上 下
277 / 869
第十九章 懐古派の砦編

四百三話 アレクサさんも一緒にお鍋タイム

しおりを挟む
 道中はトラブルもなく、順調に今日のポイントまで到着しました。
 この後は安全の為に、僕達の屋敷に戻る事になっています。

「アレクサさんは宿とかはどうするつもりでいましたか?」
「えっと、宿を取るつもりでおりました」
「なら、今日は僕の屋敷に招待しますね」
「えっ?」

 アレクサさんは街に泊まるつもりだけど、安全の為に僕の屋敷にご招待します。
 という事で、ひと目につかない所に移動して、僕の屋敷の庭にゲートを繫ぎます。

「信じられません。これが伝説といわれる移動魔法ですか」

 アレクサさんはゲートを初めてみたので、突然別の所に移動してびっくりしていた。
 教皇国から王国にあっという間に移動したから、気持ちはわかるなあ。

「あら、皆帰ってきたのね」
「ただいまー!」

 丁度いいタイミングで、お隣の辺境伯様の屋敷からイザベラ様が顔を見せた。
 リズが挨拶をするけど、どうやらミカエル達は辺境伯様の屋敷の中にいるようだ。

「あら、初めての人もいるわね」
「あ、はい。私は教皇国のシスターをしております、アレクサと申します」
「ご丁寧にどうもありがとうね。私はイザベラ、辺境伯家の夫人ですわ」
「えっ?」

 あ、今度はイザベラ様の返答を聞いて、アレクサさんが固まってしまった。
 そういえば、僕の両隣の屋敷の事を話してなかった。

「アレクサさん。僕の屋敷のお隣が、この地を治める辺境伯様の屋敷で、反対がジンさんの屋敷です」
「そ、そうだったんですね。びっくりしました」
「いえいえ、僕も説明不足でした」

 アレクサさんは、僕の説明を聞いて落ち着きを取り戻した。
 その間に、馬車は辺境伯家の馬丁がやってきて馬も含めて辺境伯家の馬房に連れて行ってくれました。
 今の所、馬も馬車も特に問題ないそうです。
 
「陛下には特に問題ないって連絡したから、王城には向かわなくて良いわ」
「ティナおばあさま、ありがとうございます」

 ティナおばあさまの言う通り、確かに今日は少々オオカミとかが現れた程度で本当に何もなかったもんな。
 僕達は、そのまま辺境伯様の屋敷に入ります。
 
「「おかーり!」」
「ただいま!」

 辺境伯様の屋敷に入ると、直ぐにミカエルとブリッドが駆けつけてきました。
 そのままリズが、ミカエルとブリッドを抱きしめます。
 すると、ブリッドがアレクサさんに気がついた様です。

「あ、アレちゃ!」
「ミカもあった!」
「覚えてくれて嬉しいですわ」

 どうもブリッドとアレクサさんは顔見知りの様で、ミカエルも新教皇の戴冠式で顔を合わせている。
 というか、ミカエルもよく覚えていたなあ。

「にーに、ごはん!」
「おなべ!」
「皆でお鍋なんだね」
「「あい!」」

 そして、ミカエルとブリッドは僕の手を繫いて食堂に案内し始めた。
 皆でワイワイと食べるお鍋は、ミカエル達に限らず皆大好きだよね。

「おお、丁度いいタイミングだな。皆、席に着くがいい」

 食堂に入ると、辺境伯様も孫であるステラちゃんとオリバーちゃんを膝に乗せて挨拶をしてくれた。
 
「へ、辺境伯様、初めまして。教皇国でシスターをしているアレクサと申します」
「おお、ご丁寧にどうも。私はホーエンハイム辺境伯のヘンリーだ。ここは公式の場ではない。気楽にしてくれ」
「は、はい」

 アレクサさんは緊張しながら辺境伯様に挨拶をしていたけど、今の辺境伯様は孫を抱っこしてデレデレになっている。
 そして、ジェイド様とソフィアさんが他の赤ちゃん達を連れていた。
 侍従のお姉さんもいて、お姉さん達の子どもであるメイちゃんとリラちゃんも一緒です。

「父がステラとオリバーを離さないのでな。代わりに私がグランドとガリバーを、ソフィアがレイカとガイルの面倒を見ていたのだよ」
「流石は侍従の子どもなのか、メイちゃんとリラちゃんもお母さんの真似をして赤ちゃんの面倒を見ようとしていたわ」

 まあ、メイちゃんとリラちゃんもまだ二歳になっていないし、お手伝いといいつつおままごとの延長線上だろうね。
 そして、沢山の赤ちゃんや子どもを見て、アレクサさんは目を輝かせます。

「わあ、とっても可愛いですね」
「レイナさんとカミラさんとルリアンさんとナンシーさんの赤ちゃんです。ソフィアさんの赤ちゃんや侍従のお姉さんの子どももいるので、僕達が教皇国に行っている間は纏めて面倒を見てもらっています」
「そうなんですね」

 アレクサさんは赤ちゃんが好きなのか、ステラちゃんを抱いてとても上機嫌だ。
 ステラちゃんも、嫌がらずにアレクサさんに抱っこされています。

「それじゃ、食事としますか」
「「「「あい!」」」」

 辺境伯様の合図に、ミカエルとブリッドとメイちゃんとリラちゃんが元気よく答えます。
 お鍋の時は、皆でワイワイと食べるのが基本です。
 アレクサさんも、子ども達を食べさせる名目で一緒に食べます。

「とても感じの良い人ですね」
「そうですわね。それに頑張り屋さんなんですよ」
「あらあら、それはそれは素晴らしいですわ」

 イザベラ様とティナおばあさまが、アレクサさんに聞こえない音量で何か話をしています。
 二人ともニヤニヤとしているのが気にかかりますが、僕は怖くて聞くことができません。
 
「お兄ちゃん、お鍋美味しいね」
「アレク様、こっちも美味しいですよ」

 現実にはリズとサンディの相手をしているので、それどころではありません。
 まあ悪い事ではなさそうなので、ここはスルーしておきます。
 こうして、皆で楽しく夕食を食べました。
 明日はどんな旅になるのか、とても楽しみです。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。

放置された公爵令嬢が幸せになるまで

こうじ
ファンタジー
アイネス・カンラダは物心ついた時から家族に放置されていた。両親の顔も知らないし兄や妹がいる事は知っているが顔も話した事もない。ずっと離れで暮らし自分の事は自分でやっている。そんな日々を過ごしていた彼女が幸せになる話。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

公爵令嬢はアホ係から卒業する

依智川ゆかり
ファンタジー
『エルメリア・バーンフラウト! お前との婚約を破棄すると、ここに宣言する!!」  婚約相手だったアルフォード王子からそんな宣言を受けたエルメリア。  そんな王子は、数日後バーンフラウト家にて、土下座を披露する事になる。   いや、婚約破棄自体はむしろ願ったり叶ったりだったんですが、あなた本当に分かってます?  何故、私があなたと婚約する事になったのか。そして、何故公爵令嬢である私が『アホ係』と呼ばれるようになったのか。  エルメリアはアルフォード王子……いや、アホ王子に話し始めた。  彼女が『アホ係』となった経緯を、嘘偽りなく。    *『小説家になろう』でも公開しています。

【完結】婚約破棄されて修道院へ送られたので、今後は自分のために頑張ります!

猫石
ファンタジー
「ミズリーシャ・ザナスリー。 公爵の家門を盾に他者を蹂躙し、悪逆非道を尽くしたお前の所業! 決して許してはおけない! よって我がの名の元にお前にはここで婚約破棄を言い渡す! 今後は修道女としてその身を神を捧げ、生涯後悔しながら生きていくがいい!」 無実の罪を着せられた私は、その瞬間に前世の記憶を取り戻した。 色々と足りない王太子殿下と婚約破棄でき、その後の自由も確約されると踏んだ私は、意気揚々と王都のはずれにある小さな修道院へ向かったのだった。 注意⚠️このお話には、妊娠出産、新生児育児のお話がバリバリ出てきます。(訳ありもあります)お嫌いな方は自衛をお願いします! 2023/10/12 作者の気持ち的に、断罪部分を最後の番外にしました。 2023/10/31第16回ファンタジー小説大賞奨励賞頂きました。応援・投票ありがとうございました! ☆このお話は完全フィクションです、創作です、妄想の作り話です。現実世界と混同せず、あぁ、ファンタジーだもんな、と、念頭に置いてお読みください。 ☆作者の趣味嗜好作品です。イラッとしたり、ムカッとしたりした時には、そっと別の素敵な作家さんの作品を検索してお読みください。(自己防衛大事!) ☆誤字脱字、誤変換が多いのは、作者のせいです。頑張って音読してチェックして!頑張ってますが、ごめんなさい、許してください。 ★小説家になろう様でも公開しています。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。