昼寝タイムに突入しました。

「ははは、儂も長時間の買い物は疲れる。小さいレオなら、猶更だろうな」

　おやつの時間になって食堂に案内されると、僕が眠ってしまった理由を聞いたサイオンさんが豪快に笑っていました。
　大人の人でも疲れるのだから、僕だったらもっと疲れるよね。

「そうそう、レオに言う事があった。あの事件で捕縛された嫡男や関係者は、国軍が王都まで連行する事になるそうだ。丁度セルカーク直轄領にいる部隊が王都に帰るそうなので、ついでにあの馬鹿どもを連行するそうだ」
「じゃあ、師団長さんとかがアマード子爵領に来るんですね」
「そうだ。そして、国の裁判を受ける事になった。陛下も物凄く怒っていてな、既に嫡男の廃嫡命令が出ている。賠償金だけでも多額にのぼるだろう」

　まあ、あれだけの悪い事をしたんだから、ちゃんと罪は償って貰わないといけないよね。
　私利私欲に走ると、ろくな事にならないという事ですね。
　あの嫡男も、見栄の為にミスリル剣を欲しなければ、こんな事にならなかっただろうね。
　因みに、今日服屋さんで頼んだ服は二週間後に完成するそうです。
　休息日にお店に行って、受け取りに行くそうです。