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第七章 ゴレス侯爵領

第百六十八話 開拓開始

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「おお、中々の道具が揃っているな」
「これなら、直ぐに工事ができるぜ」

 前日の会議の後に王都で道路工事に使える道具を買い揃えたので、翌日には直ぐに工事を始められる状態にしておいた。
 というか、ゴレス侯爵は本当に何でも売ってしまったのか、お屋敷の倉庫の中も空っぽだった。
 獣人達には、林業で使う道路と鉱山で使う道路を優先して作業してもらう。
 元々林業や鉱山で働いていた獣人が多いので、道路の使い勝手は自分達が一番分かっているだろう。

「おじちゃん達、頑張ってね!」
「おうよ」

 ミケに見送られて、獣人の土木部隊は現地に向かった。
 暫くは日帰りで作業する予定。
 林業と鉱山の操業再開に合わせて、現地でも作業するという。
 ちなみに、お金は林業と鉱山の元締めに渡してある。
 早期の操業再開を目指して、色々作業するという。
 この領主の基幹産業だから、早く復旧してほしい。

 そしてお屋敷の前では、炊き出しをしつつ文官やメイドに騎士の募集受付。
 受付会場をゴレス侯爵領のお屋敷前に絞ったが、ブラントン領やマルーノ領からも話を聞いた人が集まってきた。
 当然受付の時に残党や犯罪者などは捕まっているのだが、今回その役割を果たしているのがマシュー君達。

「この人悪者!」
「嫌なこと考えてる」
「捕まえて!」

 最初に指摘された者は子どもが何を言っているかと笑っていたが、取り調べると直ぐにワース商会の残党だと分かった。
 その様子を見て慌てて列から途中離脱した者も捕らえられ、捕らえられた者は全て問題があると判明した。
 人手不足でどうなるかと思ったけど、問題なく面接兼一次審査が進んでいった。
 午後から面接の予定だが、現場の人がいたほうが良いとの事で王都の屋敷を接収された際にいた執事やメイドに門兵を再雇用し、面接に参加してもらうことになった。
 勿論アメリア様達も面接に参加する。
 一次審査を通過した人々なので、変な人は混じっていないし、余程の事がない限り皆採用されるだろう。
 
「一次審査は無事に終わりましたね」
「これから来る人もいるので、あと数日は受付するそうです」

 昼食時にアメリア様に聞いてみたけど、思ったより人が集まって嬉しそうだった。
 本当に住民の心が離れてしまったら、こうして応募に訪れる人はいない。そうならなくて、安堵している。
 ちなみに午前中活躍していたマシュー君達は、昼食を食べ終わっていたのでニー達と遊んでいた。
 午後も、お昼寝タイム以外は手伝うと張り切っていた。
 
 俺の午後は、ビアンカ殿下と住人代表と一緒に街の拡張についての視察。
 といっても、今まで開発をしてこなかったから土地はあまり放題。
 街から少し離れた所に畑や果樹園を区画ごとに区切って作る案も出された。
 今は草木に覆われているけど、平坦な土地だから土壌改良さえ行えばいい畑になりそう。

「ビアンカ殿下、ワクワクしていませんか?」
「勿論じゃ。これだけ手つかずの土地が沢山あるのじゃ。やりがいはあろうよ」

 ビアンカ殿下は、手つかずの一帯をみてワクワクしていた。
 これがどのように変貌するか、とても楽しみなのだろう。
 これがゴレス侯爵にとっては、草木ばかりでうんざりする光景なのだろう。
 一緒にきている代表も、開墾の際に是非協力させてくれと言われた。
 俺とビアンカ殿下の話を聞いて、計画の具体性が見えてきたという。

「日当たりの良い、まさに高原ですね」
「土壌も問題ないのう」

 続いてブラントン領に向かったが、ここも高原に言うに相応しいなだらかな丘があった。
 日当たりもよく近くに小さな池もあったので、水源も問題ない。
 街も拡張できるし、開発に支障は全く問題ない。
 
 そして、一番驚いたのがマルーノ領。

「サトー、この街に温泉があったよー」
「温泉? マジで?」
「マジマジ! 地元の人しか使わないんだってー。景色もいいよ」

 リーフからの報告だったが、まさか温泉があるとは。
 行ってみると、確かにこじんまりとしているが盆地を見渡せる眺めの良い温泉があった。
 背後に山があるから、そこから湧き出ているんだ。
 そっか、この辺の土は火山灰が積もったものだから畑作に向いているんだ。
 そして盆地は扇状地の構造でもあるから、水はけもいい。

「ビアンカ殿下、ここ一帯はポテンシャルすごくないですか?」
「妾も同じ事を考えておった。ゴレス侯爵達は目先の利益しか考えていなかったのじゃろう」
「少なくとも普通に暮らすだけなら、全く問題ないですね」

 夕食時に俺とビアンカ殿下が感じだ事を皆に話したら、同じ様な感想が多かった。
 
「私は殆ど屋敷の外に出されなかったので、屋敷の外がこんなにも可能性があると思いませんでした」
「私も、家族から高原は役に立たないと言われていました」
「温泉の存在は知っていましたが、そこまで良い環境だとは知りませんでした。父は風呂と違いはあるかと気にもとめていませんでした」

 特にアメリア様達は領内の状況を遠ざけていたり家族が正しく認識していなかったため、今までの認識が覆されていた。
 何れにせよ、この計画がどのくらい実効性があるか、明日来る王家の御用商人と詰めないと。
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