上 下
202 / 394
第九章 王都生活編

第二百二話 実習生受け入れ開始

しおりを挟む
「どんな人がくるかな?」
「楽しみ!」
「ララも!」
「ワクワク」

 今日は実習生受け入れの日。
 受け入れがある貴族は、午後はお休みになるという。
 なので、うちも総出でお出迎えする。
 子ども達は実習生がくるので、朝からテンションMAXだ。
 因みにキチンとした服装でお出迎えしないといけないらしいので、皆執務服や騎士服に着替えてある。
 いつの間にか子どもバージョンの服も用意されていて、マシュー君達やマチルダにコタローもお着替えしていた。
 チナさん達は侍従の服に着替えてある。

「お、見えた!」
「一杯いる!」
「こっちに来た!」
「ワクワク」

 門番が実習生が来たと伝えてきたので、お屋敷の前に並んだ。
 あとミケたちよ、少し落ち着きなさい。さっきからはしゃぎ過ぎ。
 少し緊張している表情の学園生が、なんだか初々しく見える。
 学園生が並んだところで、お互いに挨拶。

「ようこそライズ伯爵邸へ。当主のサトーです。二ヶ月間宜しくお願いします」
「「「「「宜しくお願いします!」」」」」

 若干かんじゃった学園生もいたけど、挨拶も終わったので行動開始。
 マルクが前に出て説明している。

「これから各部屋に案内をします。今後の事について説明しますので、一時間後に二階のパーティールームに集まって下さい」
「「「「「はい!」」」」」

 学園生は、チナさん達に案内されてそれぞれに割り当てられた部屋に向かっていった。
 さて、俺も説明の準備をしないと。
 
「で、何でビアンカ殿下もいるんですか?」
「サトーと仕事すると、必然的に妾と接する。説明に来て至極当然じゃ」

 いつの間にか来ていたビアンカ殿下は、当たり前の様に説明会場にいた。
 その理屈は間違っていないが、王城に行ったときに説明しても問題ない気がする。
 ビアンカ殿下と話をしている内に、段々と学園生が集まってきた。
 まだ時間があるけど、部屋で休まなくて良いのかな?
 
「ふむ、ほぼ今年の五年の成績優秀者だな」
「マジですか?」
「本当だよ。特にあのうさ耳の子は平民だけど、特待生で学年首席だね」
「なんか、凄いメンバーが集まっていませんか?」
「とはいっても、ここにいるエステルお姉様にリンにフローレンスの六年生も、学年ではトップクラスじゃ」
 
 きっと俺だけでなくうちにいる六年生の影響もあって、これだけのメンバーが揃った気がする。
 うわー、責任重大だ。
 と、とりあえず時間は早いけど、揃ったから説明をしないと。

「では、改めて実習内容について説明します」

 俺が説明しようとすると、ビアンカ殿下が前に出た。

「ビアンカじゃ。妾の事を知っている者も多いかと思うが、特に文官とは一緒に仕事をする機会が多い。この国のまさに進むべき方向を学べるので、期待するがよい」
「フローレンスです。侍従志望の方は三人体制で指導にあたります。このお屋敷には多くの人が訪れますので、内部だけではなく外部にも気を使ってください」
「リンです。主に軍属の人の担当です。基礎的なトレーニングから、戦術等も指導します。訓練の一つとして、王都の巡回や国境警備隊との合同訓練も予定しています」
「最後に私エステルから。全員を対象にした野営訓練も予定しています。遠方に出張する事もあるから、経験しておくと助かるよ」

 えーっと、俺が話そうとしたことが全て話されてしまった。
 これは分担ができていると思って、素直に喜んだ方が良いのかな?
 特に六年生組は張り切っている。
 ここで水をさすのは無粋と思っておこう。

「それでは質問内容タイムです。答えられる範囲で回答します」

 質問タイムに切り替えて、話題を変えよう。
 お、早速文官志望の女子が手を上げた。

「エステル殿下とリン様がサトー様と婚約しているのは知っていますが、フローレンス様がここにいるのは何故ですか?」
「それはまだ公表してないだけで、フローレンスちゃんもサトーの婚約者の一人だよ」
「成程、だから王城からサトー様の所で働いているんですね」

 成程、王城で働いていたフローレンスがここにいることが不思議だったんだ。
 でもエステルよ、あっさり婚約の事をバラすのは良くないぞ。

 次は侍従志望の女子だけど、何となく質問の意図がわかった。

「あのー、お子様達が抱っこして欲しいみたいですが、宜しいですか」
「申し訳ないです。お願いします」

 マシュー君達にコタローが、さっきから新しい人に抱っこして欲しくてウズウズしていた。
 侍従志望の女子も、笑顔でマシュー君達を抱っこしていた。
 まあ、この子達が安心しているということは、ここにいる子達は良い子で間違いない。

「勇者ミケ様と知の令嬢レイア様は直ぐに分かりましたが、聖女サトー様ってもしかして当主様の事ですか?」

 うぐ、ここで返答し難い質問が。
 兵士志望の男の子が手を上げて質問してきた。
 どうしようかと悩んでいたら、女性陣に後ろを向かされて女装させられた。

「「「おお!」」」
「聖女サトーはサトーの女装した姿じゃ。因みに世の中の聖女伝説は、ほぼ事実じゃ」
「化粧もしないでウイッグ被っただけで、こんなにも美女になるんだよ」
「女性にとっては羨ましいですよね」
「この姿で様々な行いをされているのですわ」

 どちらかというと、美女になれる俺の事を女性陣が羨ましく思っている説明だけど。
 そして、何故この説明で学園生は納得したんだ?
 学園生は、聖女に会えたとキラキラした目で俺を見ている。
 あのー、男が女装しただけですが。

 そして、お屋敷の案内をすることに。
 二階はプライベートスペースが多いので、一階の施設を案内する。
 先ずは食堂スペース。既にスラタロウが歓迎用の料理を作っている。

 ガチャ。

「もぐもぐ、遅かったな」
「人数も多いと大変なんだろう」
「うちは一人だったから、楽だっぞ」
「サトーよ。後で、うちに来た実習生も合流するからな」
「スラタロウも人数が増えて張り切ってるぞ」
「「「「……」」」」

 宰相を含む閣僚が、食堂でスラタロウの料理の試食をしていた。
 しかも、後で実習生もくるという。
 突然のだらけた閣僚の姿をみた実習生は、まさに目が点になっていた。

「えっと、皆様よく来られますので」
「殆どがスラタロウの料理目当てだけど」

 リンとエステルがフォローするが、お構いなしに飲み食いしている閣僚達。
 俺は黙って食堂のドアを閉めた。

「えっと、気を取り直して。ここが図書室です。量よりも質で選んでいます」

 次は小さいけど図書室の部屋。
 絵本から勉強の本に専門書もある。
 小さいけど、実用的だ。

 ガチャ。

「あの、王太子妃様。何故こちらに?」
「今日の午後はどこもお休みで、王城の図書館もしまっていますから。ここなら絵本も質の良いのが揃っていますわ」
「えほんたのしー!」

 ドアを開けたら、今度は王太子妃様がウィリアム様に絵本を読み聞かせていた。
 この後の歓迎会にも参加する気満々だな。
 俺は黙って図書室の扉を閉めた。

 気を取り直して、今度はお風呂を案内する。
 殆ど手を加えなかったこのお屋敷だが、お風呂だけは大幅に改修した。
 お陰でかなり快適な浴室になっている。

「お風呂は男女別で、清掃時間以外は常に使えます。朝の訓練後にも入浴可能です」

 あれ?
 お風呂の説明の途中で、皆の視線がお風呂の入り口に向いている。
 浴室から陛下と王妃様達が出てきた。

「あの、何故我が家のお風呂に?」
「王城の風呂が故障してるからな」
「ええ、修繕部に修理を依頼しましたよ」
「直るのが明日になるんですって」
「せっかくの学園生の歓迎会なのだから、綺麗にしないと」
「後で息子達も入ってきますわよ。ここのお風呂は広くていいわね」

 言う事だけ言って、ほぼ自分達の部屋代わりにしてある客室に当たり前の様に入っていった。
 本当にフリーダムな王族だよ。
 因みに実習生は、ヤバいところにきてしまったと思っている様だ。
 俺もその気持ちはよく分かる。

 今度は屋敷を外から説明する。

「このお屋敷ですが、実は外壁は現在王都に建設中の防壁以上の防御力を誇ります」
「外壁のタイルは全て龍のウロコを贅沢に配合しておる。更に外装のペンキにも龍のウロコを配合しておる。ぶっちゃけ、ここを落とすのは至難の業だな」
「だからお父さんもお母さんも、安心して来ているんだよね」
「因みに離れの部屋も全て改修済です」

 王城を軽く凌ぐ防御力だからな。
 勿論王城も改修しているけど、広いからまだまだ時間はかかる。
 と、そこに馬がやってきた。
 馬も実習生に挨拶するらしい。

「あの、屋敷の中を馬がうろついていて大丈夫ですか?」

 おっと、さっきからコタローを抱っこしている侍従志望の子から、的確な質問があったぞ。
 確かに、普通は馬がポクポク歩いているなんてないよね。

「お馬さん頭いいから大丈夫だよ」
「そうそう」
「しかもお屋敷の門兵もできるの」
「メッチャ強い」

 ミケ達が話をするが、それでもまだ信じられないようだ。
 お、門の所に手紙を運んできた人がいる。
 馬は当たり前の様に門の所に行って手紙を受け取り、こちらに運んできた。

「まあ、このくらいは朝飯前です」

 俺が説明をすると、馬はドヤ顔をしている。
 もう少し一緒にいれば、実習生も慣れるかな。

「それでは実習生を歓迎して」
「「「「「乾杯!」」」」」

 スラタロウの料理ができたので、パーティールームで歓迎会を始める。
 今日は、立食形式で楽しんでもらう。
 因みに後から来た閣僚の所に実習にきている学園生は、まさか王族が揃っているなんて思ってもなかったようで最初は固まっていた。
 それでも仲間と話をしている内に緊張がほぐれたのか、今はスラタロウが作った料理をもりもり食べている。
 エステル達六年生や子ども達とも話をしているので、このまま仲良くやってほしい。

「うーん、流石はスラタロウの料理だ」
「毎回新作があるから楽しみだわ」

 そして、料理目当ての大人達は、ストレス発散も兼ねてめちゃくちゃ食べて飲んでいる。
 完全に酔っ払いの集まりになっている。
 うーん、何だかいつもと変わらないノリになってきた。
 こうして、我が家での学園生の実習生活が始まった。
しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。

いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成! この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。 戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。 これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。 彼の行く先は天国か?それとも...? 誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。 小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中! 現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。

喰らう度強くなるボクと姉属性の女神様と異世界と。〜食べた者のスキルを奪うボクが異世界で自由気ままに冒険する!!〜

田所浩一郎
ファンタジー
中学でいじめられていた少年冥矢は女神のミスによりできた空間の歪みに巻き込まれ命を落としてしまう。 謝罪代わりに与えられたスキル、《喰らう者》は食べた存在のスキルを使い更にレベルアップすることのできるチートスキルだった! 異世界に転生させてもらうはずだったがなんと女神様もついてくる事態に!?  地球にはない自然や生き物に魔物。それにまだ見ぬ珍味達。 冥矢は心を踊らせ好奇心を満たす冒険へと出るのだった。これからずっと側に居ることを約束した女神様と共に……

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~

冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。  俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。 そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・ 「俺、死んでるじゃん・・・」 目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。 新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。  元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です  2024年6月中旬に第一巻が発売されます  2024年6月16日出荷、19日販売となります  発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」 中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。 数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。 また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています 戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています そんな世界の田舎で、男の子は産まれました 男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました 男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります 絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて…… この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです 各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

処理中です...