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第二章 アマード子爵領
第九十話 急遽炊き出しに参加する事に
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僕は教会で沢山の人への治療を行って疲れてしまい、お風呂に入って夕食を食べると直ぐに寝てしまいました。
そして翌日は休息日なので、予定通りにアマード子爵邸に向かいます。
ちゃんと行かないと、デイジーさんが逆に教会の宿に来ちゃうもんね。
僕は休日なので沢山の人が行きかっている街道を歩きながら、そんな事を思っていました。
「おはようございます」
「レオ君、おはよう。屋敷に案内するよ」
アマード子爵邸に着くと、挨拶をした門兵さんが直ぐに屋敷まで案内してくれました。
一週間ぶりなのにその間は色々あったなと感じながら、僕は屋敷の中に入りました。
がし。
「レオ君、酔っ払いに襲われたって聞いたけど大丈夫だったの?」
「えっ? えっ?」
玄関ホールに入ったら、デイジーさんが僕の体をペタペタと触ってきました。
一瞬何が何だか分からなかったけど、薬草採取の後で酔っ払い冒険者に絡まれた事を聞いたみたいです。
僕はニコリとしてデイジーさんに向き直りました。
「デイジーさん、僕は大丈夫ですよ。直ぐに酔っ払いを撃退する事が出来ましたし、兵も直ぐに来てくれたので」
「そう、それは良かったわ。でも、最初に話を聞いた時は凄くびっくりしたのよ」
ようやくデイジーさんが僕から離れてくれたけど、それでも僕の事を心配そうに見つめていました。
「デイジー、レオ君を玄関ホールに居させたままでは悪いわ。応接室に行きましょう」
グレイスさんが、ちょっと苦笑しながらデイジーさんに声をかけてきました。
皆で応接室に向かいます。
かちゃ。
「あ、ウィリアムさん。おはようございます」
「おはよう、レオ君。座ってくれ」
応接室にはウィリアムさんが椅子に座っていました。
僕もウィリアムさんに挨拶をして、椅子に座ります。
グレイスさんはウィリアムさんの隣に座りましたが、デイジーさんは僕の横に座りました。
「先に例の冒険者の件を話そう。やはりあの冒険者は、セルカーク直轄領の事件に関与していた者だった。セルカークの街から軍が来て、冒険者を護送する事になった」
「そうだったんですね。でも、無事に対応出来て良かったです」
「そうだな。まあ、大量に武器を隠し持っていた時点で怪しい奴だったが、実はこのアマード子爵領に来てからは路銀が無くなってどうするか悩んでいたそうだ。特別誰かを襲撃する事は考えていなかったみたいだな」
例の酔っ払い冒険者の処分が無事に決まって良かったね。
やっぱり、悪い事をしたら駄目だよ。
「因みに、デイジーがこの話を聞いた途端、冒険者ギルドに行こうとしたわ。まあ、レオ君に何かあったらと焦る気持ちも分かるけど、無事なのは分かっていたから落ち着かせたわ」
「そ、そうだったんですね」
「そういうお母様も、冒険者ギルドに行こうとしてお父様に止められたじゃないですか!」
親子って本当に似ているんだね。
お互いに真剣に主張しているけど、僕を心配してくれたのは嬉しいね。
「では、私は仕事があるのでここで失礼させて頂く。レオ君、ゆっくりしていきな」
ウィリアムさんは、僕にニコリと話しかけながら席を立って部屋を出てきました。
でもこの後は何をすれば良いのか分からないので、グレイスさんに聞いてみました。
「グレイスさん、この後はどうすれば良いですか?」
「今日は、教会と一緒に貧民街向けに炊き出しを行う予定なの。デイジーも行くから、一緒にどうかしら?」
「はい、参加します」
炊き出しの存在は前にセレンお姉さんに教えて貰った事があるけど、実際に行うのは初めてです。
食材などは既に準備してあるそうなので、後は護衛と一緒に馬車に乗って現地に向かえば良いそうです。
という事で、早速グレイスさんとデイジーさんと一緒に馬車に乗り込みます。
「因みにどんな料理を出すんですか?」
「今日はパンとスープよ。いつも調理が簡単で直ぐに出来る物を用意しているわ」
グレイスさんが僕の質問に答えてくれたけど、施しの為の料理だから豪華な物は準備出来ないけど、ある程度は栄養を考えた料理が提供されるそうです。
貧民街には小さな子どももいるので、食べやすいメニューにもなるそうです。
そういえば、前にセルカークの街の守備隊長さんが孤児とかになった子どもは貧民街にいる事もあるって言っていたね。
「グレイスさん、この街には孤児院もあるんですか?」
「あるわよ。親を失った子どもとかを保護しているわ。ただ、この街の貧民街は家族でいる事が多いから、そうなると保護するのは難しいのよ」
あくまでも孤児を対象にしているので、親が健在だと孤児院には入れないんだって。
保護者を失った子どもは、保護の対象にしているそうです。
「難しいのはレオ君みたいなケースね。孤児だけど自分でお金を稼ぐ術を持っている者は、保護対象から外れる事があるわ。その場合は、後見人という子どもが成人するまで子どもの支援する存在がいる事があるわ」
僕の様に自分で判断出来てお金を稼げると、孤児院から卒業するんだって。
「レオ君の場合は、関わる人全てがレオ君の事を気にしているわ。私達もそうだし、冒険者ギルドや工房の親方もそうよ。きっとセルカーク直轄領で出会った人も、レオ君の事を心配していたわ」
僕は、出会った人がとても良い人なのが幸いなのかもしれないね。
心配してくれる人もそうだし、フローネさんの様に僕を怒ってくれる人もそうなのかもしれないね。
そして翌日は休息日なので、予定通りにアマード子爵邸に向かいます。
ちゃんと行かないと、デイジーさんが逆に教会の宿に来ちゃうもんね。
僕は休日なので沢山の人が行きかっている街道を歩きながら、そんな事を思っていました。
「おはようございます」
「レオ君、おはよう。屋敷に案内するよ」
アマード子爵邸に着くと、挨拶をした門兵さんが直ぐに屋敷まで案内してくれました。
一週間ぶりなのにその間は色々あったなと感じながら、僕は屋敷の中に入りました。
がし。
「レオ君、酔っ払いに襲われたって聞いたけど大丈夫だったの?」
「えっ? えっ?」
玄関ホールに入ったら、デイジーさんが僕の体をペタペタと触ってきました。
一瞬何が何だか分からなかったけど、薬草採取の後で酔っ払い冒険者に絡まれた事を聞いたみたいです。
僕はニコリとしてデイジーさんに向き直りました。
「デイジーさん、僕は大丈夫ですよ。直ぐに酔っ払いを撃退する事が出来ましたし、兵も直ぐに来てくれたので」
「そう、それは良かったわ。でも、最初に話を聞いた時は凄くびっくりしたのよ」
ようやくデイジーさんが僕から離れてくれたけど、それでも僕の事を心配そうに見つめていました。
「デイジー、レオ君を玄関ホールに居させたままでは悪いわ。応接室に行きましょう」
グレイスさんが、ちょっと苦笑しながらデイジーさんに声をかけてきました。
皆で応接室に向かいます。
かちゃ。
「あ、ウィリアムさん。おはようございます」
「おはよう、レオ君。座ってくれ」
応接室にはウィリアムさんが椅子に座っていました。
僕もウィリアムさんに挨拶をして、椅子に座ります。
グレイスさんはウィリアムさんの隣に座りましたが、デイジーさんは僕の横に座りました。
「先に例の冒険者の件を話そう。やはりあの冒険者は、セルカーク直轄領の事件に関与していた者だった。セルカークの街から軍が来て、冒険者を護送する事になった」
「そうだったんですね。でも、無事に対応出来て良かったです」
「そうだな。まあ、大量に武器を隠し持っていた時点で怪しい奴だったが、実はこのアマード子爵領に来てからは路銀が無くなってどうするか悩んでいたそうだ。特別誰かを襲撃する事は考えていなかったみたいだな」
例の酔っ払い冒険者の処分が無事に決まって良かったね。
やっぱり、悪い事をしたら駄目だよ。
「因みに、デイジーがこの話を聞いた途端、冒険者ギルドに行こうとしたわ。まあ、レオ君に何かあったらと焦る気持ちも分かるけど、無事なのは分かっていたから落ち着かせたわ」
「そ、そうだったんですね」
「そういうお母様も、冒険者ギルドに行こうとしてお父様に止められたじゃないですか!」
親子って本当に似ているんだね。
お互いに真剣に主張しているけど、僕を心配してくれたのは嬉しいね。
「では、私は仕事があるのでここで失礼させて頂く。レオ君、ゆっくりしていきな」
ウィリアムさんは、僕にニコリと話しかけながら席を立って部屋を出てきました。
でもこの後は何をすれば良いのか分からないので、グレイスさんに聞いてみました。
「グレイスさん、この後はどうすれば良いですか?」
「今日は、教会と一緒に貧民街向けに炊き出しを行う予定なの。デイジーも行くから、一緒にどうかしら?」
「はい、参加します」
炊き出しの存在は前にセレンお姉さんに教えて貰った事があるけど、実際に行うのは初めてです。
食材などは既に準備してあるそうなので、後は護衛と一緒に馬車に乗って現地に向かえば良いそうです。
という事で、早速グレイスさんとデイジーさんと一緒に馬車に乗り込みます。
「因みにどんな料理を出すんですか?」
「今日はパンとスープよ。いつも調理が簡単で直ぐに出来る物を用意しているわ」
グレイスさんが僕の質問に答えてくれたけど、施しの為の料理だから豪華な物は準備出来ないけど、ある程度は栄養を考えた料理が提供されるそうです。
貧民街には小さな子どももいるので、食べやすいメニューにもなるそうです。
そういえば、前にセルカークの街の守備隊長さんが孤児とかになった子どもは貧民街にいる事もあるって言っていたね。
「グレイスさん、この街には孤児院もあるんですか?」
「あるわよ。親を失った子どもとかを保護しているわ。ただ、この街の貧民街は家族でいる事が多いから、そうなると保護するのは難しいのよ」
あくまでも孤児を対象にしているので、親が健在だと孤児院には入れないんだって。
保護者を失った子どもは、保護の対象にしているそうです。
「難しいのはレオ君みたいなケースね。孤児だけど自分でお金を稼ぐ術を持っている者は、保護対象から外れる事があるわ。その場合は、後見人という子どもが成人するまで子どもの支援する存在がいる事があるわ」
僕の様に自分で判断出来てお金を稼げると、孤児院から卒業するんだって。
「レオ君の場合は、関わる人全てがレオ君の事を気にしているわ。私達もそうだし、冒険者ギルドや工房の親方もそうよ。きっとセルカーク直轄領で出会った人も、レオ君の事を心配していたわ」
僕は、出会った人がとても良い人なのが幸いなのかもしれないね。
心配してくれる人もそうだし、フローネさんの様に僕を怒ってくれる人もそうなのかもしれないね。
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