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第十四章 五歳の祝いとマロード温泉

二百五十二話 屋敷の惨状と簡単な説明

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 次々と怪我人が運ばれていくけど、屋敷の中はめちゃくちゃだな。
 壁に椅子のかけらが突き刺さっているし、花瓶とかお皿とかも割れて散らばっている。
 魔獣化したとはいえ、次男はよくここまで大暴れしたもんだ。

「軍務卿、ここまで部屋の中がめちゃくちゃだと捜索も時間がかかりそうですね……」
「全くだ。派手に暴れてくれたなあ」

 軍務卿も思わず頭をぽりぽりかいているけど、散乱した物を片付けるだけでも一仕事だぞ。
 とは言え、僕達が下手に手を出す訳にもいかないので、この場は兵に任せてとりあえず僕達は庭に出る事にした。
 
 庭には担架が並べられていて侍従を中心とした怪我人が寝かされているけど、魔法兵が心持ち多いので僕達の出番はなさそうだ。
 
「軍務卿、農務卿。ムノー子爵家の関係者はこれで全て捕縛しましたか?」
「直系は全て捕縛した。分家も聴取しているので、ムノー子爵家は処罰云々以前に後継者無しで断絶だな」
「これだけの大事を起こしたのだから、キッチリと処分は受けて貰わないとならない」

 先ずはひと段落着いたという事で、兵に頼んでエマさんとオリビアさんを呼んでもらった。
 すると、マイク様とセシルさんも一緒にやってきた。
 ちょうどタイミングが良いから、マイク様とセシルさんにも今回の事件の事を説明しておこう。
 特にマロード男爵領での件は、思いっきり当事者になるしな。
 ティナおばあさまとルーカスお兄様とアイビー様も一緒に説明する事になりました。

「学園前の封鎖は、重要人物の護送と治療が終われば解除できるわ」
「これだけの大事でしたら、流石に仕方ないと思います。幸いにして学園生も落ち着いています」
「流石は生徒会長ね。しっかりしているわ」

 ティナおばあさまとマイク様が話をしたいけど、今回は傍目から見ても大惨事ってのは分かるので、学園生もまだ帰れないのは納得しているらしい。
 まあ、屋敷に大量の兵が突入して派手な破壊音がすれば避難するよな。

「実はね、昨晩マロード男爵領でムノー子爵が大暴れしたのが事の発端なんだ。ルーカスお兄様とアイビー様は王城に帰っていたけど、僕達はマロード男爵領でムノー子爵とは別の宿に泊まっていたの」
「あ、そういえばアレク君達ってマロード男爵領の温泉に、皆で一緒に行くって言っていたよね」
「アレク君達がマロード男爵領に行ったタイミングで、ムノー子爵が大暴れしたなんて」
「タイミングが良いのか悪いのか。ジンさん達も同行したらしいし、ムノー子爵も喧嘩を売った相手が悪かったな」
「え? え?」

 僕が簡単に説明したところ、辺境伯家の皆さんは直ぐに理解してくれた。
 元々僕達が温泉に行くのは知っていたし、同行者も教えておいたもんな。
 対して、セシルさんは何が何だか分かっていない様子だった。

「セシル、簡単に言うとムノー子爵はドラゴンの尻尾を踏んでしまった訳だ。アレク君達には近衛騎士の他にAランクの冒険者も同行していたんだ」
「そんなに強い人がアレク君と同行したのですね。更には父上の兵もおりますし」
「まあ、そう言う事だ。そして、ここはムノー子爵の屋敷。昨晩の件での家宅捜査に対して、激しい抵抗があったのだろう」
「納得しました。アレク君は空間魔法を使われますし、移動も瞬時にできますわね」

 ジンさんは、あえてセシルさんに僕やティナおばあさまの強さの事は言わなかった様だ。
 ティナおばあさまとエマさんとオリビアさん、更にはルーカスお兄様とアイビー様も僕の方を見てくすくす笑っているぞ。

「簡単に言うとそういうことね。どっちにしろマロード男爵には正式に報告するから、その時には二人にも同席してもらうわ」
「「はい」」

 とりあえずはこんな説明で大丈夫だろう。
 重要な所は僕だけでなく、ティナおばあさまも補足してくれたしね。
 と、ここで軍務卿が僕達に声をかけてくれた。

「おーい、重要人物の護送が終わったから規制解除するぞ。こっちも王城に戻ろう」
「はーい。という事なので、後はよろしくお願いします」
「心配しなくて大丈夫だよ。生徒会長様が頑張ってくれるからね」
「そうそう、生徒会長様がやってくれるよ」
「おい、俺に全て押し付ける気か!」

 エマさんとオリビアさんが、マイク様に色々と押しつけてスタスタと歩いていく。
 勿論からかっているだけなので、マイク様も直ぐにエマさんとオリビアさんを笑いながらも捕まえていた。
 学園側はもう大丈夫だろう。
 という事で、僕達は王城の会議室にゲートを繋いで戻って行った。
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