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第十六章 聖女様出迎え編

三百三十一話 護衛の勉強

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 教皇国に行くにあたって、カレン様の護身術の勉強も進めています。
 実は教皇国からカレン様の護衛を兼ねて聖騎士がきているので、カレン様は聖騎士からも色々と教えてもらっています。
 勿論、その聖騎士も何も問題のない人です。 
 今日は辺境伯領の郊外に集まって、格闘と魔法の訓練です。
 ジンさんは、レイナさんとカミラさんの育児訓練に付き合うのでお休みです。
 ルーカスお兄様達もティナおばあさまもきているのですが、何故か冒険者も沢山集まっています。

「華の騎士様の指導が受けられるとあれば、辺境伯領にいる冒険者は集まるぞ」

 との事です。
 まあ、辺境伯領の冒険者は良い人だし、新人冒険者も多いからちょうど良い機会だろう。

「ヒカリちゃん、頑張って!」

 カレン様の従魔であるヒカリは、スラちゃんとプリンとアマリリスに加えて、何故か僕達と一緒についてきたポニさん達と共に訓練しています。
 ヒカリは、スラちゃんが作ったマッスルポーズをしているジンさんの像を目掛けて魔法を放っています。
 スラちゃんがかなりの硬さで土像を作ったのでヒカリの魔法では傷一つついていませんが、ヒカリは複数の魔法が使える様になった様です。

「では聖女様、我々も始めましょう」
「はい、お願いします」

 カレン様も、聖騎士と訓練を開始しています。
 これから行うのは魔法障壁の訓練と受け身の訓練で、元々の才能もあってか、カレン様の動きは中々良い。
 
 僕も、カミラさんから出されている魔法訓練を行います。

「はあはあ、少し休憩します」
「お疲れ様です」
「中々の動きでしたわ」

 カレン様が一息ついた所で、ルーカスお兄様とアイビー様が声をかけていた。
 三人とも歳が近いから仲良くなったよね。
 今日は王城から侍従もついてきているので、タオルや飲み物を出してもらっています。
 そんなカレン様が、とある方を向いています。

「私もいつかはあんな風になれるのでしょうか?」
「あれはかなり特殊なので、真似するのは無理ですよ」
「どんどん強くなっていきますわね」

 三人は二箇所に目を向けていた。
 一箇所目はリズとスラちゃんの所で、二人とも身体強化をして訓練用の木剣で打ち合っています。

「とりゃー!」

 掛け声は気が抜けそうな感じだけど、動きは高速で剣技も中々のもの。
 二人が後衛陣だったのは、もう遠い昔の事になってしまったな。
 もう一方は、沢山の冒険者を相手に指導しているティナおばあさま。

「その調子よ、どんどんと打ち込んできなさい」
「「「はい!」」」

 憧れの華の騎士様に指導を受けられるとあって、冒険者の気合も十分。
 ティナおばあさまも複数を相手にしながら、的確な指摘をしていきます。
 うーん、流石はティナおばあさまって感じだ。

「でも、アレク君の強さにも興味があります」
「アレクの魔法が凄いのは分かっているが、剣技の方はどうだろうか?」
「私もアレク君の剣技に興味ありますわ」

 あ、何故か矛先が僕の方に向いてしまった。
 周りの人達も興味津々で僕の事を見ていた。
 これは辞退するとは言えない雰囲気だぞ。

「よ、よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」

 という事で、僕は聖騎士と剣技の模擬試合をする事になった。
 僕は木剣のダガーを両手に持ちます。
 身体強化はありだけど、他の魔法は無しのルールです。

「では、試合始め!」

 ルーカスお兄様の声で、模擬試合が始まります。
 聖騎士は取り回しの良いショートソードの木剣で、木の盾も装備しています。
 先ずはステップを踏みながら、聖騎士の死角から切り込んでみます。

「はっ!」
「ふん」

 ガキン、ブォン。

 おお、流石は聖騎士です。
 難なく盾で僕の斬撃を防いで、反撃の一撃を繰り出してきます。
 僕は反対の木剣で受けつつ、一旦距離を取ります。
 
「次はこちらからです」
「おっと」

 今度は聖騎士が盾を僕の方にぶつけてきます。
 剣で盾を受け止めた所に、聖騎士が斬り込んできます。
 シールドバッシュを使うのか、聖騎士はかなり実践的だな。
 その後も打ち合っているけど、どうも聖騎士は身体強化の限界にきている様だ。
 なので、ここで終わらせます。

「せい!」
「なっ!」

 僕は身体強化の強度を上げて聖騎士に一気に近づいて聖騎士の持っている木剣を跳ね上げ、そのまま背中にまわって木剣を軽く当てます。

「参りました、アレク殿下はお強いですね」
「まあ、毎日あれの相手をしていますから」
「となると、私は手加減されていたのですね。はは、まだまだ精進が足りませんな」

 僕と聖騎士が見つめる先は、高速で打ち合うリズとスラちゃんです。
 流石に周りに気をつけている様だけど、相当なスピードです。
 僕の相手がリズとスラちゃんだと分かった聖騎士は、もうお手上げといった表情だった。

「アレク君、凄かったよ!」
「カッコよかったよ」
「アレクお兄ちゃん、流石だね」
「アレク様、凄いです」

 カレン様だけでなく、ルーシーお姉様とエレノアとサンディもこっちにやってきて僕の事を褒めてくれた。
 なんだかこそばゆいなぁ。

「でも、リズとスラちゃんはともかくとして、ティナおばあさまとジンさんには全く勝てる気がしないんだよね」
「仕方ないよ、あの二人は達人クラスだから」

 汗を拭きながらルーカスお兄様と話をするけど、剣技では何をしてもティナおばあさまとジンさんに歯が立たないんだよね。
 ティナおばあさまは華の騎士と言われるだけあるし、ジンさんもAランク冒険者なだけある。
 僕も頑張って訓練するけど、訓練すればするだけあの二人が化け物の様に感じるんだよね。

「私も何か得意技があれば良いのですが」
「それなら、合体魔法はどうですか? 攻撃だけではなく、回復魔法にも使えますよ」
「合体魔法?」

 はてなな感じのカレン様に、合体魔法を見せる事にした。
 カレン様とヒカリは相性が良さそうな気がするから、練習すれば合体魔法が使えそうな気がするんだよね。

「リズのホーリーアローでも、スラちゃんが作ったマッスルなジンさんは壊せないんだ」

 先ずは試しにという事で、リズがヒカリの訓練用にスラちゃんが作ったマッスルなジンさんに魔法をぶつけます。
 ついでに他の冒険者も一斉にマッスルジンさんに魔法を放ちますが、スラちゃんが相当硬く作ったのかマッスルなジンさんは魔法を受けても余裕で立っています。

「でも、合体魔法で魔力を合わせると、マッスルなジンさんも倒せるんだよ」

 僕とリズが魔力を溜めて合体魔法で一気に魔力を放つと、マッスルなジンさんは跡形もなく吹き飛んだ。

「凄い、これが合体魔法」
「相性が良いと、二倍三倍になるんだよ。きっとカレンお姉ちゃんとヒカリちゃんなら、合体魔法を使えるよ」
「そうだね、やってみないとわからないよね。ヒカリ、頑張ろうね」

 カレン様とヒカリは、お互いに頑張ろうと意気込みを見せていた。
 上手く使いこなせれば、カレン様の秘密兵器になるかもしれないな。
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