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第十六章 収穫祭

第三百三十九話 エキシビションマッチその一

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「そこまで。勝者、シルク」
「「「うおー!」」」

 準決勝も無事に終了。
 やはりというか、決勝はビューティーさんとシルク様の組み合わせになった。
 観客もこの二人がかなりの手練れだと分かったようで、決勝戦を楽しみにしている。

「では、決勝戦の前に模擬試合を二試合行います。二試合とも、かの有名な聖女部隊に所属する、来年結婚する婚約者同士の戦いです」
「「「まじか!」」」

 そしてついに模擬試合の開始となる。
 俺はさっき控室に行って四人に声をかけようとしたけど、声をかけられなかった。
 だって、四人とも気合が凄いんだもん。
 観客も有名な聖女部隊のメンバー同士の戦いとあって、テンションが上がってきている。

「それでは選手の入場です。聖女部隊における鉄壁のお二人です」
「「「うおー!」」」

 アルス様のお姉さんのアナウンスで、オリガとガルフが入ってきた。
 重戦士の装備をしているので、激しい戦いが予想されるのだろう。
 観客もテンションが上がってきた。

「ここで、オリガよりガルフへ一言あるそうです。えーっと、服を脱いだら床に投げるな。以上です」
「ぷぷぷ、うちの父ちゃんと一緒だ」
「既に奥さんの尻に敷かれているんじゃねーか」

 おい、このタイミングで何を言っているのですか。
 明らかにガルフの機嫌が悪くなってきたぞ。

「ガルフからオリガへも一言あるそうです。いい年して、ぬいぐるみを集めるのはやめてくれ。部屋がぬいぐるみだらけで怖い。だそうです」
「いい年って。そのセリフの方がやばいかも」
「ぬいぐるみは、うーん部屋に一杯だと引くかも」

 そして、ガルフもオリガの秘密を暴露している。
 男性陣が若干引いてるぞ。
 勿論オリガの機嫌も悪くなっていた。
 あれ?
 両者とも模造刀から魔法剣に変えているぞ。
 しかも、制御の腕輪も外した。

「試合時間は十分。その他は、トーナメントと一緒だ」

 ルシアの母親がルールを説明しているが、二人とも全く聞いていない。
 やばい、聖女パワーフル発動しないと。

「試合開始!」

 ガキン!
 ガキン!

「すげー、目で追えない」
「火花だけ見えるぞ」

 あーあ、二人とも本気の試合をしているぞ。
 珍しく盾で受け止める事もなく、超高速で舞台上を移動して打ち合っている。
 制御の腕輪を外した状態で身体強化魔法をかけているから、一般市民では二人の動きが追えていない。
 はた目には、火花が飛び散っているようにしか見えないだろう。

「うわあ、オリガお姉ちゃんもガルフお兄ちゃんも本気だよ」
「これは中々迫力があるわね」
「日頃の鬱憤をぶつけているのじゃ」

 俺の横で観戦しているミケにエステルとビアンカ殿下も、二人の戦いに若干引いている。
 というか、俺は魔法障壁を展開するのに精一杯だ。
 二人とも本気で魔法剣を打ち合うから、余波が結構凄いぞ。

「いいね、これだけの試合は中々お目にかかれないぞ」
「わが国でも上位になる剣士同士の戦いですから」
「あれだけの攻撃力を持ちながら、防御力が最大の武器なんだろう?」
「竜の姿の我々とも、いい勝負をしそうだな」

 王妃様達と竜王妃様達も、二人の戦いに見入っている。
 達人にとっては、この試合はとても良い酒の肴になりそうだ。

 なおも二人の戦いは続くのだが、残念ながらタイムアップの様だ。

「時間です」
「そこまで、試合終了だ」

 ルシアの母親の声で、二人は剣を打ち合うのを止めた。
 あれだけ激しく打ち合っていたのに、息がきれていない。

「すげー、こんな試合初めてみたぞ」
「これが聖女部隊の強さなのか」
「そりゃ、人神教国は負けるはずだ」

 観客は二人に対して声援を送っている。
 そりゃ、あれだけの試合は見る事は出来ないだろう。
 
 オリガとガルフは、妙にすっきりした顔で控室に戻っていった。
 あれだけ動けば、溜まっていたストレスも発散されるだろう。

「聖女部隊のオリガとガルフの模擬試合でした。因みに二人には、先日の王都防衛の功績で、二つ目の勲章が授与される事が決定したそうです」
「「「うおー!」」」

 あ、これは俺も聞いていた。
 というか、うちのメンバーの殆どに勲章が授与されるらしい。
 マシュー君達なんか、名誉騎士爵を叙爵するという。
 三人でギース伯爵領に現れたガーゴイル部隊を全滅させていたし、功績でいうと妥当なんだよな。
 観客も、あれが勲章を貰える力だと納得したらしい。

 さて、次はマリリさんとマルクの試合か。
 この試合も魔法障壁は全開で張らないとダメだろうな。
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