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第十六章 聖女様出迎え編

二百八十七話 教皇選挙の行方

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「懐古派は儂らも対応に苦労しておってのう、頭を悩ませておるのじゃ」
「幸いにして奴らの王国内での影響力は低いが、教皇国内ではじわりじわりと影響範囲を広げておる」

 今日は王城内で、王都の司教様とたまたま王都にきていた辺境伯領の司祭様と話し合いをする事になった。
 僕とルーカスお兄様と外務卿とティナおばあさまが、司教様と司祭様との話し合いに参加します。
 司教様と司祭様は懐古派の事でだいぶ頭を悩ませているらしく、額に皺を寄せて難しい顔をしていた。
 
「やはり、次期教皇選挙がある事が大きいですか?」
「殿下の言う通りじゃ。懐古派は教皇選挙での不満を集めている。昔に戻ろうと、声高らかに言っておるぞ」
「とは言え、急に今まで積み上げてきた仕組みを変える事はできぬ。ならばと、懐古派は全てを壊すつもりでいる」

 全てを壊すなんて、かなり言動が過激だな。
 しかも教皇国内でも一定の支持層がいるのが、とても厄介だよね。

「話を進めましょうか。王城での聖女様歓迎の式典には司教様と司祭様にも参加して頂きまして、王都での炊き出しにも同行を希望しております」
「喜んで参加いたします。我々も心待ちにして準備を進めて行きます」
「またもや双翼の天子様のご活躍が見られるのですな。とても楽しみじゃ」

 取り急ぎの話としてはこれで終わり、話は夏前に行われる教皇国での選挙についてと変わっていった。

「現在の所、三つの大きな勢力が次期教皇の座を巡って争っています。それぞれの活動場所を取って、院内派、聖騎士派、文教派と言われております。院内派は教皇国内では主に内政を担当する派閥で、聖騎士派はその名の通り聖騎士を取りまとめる派閥。文教派は経典などを管理する派閥です」
「選挙権を持っている人数の関係もあり、三つの派閥の力は拮抗しております。今回の選挙では激戦が予想されており、既に選挙活動も活発化しております」
 
 うーん、既に激しい選挙戦か。
 まだ投票まで半年近くあるのに、これは教皇国内は大変だな。

「三つの派閥は有効な手がなく、主義主張が似ています。その為に、余計混乱に拍車をかけています」
「懐古派は、その混乱に乗じているのです」
「うーん、中々面倒くさい事になっていますね」
「なので、我々としても王国からアレク様が教皇国へいかれる事に期待しています」
「アレク様なら、きっと良い方向に導いてくれると。私は思っております」
「え?」

 いやいや、ニコニコとしながら何言っているのですか。このおじいちゃん達は。
 
「そうね。何か外的要因が加わると、あっという間に状況は変わる可能性はありますわね」
「まして、アレク君は教皇国にも響き渡っている二つ名の持ち主。投票権はないが影響力は大きそうだな」
「ティナおばあさまに外務卿まで、何を言っているんですか」
「私も新たに国が誕生する瞬間を見てみたいものだ」
「ルーカスお兄様まで」
「「ははは」」

 もう、話が滅茶苦茶になったのでとりあえず今日の話し合いは終了。
 会議室を出て、ルーカスお兄様とティナおばあさまと共にルカちゃんとエドちゃんの所に向かった。
 会議で疲れたら、赤ちゃんに触れあって癒されたいなあ。
 そんな思惑は、赤ちゃんのいる部屋の扉を開けた瞬間に打ち消されてしまった。

「「おぎゃー!」」
「ちょうど良い所にきたわ。悪いけど、二人をあやしていて」
「この人が、またやらかしたのよ」
「ふーん、それなら私もお説教しようかしら」
「「あはは……」」

 床に正座をして反省ポーズの陛下を置いといて、王妃様とアリア様が僕とルーカスお兄様に赤ちゃんとあやす様に言ってきた。
 うん、下手に色々聞くのはやめておこう。
 ティナおばあさまも説教に加わったのを見て、僕とルーカスお兄様は赤ちゃんをお世話している侍従と共にぐずっているルカちゃんとエドちゃんを抱っこして部屋をでた。

「あれ? お兄ちゃん、何でルカちゃんを廊下で抱っこしているの?」
「陛下がまたやっちゃったんだよ……」
「陛下って、あっ」
「あなたはどうして扉のノックもできないんですか!」
「ひいい……」
「「「ああ……」」」

 勉強が終わって赤ちゃんを見に来たリズ達が不思議そうに僕とルーカスお兄様の事を見ていたけど、部屋から聞こえてくる喧騒を聞いた瞬間全員無言で部屋の前を後にして食堂に向かったのだった。
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