上 下
313 / 394
第十五章 人神教国

第三百十三話 美形に変装しすぎた侵入者

しおりを挟む
「お、ビアンカからだな」
「うーん、またもやというべきなのか」
「相変わらず、酷いことをするものだ」
「普通じゃない」

 王城の大会議室を対策本部にして、関係者が集められた。
 レイアとフェアも対策本部にいる。
 直ぐにレイアは、会議室の窓の外にいたララとリリとオリヴィエに加えて、バハムートに乗ったホワイトに状況を伝える。
 ララとリリは、ランドルフ領で人神教国と戦ったときに同様の事を経験している。
 対応に問題はないはずだ。

「南門より、魔獣と魔物が現れたと報告」
「他の門は、状況変わりありません」

 兵が新たな連絡をし、南門に異変が現れた事が伝わった。
 レイアは、直ぐにララ達に状況を伝えた。
 
「聞こえた?」
「オッケーだよ!」
「南門だね。ランドルフ領と一緒の対応でやるよ!」
「頑張ってきます!」

 レイアはララ達に伝えると、直ぐに動いてくれた。
 ララ達なら、多少の数がいても問題ない。
 と、ここでホワイトが近くに寄って何か話をしてきた。
 レイアは、直ぐに王妃様の元にいく。

「ホワイトが、王城の一階に大きなネズミさんがいるって」
「あらあら、それは大変ね」
「早めに駆除しないと」
「あなたは、そこから絶対に動かないでね。フェアちゃんも一緒に行きましょう」

 王様と宰相達は大会議室に残る。
 この前の王都襲撃で、偽物が入ったのもあるからだ。
 レイアは魔道具ギルドと、本物と偽物の見分けをする魔道具を試作中で、仮の物がこの会議室についている。
 それに警備も厳重になったので、ここにいれば問題ない。
 それに、王様は王妃様に逆らえない。
 それもレイアはよく知っていた。

「うん、何人かいるね」
「直ぐに、マジックブレイクを発動します」
「お願いね、フェアちゃん」
「はい、頑張ります」

 一階につくと、レイアは直ぐに侵入者の存在に気がついた。
 今回は各階毎に警備を増強しているので、侵入者は二階に上がれないでいたようだ。
 王妃がフェアに頼んでマジックブレイクを発動させた。
 フェアは闇魔法が得意なので、こういった補助魔法も得意だ。
 レイアは、サトーが聖魔法を駆使して闇魔法のマネをするのはとても凄いと思っている。
 サトーはつくづく魔法の才能がないと周囲にこぼしているが、うちのものはそんな事はないと思っている。
 レイアが思考を巡らせている間に、フェアの魔法が発動した。

「え? 何で?」
「変装が!」
「さっきの魔法だな」

 侵入者は、あっさりと変装が解かれて焦っている。
 魔道具の効果を無効化すれば、変装が解けるのは実証済み。
 王妃もレイアも、勿論その事を覚えている。

「すぐに捕縛せよ」
「はっ」

 王妃様の命令で、直ぐに変装が解かれた侵入者はあえなく警備をしていた兵に引き渡された。
 しかしレイアとフェアは、警戒を解いていない。
 もう一人、誰かがいる。
 そう思ったとき、近くから声がかかった。

「おお、ネズミをつかま……ブヘラ!」
「おお、凄い」
「思いっきり吹っ飛んだね」

 王様にそっくりに変装した侵入者が近づいてきたら、問答無用で王妃様達が侵入者の顔面にトリプルパンチをお見舞いした。
 ふっ飛ばされた衝撃で魔道具が壊れたのか、侵入者は王様への変装が解かれた。
 あ、鼻血が出ていて、歯も何本か折れている。
 王妃様達によってノックアウトされた侵入者は、直ぐに警備をしている兵に拘束される。

「かっこよすぎて気持ち悪かった」
「一発で偽物と分かったよ」

 レイアとフェアも、直ぐに偽物と見分けがついた。
 王国には、王様の肖像画などが出回っているが
 それは、大抵本人を美化したものだ。
 今回王様に変装した侵入者は、そんな美化された王様を参考にしたのだろう。
 付き合いが少しでもある人は、偽物だと一発で分かった。

「思わず鳥肌が立ちましたわ」
「陛下はもっといい加減なキャラですわ」
「あんなに美形キャラではありませんわ」

 とはいえ、王妃様達も本物に対して散々な評価をしている事に、レイアとフェアも警備の人達も苦笑いだった。

「おう、早かったな」
「王妃様は正しかった……」
「そうだね……」

 会議に戻ると、デザートをくっちゃくちゃ食べている王様と閣僚がいた。
 口いっぱいにデザートを頬張ってほっぺたに何かを付けている辺り、全く威厳もかっこよくもない。
 そんな王様の様子を見て、王妃様達はホッとしていた。
 レイアとフェアは、やはり王妃様の意見は正しいと思った。
しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。

いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成! この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。 戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。 これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。 彼の行く先は天国か?それとも...? 誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。 小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中! 現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。

喰らう度強くなるボクと姉属性の女神様と異世界と。〜食べた者のスキルを奪うボクが異世界で自由気ままに冒険する!!〜

田所浩一郎
ファンタジー
中学でいじめられていた少年冥矢は女神のミスによりできた空間の歪みに巻き込まれ命を落としてしまう。 謝罪代わりに与えられたスキル、《喰らう者》は食べた存在のスキルを使い更にレベルアップすることのできるチートスキルだった! 異世界に転生させてもらうはずだったがなんと女神様もついてくる事態に!?  地球にはない自然や生き物に魔物。それにまだ見ぬ珍味達。 冥矢は心を踊らせ好奇心を満たす冒険へと出るのだった。これからずっと側に居ることを約束した女神様と共に……

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~

冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。  俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。 そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・ 「俺、死んでるじゃん・・・」 目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。 新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。  元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です  2024年6月中旬に第一巻が発売されます  2024年6月16日出荷、19日販売となります  発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」 中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。 数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。 また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています 戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています そんな世界の田舎で、男の子は産まれました 男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました 男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります 絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて…… この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです 各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

処理中です...