上 下
152 / 866
第十六章 聖女様出迎え編

二百七十七話 サーゲロイド辺境伯との会談

しおりを挟む
 屋敷の前に到着すると、執事が既に待っていた。
 どこの屋敷でも、執事はビシってしているよね。

「皆様、お待ちしておりました。応接室へご案内いたします」
「はーい」

 馬車から降りてきた僕達を屋敷内へ案内してくれるけど、当たり前のようにリズとリズに抱かれているスラちゃんが元気よく手をあげて真っ先についていく。
 屋敷の中には、立派な角の生えた鹿とかの剥製が飾ってある。
 領地内で取れたんだろうね。

「鹿さんだ。大きいね」
「そうだね。お肉いっぱい取れそうだね」

 うーん、リズとサンディにとっては鹿はお肉でしかないからなあ。
 鹿の剥製を見て、嬉々としているぞ。
 小さな子どもが見たら、普通は怖がりそうだけど。

「では、こちらでお待ちください。直ぐに当主様がお見えになります」
「はーい」

 くるみとかが入ったクッキーを食べながら、当主様が来るのを待つ事に。
 何だか、出された紅茶も高級品の様だぞ。

「この紅茶、とても美味しいですね」
「サーゲロイド辺境伯は、茶葉の産地でもあるからな」
「山の斜面を利用して、茶畑が広がっているのだよ」
「へえ、そうなんですね」

 前世で習った紅茶の産地もインドとかの山の斜面を利用していた気がするぞ。

「流石は殿下ですね。我が領の紅茶の美味しさに気がつくとは」

 すると、部屋の中にニコニコとした老人が入ってきた。
 白髪頭で同じく白髪の髭が生えているけど、この人がサーゲロイド辺境伯の様だ。
 僕達は席を立って挨拶を交わす。

「サーゲロイド辺境伯様、アレクサンダーと申します。どうぞ、アレクとお呼び下さい」
「エリザベスです。リズって呼んでください。あと、スラちゃんとプリンちゃんです」
「ロンカーク伯爵家のサンディと申します。どうぞ宜しくお願いします」
「おほほ、これはこれは元気なお子さんだ。サーゲロイド辺境を預かっておる。軍務卿、外務卿、この国の未来は明るいのう」
「少し元気すぎる所がありますがな」
「いつも小さな嵐の様ですよ」
「はは、子どもは元気が一番じゃ」

 サーゲロイド辺境伯は、とっても明るいお爺ちゃんって感じだ。
 リズもサンディも直ぐにニコニコとしているから、悪い人ではなさそうだ。
 
「我が領地は山がちで平野が少ないので、古来より山地を利用した産業を起こしてきたのだよ」
「確かに、これだけの人口を支えるとなるとうまく土地を利用しないといけませんね」
「そういう事だ。茶葉は名産品の一つになるまで、産業として成長できたがな」

 僕が茶葉を褒めたから、サーゲロイド辺境伯の機嫌がとっても良い。
 自分の領地を褒められたら、そりゃ嬉しいよね。

「先に話を済ませておこう。我が辺境伯領に聖女様をお迎えする事は、この上ない名誉じゃ」
「だからこそ、しっかりと準備をしないとなりません」
「国もできる限りの支援を行います。聖女様が安心して過ごせる様にしましょう」

 という事で、サーゲロイド辺境伯と僕と軍務卿と外務卿で話を進めています。
 リズとサンディは、スラちゃんとプリンと共にお菓子に夢中です。

「教皇国側の辺境担当とは話がついているが、我々も教皇国に行って聖女様を出迎える事になっている」
「その後辺境の街から領都に飛んで歓迎式典、一泊してから王城に向かう手筈だ」
「教皇国側の辺境担当は教皇国で起きている勢力争いには中立の立場をとっているし、出迎えにあたって軍も整えてくれている」
「となると、辺境に着くまで何もなければ大丈夫ですね」

 ポイントを押さえれば警備は容易いけど、問題は聖女様達がそこまでに無事に辿り着けるかどうかだ。
 聖女様側の警備がしっかりとしている事を願いたい。

「領都での式典には、ルーカスお兄様とアイビー様に僕とリズとサンディが参加でよろしいですか?」
「ええ。サンディさんも貴族の当主なので問題ありません。是非とも宜しくお願いします」
「式典には私達も参加するし、メインはルーカス殿下だ」
「アレク君達はそこまで気を張る必要はないよ」

 国賓級を招くから、ルーカスお兄様がメインだよね。
 アイビー様も付き添いとして大変そうだなあ。

「お兄ちゃん、クッキー美味しいよ!」
「果物も美味しいです」
「良かったね……」

 僕達の話を聞きつつお菓子を食べているリズ達の顔はにんまりとしていた。
 まあ、リズ達はとりあえずニコニコしていれば問題ないし、大丈夫だと思いたい。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)

音爽(ネソウ)
ファンタジー
記憶持ち転生者は元定食屋の息子。 魔法ありファンタジー異世界に転生した。彼は将軍を父に持つエリートの公爵家の嫡男に生まれかわる。 だが授かった職業スキルが「パンツもぐもぐ」という謎ゴミスキルだった。そんな彼に聖騎士の弟以外家族は冷たい。 見習い騎士にさえなれそうもない長男レオニードは廃嫡後は冒険者として生き抜く決意をする。 「ゴミスキルでも美味しい物を狩れれば満足だ」そんな彼は前世の料理で敵味方の胃袋を掴んで魅了しまくるグルメギャグ。

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

工芸職人《クラフトマン》はセカンドライフを謳歌する

鈴木竜一
ファンタジー
旧題:工芸職人《クラフトマン》はセカンドライフを謳歌する~ブラック商会をクビになったので独立したら、なぜか超一流の常連さんたちが集まってきました~ 【お知らせ】 このたび、本作の書籍化が正式に決定いたしました。 発売は今月(6月)下旬! 詳細は近況ボードにて!  超絶ブラックな労働環境のバーネット商会に所属する工芸職人《クラフトマン》のウィルムは、過労死寸前のところで日本の社畜リーマンだった前世の記憶がよみがえる。その直後、ウィルムは商会の代表からクビを宣告され、石や木片という簡単な素材から付与効果付きの武器やアイテムを生みだせる彼のクラフトスキルを頼りにしてくれる常連の顧客(各分野における超一流たち)のすべてをバカ息子であるラストンに引き継がせると言いだした。どうせ逆らったところで無駄だと悟ったウィルムは、退職金代わりに隠し持っていた激レアアイテムを持ちだし、常連客たちへ退職報告と引き継ぎの挨拶を済ませてから、自由気ままに生きようと隣国であるメルキス王国へと旅立つ。  ウィルムはこれまでのコネクションを駆使し、田舎にある森の中で工房を開くと、そこで畑を耕したり、家畜を飼育したり、川で釣りをしたり、時には町へ行ってクラフトスキルを使って作ったアイテムを売ったりして静かに暮らそうと計画していたのだ。  一方、ウィルムの常連客たちは突然の退職が代表の私情で行われたことと、その後の不誠実な対応、さらには後任であるラストンの無能さに激怒。大貴族、Sランク冒険者パーティーのリーダー、秘境に暮らす希少獣人族集落の長、世界的に有名な鍛冶職人――などなど、有力な顧客はすべて商会との契約を打ち切り、ウィルムをサポートするため次々と森にある彼の工房へと集結する。やがて、そこには多くの人々が移住し、最強クラスの有名人たちが集う村が完成していったのだった。

ご期待に沿えず、誠に申し訳ございません

野村にれ
恋愛
人としての限界に達していたヨルレアンは、 婚約者であるエルドール第二王子殿下に理不尽とも思える注意を受け、 話の流れから婚約を解消という話にまでなった。 ヨルレアンは自分の立場のために頑張っていたが、 絶対に婚約を解消しようと拳を上げる。

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

家賃一万円、庭付き、駐車場付き、付喪神付き?!

雪那 由多
ライト文芸
 恋人に振られて独立を決心!  尊敬する先輩から紹介された家は庭付き駐車場付きで家賃一万円!  庭は畑仕事もできるくらいに広くみかんや柿、林檎のなる果実園もある。  さらに言えばリフォームしたての古民家は新築同然のピッカピカ!  そんな至れり尽くせりの家の家賃が一万円なわけがない!  古めかしい残置物からの熱い視線、夜な夜なさざめく話し声。  見えてしまう特異体質の瞳で見たこの家の住人達に納得のこのお値段!  見知らぬ土地で友人も居ない新天地の家に置いて行かれた道具から生まれた付喪神達との共同生活が今スタート! **************************************************************** 第6回ほっこり・じんわり大賞で読者賞を頂きました! 沢山の方に読んでいただき、そして投票を頂きまして本当にありがとうございました! ****************************************************************

ある月の晩に  何百年ぶりかの天体の不思議。写真にも残そうと・・あれ?ココはどこ?何が起こった?

ポチ
ファンタジー
ある月の晩に、私は愛犬と共に異世界へ飛ばされてしまった それは、何百年かに一度起こる天体の現象だった。その日はテレビでも、あの歴史上の人物も眺めたのでしょうか・・・ なんて、取り上げられた事象だった ソレハ、私も眺めねば!何て事を言いつつ愛犬とぼんやりと眺めてスマホで写真を撮っていた・・・

稀代の大賢者は0歳児から暗躍する〜公爵家のご令息は運命に抵抗する〜

撫羽
ファンタジー
ある邸で秘密の会議が開かれていた。 そこに出席している3歳児、王弟殿下の一人息子。実は前世を覚えていた。しかもやり直しの生だった!? どうしてちびっ子が秘密の会議に出席するような事になっているのか? 何があったのか? それは生後半年の頃に遡る。 『ばぶぁッ!』と元気な声で目覚めた赤ん坊。 おかしいぞ。確かに俺は刺されて死んだ筈だ。 なのに、目が覚めたら見覚えのある部屋だった。両親が心配そうに見ている。 しかも若い。え? どうなってんだ? 体を起こすと、嫌でも目に入る自分のポヨンとした赤ちゃん体型。マジかよ!? 神がいるなら、0歳児スタートはやめてほしかった。 何故だか分からないけど、人生をやり直す事になった。実は将来、大賢者に選ばれ魔族討伐に出る筈だ。だが、それは避けないといけない。 何故ならそこで、俺は殺されたからだ。 ならば、大賢者に選ばれなければいいじゃん!と、小さな使い魔と一緒に奮闘する。 でも、それなら魔族の問題はどうするんだ? それも解決してやろうではないか! 小さな胸を張って、根拠もないのに自信満々だ。 今回は初めての0歳児スタートです。 小さな賢者が自分の家族と、大好きな婚約者を守る為に奮闘します。 今度こそ、殺されずに生き残れるのか!? とは言うものの、全然ハードな内容ではありません。 今回も癒しをお届けできればと思います。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。