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第十九章 懐古派の砦編

四百九話 ブレイクランドの街の様子

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 街の防壁にある検問のチェックをパスした僕達は、馬車に揺られながらブレイクランドの教会を目指します。

「街の雰囲気は特に異常ねーな」
「そうね、今の所は普通の街って感じね」

 ジンさんとティナおばあさまが周囲を警戒しているけど、確かにブレイクランドも普通の街って感じだ。
 何よりスラちゃんとプリンが警戒モードになっていないので、少なくとも僕達の周囲に危険はなさそうだ。
 街を行き交う人も普通で、市場などもとても賑わっていた。
 若干街を巡回する聖騎士が多いかなって思う位だ。

「皆さん、教会の施設に着きました」
「じゃあ、街の状況を良く知っている人から話を聞きましょう」

 街に入ってから二十分、御者をしているジェリルさんから教会に着いたと言われたので、ティナおばあさまが先陣を切って馬車から降りていった。
 確かに、今の状況を良く知っている人から話を聞くのが良いよね。
 僕達は教会の側にある施設に入っていきます。

「あら、随分と早く着きましたわね」
「あれ? レリーフ枢機卿? 何でここにいるんですか?」
「その辺も併せて説明するわ。先ずは応接室に案内します」

 教会の隣にある施設で僕達を待っていたのは、てっきり皇都にいると思っていたレリーフ枢機卿だった。
 そういえば、皇都から出発の時もヤークス教皇以外は見送りに来なかったっけ。
 僕達は応接室に案内されて、レリーフ枢機卿から話を聞く事になった。
 シスターが出したお茶を一口つけた所で、レリーフ枢機卿が話をしてくれた。

「先ずは、私がブレイクランドにいる理由ね。これは単純な理由で、私の管轄があのアホスタイル枢機卿の管轄する所の隣だったからなのよ。戦況が落ち着いて次の枢機卿が赴任するまでは、私がここをみる事になったのよ」
「お隣は選べないというけれど、本当に迷惑なお隣でしたね」
「ええ、本当に迷惑でしたわ」

 レリーフ枢機卿は少し苦笑しながら、なぜブレイクランドにいるかを教えてくれた。
 レリーフ枢機卿も、本当に迷惑な人が隣にいたんだな。
 ティナおばあさまも、思わずレリーフ枢機卿に同情しているよ。

「次に街の状況ですね。実は、街の人はそこまでアホスタイル枢機卿の影響を受けていませんでした。アホスタイル枢機卿は懐古派の砦にいる事が多かった様で、配下の司祭が教会の運営をしていました」
「でも、なぜ街の人はアホスタイル枢機卿の影響を受けていなかったのですか?」
「それは、配下の司祭も含めて聖職者にあるまじきかなり豪華な暮らしをしていた様です。その為に、スポンサーである裕福な商会以外はアホスタイル枢機卿達を毛嫌いしていた様ですわ」
「自分の欲望だけを突きつめていたので、結果的には同じ欲望を味わった人しかついてこなかったんですね」

 確か皇都で捕まえたアホスタイル枢機卿に繋がっている司祭達も、資金集めをしていたよなあ。
 しかし、自らの行動が原因で街の人の心が離れていたとは。
 やはり、アホスタイル枢機卿はバカだったんだ。

「最後に懐古派がいる砦についてですが、実は今年に入ってから急激に懐古派の抵抗が少なくなりました。特にここ数日は衰退が激しく、もう少しで砦を陥落させる事ができそうです」
「やはり、この前のバイザー子爵領で捕縛した奴らの証言通りだな。闇ギルドは、懐古派を見捨てたんだ」

 懐古派からの資金供給が絶たれたから、ジンさんの言う通り闇ギルドは別のスポンサーを探し始めたんだ。
 となると、懐古派の砦が落ちるのも時間の問題だろう。
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