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第一章 バルガス公爵領

第十話 貴族様とお姫様?

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「御館様は気さくなお方です。サトー殿は言葉使いも丁寧なので全く問題ございません」
「いやあ、言葉使いよりも緊張の方が……」

 ゴブリン退治の件で、馬車の中にいる人が俺に会いたいそうだ。
 隊長さんは問題ないというが、流石に緊張するぞ。
 ゴブリン退治の方が気が楽だ。

「お兄ちゃん、お着替え終わったよ」
「我も洗い終わったぞ」

 と、そこに二回目の洗いタイムが完了したミケとシルがやってきた。
 うん、この後の事も考えると、洗って着替えては正解だったな……

「ミケ、シル。馬車の中の人がゴブリン退治のお礼をしたいんだって。お行儀よく出来るかな?」
「ミケ、大丈夫だよ!」
「主人、我も大丈夫だ」

 ミケもシルも大丈夫だと返事をしたので、頭を撫でてあげた。
 二人ともニコニコして尻尾をブンブンとしている。

「ほほほ、いやあ、こんなに可愛いのにあんなに強いとは。お嬢ちゃんは本当に凄いねえ」
「えへへ、ミケ凄い?」

 あれ?今まで聞いたことのない声が後ろからして、ミケが答えている。
 そーっと振り向くと、そこには綺麗な格好をしたダンディーなナイスミドルが頬笑んでいた。
 ……ああ、もしかしてこの人が御館様?
 汗がダラダラ流れてきた……
 ゆっくり立ち上がり、そしてジャンピング土下座発動。

「ミケが無礼な真似をして申し訳ございません。責任は私めに……」
「「ええ!」」

 周りがびっくりしているが、どう見ても貴族様。
 不敬な事をしたらきっと打首獄門に……
 可愛いミケがそうなったら居た堪れないよ。

「あの……サトー殿。お顔を上げてください」
「ほほほ、何か勘違いされておるが、私らが助けてもらったんだ。こちらこそ頭を下げるべきだ」

 隊長さんとナイスミドルの男性に促されて、挨拶のやり直しです。
 ……恥ずかしい。

「では改めて。私はこの先の街をおさめているバルガス。この度は魔物の襲撃を撃退してくれ、本当にありがとう」
「私はサトーと言います。この子はミケでオオカミがシルです。みなさん無事でよかったですね」
「いやいや、全く危ないところだった。サトー殿は凄腕とお見受けするが、どうしてここに?」
「いえいえ、まだまだです。実は冒険者を目指して街に向かっている所でした」
「おや、そうでしたか。我が街は冒険者ギルドもあり冒険者も多い。とってもピッタリです」
「それはとってもありがたい。ぜひ利用させていただきます。バルカス様はどうして馬車に?」
「実は王都よりとある方をお乗せしている最中で、もうすぐ我が街と言うとこでゴブリンの群れに……」
「それは災難でした。ところで、とある方ですが。それはどの様なお方で……」

 そういえば、ミケとシルの姿が俺の横にいない。
 と思ったら、後ろから……

「お主らは強い上に可愛いのう。毛並みもふわふわじゃ」
「えへへ、お姉ちゃんありがとう!」
「お姉ちゃんとな。妾には弟も妹も居らぬ故、なかなか新鮮であるな」

 後ろからミケと何やら女性の声が聞こえるが、女性の声が高貴な感じが……
 そーっと後ろを振り返ると、高貴な少女がニコニコとミケとシルを撫でていた。
 ミケはその少女をお姉ちゃんと呼んでいた。
 ……もしかして、またやっちゃた?

「ビアンカ王女殿下も、お気になりますかな?」
「うむ、こやつらは他の冒険者とはちと違うようだ。大きな可能性を感じる」
「流石は殿下。私めも可能性を感じております」

 ……王女殿下とな。
 また汗がダラダラ流れてきた。
 ゆっくり王女殿下の方を向いて、再度のジャンピング土下座発動!

「王女殿下、ミケが無礼な真似をして申し訳ございません。責任は私めに……」

 うわあ、ミケが王族に無礼な口調で喋っちゃったよ。
 これはマジで不敬罪で打首獄門に……
 
「良い良い、何も問題はない。其方らは命の恩人じゃ。バルガス卿の言う通り、頭を下げるべきは妾達じゃ」

 バルガス様も王女殿下も良い人で助かった…
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