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第十四章 五歳の祝いとマロード温泉

二百五十三話 会議よりも混浴

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 マイク様達と別れて、僕達は王城に戻ります。
 はあ、何だか今日は予期せぬトラブルばかりで疲れてしまったよ。
 皆で会議室に入るけど、僕は席に着いたらグタッて机にうつ伏せになってしまった。
 流石に僕は子どもだから、まだまだ体力がないよ。

「流石にアレクも疲れたか」
「陛下、僕はまだ五歳児ですよ……」
「ははは、そりゃそうだな」

 陛下もグダっている僕の事を見て笑っているけど、昨夜から疲れる事ばっかりだったもん。
 なので、一刻も早く会議を終わらせましょう。

「状態異常回復が魔物化した者に有効なのは大きな発見だ」
「魔法を放った感覚ですと、カミラさんなら余裕で倒せると思います」
「アレク、カミラレベルの魔法使いは中々いないぞ。まあ、弱体化させるなどの効果はあるだろう」

 あ、そっか。
 忘れていたけど、カミラさんってAランク冒険者だった。
 陛下の言う通り、カミラさんクラスの魔法使いになると数が極端に少なくなるんだ。
 でも、魔物対策としては研究の余地はありそうだ。

「当面は薬物のやり取りが行われていた観光地の念入りな捜索と、関係者の聴取だな」
「ただ、薬物に関しては現時点ではあまり罰則が厳しくないんですよね」
「闇ギルドとの関連性で追求できよう。闇ギルドとの取引は厳罰扱いだからな」

 どの切り口から聴取を行うかによって、相手もどのような返答をするかわからないからなあ。
 この辺は軍に任せて、厳しく取り調べて貰おう。

「さて、会議はこの辺にしよう」
「あ、アレク君質問があるぞ」
「はい、なんでしょうか?」

 陛下が会議を終わらせようと言った所で、宰相が僕に質問をしてきた。
 一体何を聞くのだろうか?

「いやな、孫が昨日のボタン鍋がとても美味しかったと言っておってな。実際の所どんな感じかを聞こうと思ってな」
「お、おじいちゃん。わざわざ、こんな所で聞かなくても良いでしょう!」

 カミラさんが顔を真っ赤にして宰相を嗜めているけど、確かに誰かに自慢したくなる味だったよなあ。
 と、気がつけば他の閣僚も興味津々で僕を見ています。
 陛下はお留守番が確定しているので、若干しょんぼりしていますね。

「とても美味しかったですよ。皆おかわりしていました。露天風呂も素晴らしくて、流石はティナおばあさまお勧めの宿と思いました」
「ふむふむ、なるほど。因みに露天風呂は混浴か?」
「はい、水着着用ですけど」
「「「よし、いくぞ!」」」

 あ、この場にいる閣僚が全員立ち上がった。
 料理よりも混浴に惹かれたのかな……

「お父様、すけべです」
「おじいちゃん、サイテー!」

 レイナさんとカミラさんは、ガッツポーズしている身内に冷たい視線を浴びせていた。
 ルーカスお兄様とアイビー様も完全に引いた目で閣僚を見ていた。
 しかし閣僚は、そんな身内の冷たい視線を全く気にしていなかった。
 そんなテンションが高い閣僚に向かって、ティナおばあさまが冷静に一言。

「普通に食堂のスペースも露天風呂のスペースも足りませんから、行く時はご自身でどうぞ」
「あ、そっか。普通にスペースが足らないや」
「「「そんなー!」」」

 ティナおばあさまの冷静な一言に、がっくりと落ち込んでいる閣僚達。
 陛下がざまあみろって表情をしていたのは、あえて見なかった事にしておこう。
 こうして落ち込む閣僚を尻目に、僕達は再び宿に戻った。

「おかえり、お兄ちゃん。遅かったね?」
「おかーり」

 宿に戻って部屋に入ると、お昼寝から起きたミカエルを抱っこしたリズがいた。
 リズの頭にはスラちゃんが乗っている。
 他の人は、カウンターでまたもやお土産を買っている様だ。

「会議の途中でまた魔獣化した者が出たって報告があって、現地対応していたんだよ……」
「えー! またリズがいない時に出たの?」

 僕の発言に、リズとスラちゃんは明らかに不満そうな顔をしている。
 二人して魔獣化した人に突っ込んでいくから、ムノー子爵の屋敷に呼ばなくて正解だったかも。

「結構大変だったんだよ。屋敷にある物を見境なく投げてきて。石とか岩だったら大変だったよ」
「ふーん、そうなんだ」

 既に終わった事なので興味が薄れてきたリズに対して、スラちゃんは触手を沢山出して何かを投げるフリをしていた。
 何だかスラちゃんの表情が閃いたぞって顔になったのは、きっと気のせいだと思いたい。

「にーに」
「はいはい」

 ミカエルが僕に抱っこをせがんできたのでリズから受け取って抱っこをする。
 お風呂まであと少しだから、僕もカウンターに行ってお土産を買ってこよう。

「リズ、カウンターに行くけど一緒に行く?」
「行く!」

 という事で、僕も皆と合流してお風呂まで買い物をして時間を潰す事にしたのだった。
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