上 下
776 / 817
第二十八章 エマさんとオリビアさんの結婚

九百二話 炊き出しで起きた事件

しおりを挟む
 二週間ほどは特に問題も起きず、その代わりに四人は集中的に冒険者活動や勉強を受けていた。
 連日ヘロヘロになっていたけど効果は絶大で、今は監視しているという名目で辺境伯様の仕事を手伝って統治とは何かを勉強をする程になった。
 もちろん、毎日の基礎勉強はかかしません。
 なぜか毎回ドラちゃんが巻き込まれていたけど、野良猫と一緒にお昼寝ばっかりだから良いのではという結果だった。
 しかし、遂に事件が起きてしまった。

「はいどーぞ」
「熱いので、気を付けて下さいね」

 それは、いつもたまに行っている王都スラム街での炊き出しでした。
 この日も炊き出しと無料治療をしつつ、周辺の状況を集めていました。
 因みに、王族は全員お勉強になっていて、特にルカちゃんとエドちゃんは相当ショボーンとしていました。
 エレノアも礼儀作法の勉強をする事になり、今日は不参加です。
 といっても他のちびっこ軍団は普通にいるし、ポニさんたちもいます。

「すげー! ドラゴンだ!」
「カッコいい!」
「グルル」

 そして、大興奮の子どもたちに囲まれて得意げなドラちゃんもいます。
 戦力としてはバッチリで、お昼前まではいつも通り不審者を捕まえつつ改善情報や不審な情報を集めていました。
 ところが、ここでとある情報が入りました。

「うーん、複数の不審な情報が集まったわね。近くの建物に怪しい人物が出入りしているらしいわ」
「もしかしたら、捕まえた連中の中にその不審者が含まれているかもしれないわね」

 今日も当然の如く炊き出し班から外れて巡回班に回ったレイナさんとカミラさんの情報に、僕とジンさんは顔を見合わせてしまった。
 取り急ぎ捕まえた者の尋問を急いでもらうことにして、ポッキーを呼び寄せてマジカルラット部隊に周辺の捜索をお願いした。
 閣僚にも通信用魔導具で情報を送信したら、軍を派遣して貰える事になった。
 こうして、万が一に備えて準備をしつつ、無事に炊き出しは終わりました。

「「「じゃーねー」」」
「グルル!」

 ミカエルを始めとするちびっこ軍団とドラちゃんを屋敷に送り、早速打ち合わせを行うことになりました。
 というのも、あまり良くない結果が判明したからです。

「捕まえた奴の聴取結果から、この近くに犯罪組織のアジトがあるのは間違いない」
「ポッキーの調査でも、ある二階建ての建物の中に犯罪者の溜まり場があったのを見つけました」
「キュッ」

 ジンさんと僕の調査報告を聞いて、全員が頷きました。
 既に軍が建物の監視をしていて、いつでも突入できるようにスタンバイしています。
 しかもポッキーが現場に一回行っているので、転移魔法を使って奇襲も仕掛けられます。
 護送、周囲の警戒、住民への警備も終えたので、一気に奇襲を仕掛けることになりました。

「じゃあ、ポッキー頼んだぞ」
「キュッ!」

 ジンさんの命令に、ポッキーが敬礼ポーズをします。
 先発隊として、マジカルラット部隊とスラちゃんとプリンが向かいます。
 不審者が百人いても、余裕で対応できますね。
 ところが、ここで予想外の事になりました。

 シュッ。

「あー! ブッチーも行っちゃったよ」

 何と、周囲の警戒のために残っていたポニさんたちもポッキーに近づいて転移魔法で現場に行ってしまいました。
 うーん、先発隊が完全に過剰戦力となっていまった。
 思わぬ事態に、僕とジンさんは顔を見合わせて苦笑するしかありません。

「な、なんだコイツら?」
「急に現れたぞ?」

 ドタバタ、ドカンドカン、バリバリバリ。

「「「ギャー!」」」

 近くの建物から不審者の叫び声が聞こえて来たけど、きっと先発隊は大暴れしているんだろうな。
 そして、ドタバタが静まり返って少ししたら、僕たちの前にポッキーが現れました。

 シュッ。

「キュッ!」
「うん、僕にも分かります。制圧完了ですね」
「じゃあ、護送を始めよう」

 ジンさんは、思わず苦笑しながら兵に指示を出しました。
 そして、建物の中から次々と先発隊に倒された不審者が運び出されました。
 うん、全員歩くことすらできないほどにボコボコにされていますね。

「じゃあ、ここからはお宝探しだね!」

 そして、現場検証を兼ねながらリズたちは張り切って不審なものを探し始めました。
 僕とジンさんも建物の中に入るけど、中を見てびっくり仰天です。

「ジンさん、すごい武器の数ですよ」
「どう考えても普通じゃないな。何に使おうとしたんだ?」

 建物の一室には、木箱に入った大量の武器が見つかりました。
 統一されたものではなくて中古品を集めたのだと思うけど、それでも凄い数です。
 これはちょっと異常事態だと思い、再び閣僚に連絡をしました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

モブだった私、今日からヒロインです!

まぁ
恋愛
かもなく不可もない人生を歩んで二十八年。周りが次々と結婚していく中、彼氏いない歴が長い陽菜は焦って……はいなかった。 このまま人生静かに流れるならそれでもいいかな。 そう思っていた時、突然目の前に金髪碧眼のイケメン外国人アレンが…… アレンは陽菜を気に入り迫る。 だがイケメンなだけのアレンには金持ち、有名会社CEOなど、とんでもないセレブ様。まるで少女漫画のような付属品がいっぱいのアレン…… モブ人生街道まっしぐらな自分がどうして? ※モブ止まりの私がヒロインになる?の完全R指定付きの姉妹ものですが、単品で全然お召し上がりになれます。 ※印はR部分になります。

俺の異世界先は激重魔導騎士の懐の中

油淋丼
BL
少女漫画のような人生を送っていたクラスメイトがある日突然命を落とした。 背景の一部のようなモブは、卒業式の前日に事故に遭った。 魔王候補の一人として無能力のまま召喚され、魔物達に混じりこっそりと元の世界に戻る方法を探す。 魔物の脅威である魔導騎士は、不思議と初対面のようには感じなかった。 少女漫画のようなヒーローが本当に好きだったのは、モブ君だった。 異世界に転生したヒーローは、前世も含めて長年片思いをして愛が激重に変化した。 今度こそ必ず捕らえて囲って愛す事を誓います。 激重愛魔導最強転生騎士×魔王候補無能力転移モブ

よくある婚約破棄なので

おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。 その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。 言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。 「よくある婚約破棄なので」 ・すれ違う二人をめぐる短い話 ・前編は各自の証言になります ・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド ・全25話完結

婚約者に冤罪をかけられ島流しされたのでスローライフを楽しみます!

ユウ
恋愛
侯爵令嬢であるアーデルハイドは妹を苛めた罪により婚約者に捨てられ流罪にされた。 全ては仕組まれたことだったが、幼少期からお姫様のように愛された妹のことしか耳を貸さない母に、母に言いなりだった父に弁解することもなかった。 言われるがまま島流しの刑を受けるも、その先は隣国の南の島だった。 食料が豊作で誰の目を気にすることなく自由に過ごせる島はまさにパラダイス。 アーデルハイドは家族の事も国も忘れて悠々自適な生活を送る中、一人の少年に出会う。 その一方でアーデルハイドを追い出し本当のお姫様になったつもりでいたアイシャは、真面な淑女教育を受けてこなかったので、社交界で四面楚歌になってしまう。 幸せのはずが不幸のドン底に落ちたアイシャは姉の不幸を願いながら南国に向かうが…

【R18】お嫁さんスライム娘が、ショタお婿さんといちゃらぶ子作りする話

みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。 前話 【R18】通りかかったショタ冒険者に襲い掛かったスライム娘が、敗北して繁殖させられる話 https://www.alphapolis.co.jp/novel/902071521/384412801 ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで

【R18】翡翠の鎖

環名
ファンタジー
ここは異階。六皇家の一角――翠一族、その本流であるウィリデコルヌ家のリーファは、【翠の疫病神】という異名を持つようになった。嫁した相手が不幸に見舞われ続け、ついには命を落としたからだ。だが、その葬儀の夜、喧嘩別れしたと思っていた翠一族当主・ヴェルドライトがリーファを迎えに来た。「貴女は【幸運の運び手】だよ」と言って――…。 ※R18描写あり→*

【R18】らぶえっち短編集

おうぎまちこ(あきたこまち)
恋愛
調べたら残り2作品ありました、本日投稿しますので、お待ちくださいませ(3/31)  R18執筆1年目の時に書いた短編完結作品23本のうち商業作品をのぞく約20作品を短編集としてまとめることにしました。 ※R18に※ ※毎日投稿21時~24時頃、1作品ずつ。 ※R18短編3作品目「追放されし奴隷の聖女は、王位簒奪者に溺愛される」からの投稿になります。 ※処女作「清廉なる巫女は、竜の欲望の贄となる」2作品目「堕ちていく竜の聖女は、年下皇太子に奪われる」は商業化したため、読みたい場合はムーンライトノベルズにどうぞよろしくお願いいたします。 ※これまでに投稿してきた短編は非公開になりますので、どうぞご了承くださいませ。

拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな
恋愛
 子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。 公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。  クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。  クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。 「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」 「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」 「ファンティーヌが」 「ファンティーヌが」  だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。 「私のことはお気になさらず」

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。