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第十四章 五歳の祝いとマロード温泉

二百三十七話 温泉宿に到着

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 マロード男爵の屋敷を出た僕達は、乗合馬車に乗って温泉街に向かいます。
 実はルーカスお兄様とかは辺境伯領で乗合馬車を経験済みなのですが、アイビー様は初めての経験。

「あら、可愛らしいお嬢さんね。これから温泉に行くの?」
「はい、皆で温泉街に向かいますわ」

 アイビー様はおっかなびっくり乗合馬車に乗るかなって思っていたら、既に同乗した人と歓談していた。
 何だか微笑ましい光景だな。

 乗合馬車に乗って三十分。
 目的地の温泉街に到着です。
 乗合馬車から降りて、皆それぞれ感想を漏らしています。

「温泉の蒸気かな? 街中が湯気に包まれているね」
「ええ、中々風情のある光景ですわ」
「「「わー!」」」

 既に夫婦の様な会話をしているルーカスお兄様とアイビー様の横では、温泉の存在が目の前で感じられてテンションが上がっているリズとエレノアとサンディの姿が。
 そんな中、ティナおばあさまが僕達を先導します。

「お世話になった温泉宿があるの。少し建物は古いけど、温泉も食事もとっても良いのよ」
「ティナ様、もしかして木こりの宿ですか?」
「あら、ジン達も知っているの? あの宿はいいわよね」
「ええ、ティナ様。私、あの宿の雰囲気が好きなんです」
「ここ二年は、毎年木こりの宿に泊まっていますわ」

 おお、ティナおばあさまだけでなくジンさん達も贔屓にしているお店だったのか。
 更に期待度アップで、皆のテンションも上がっていきます。
 そして、乗合馬車ステーションから歩く事五分。
 
「はい、ここが木こりの宿よ」
「「「おお!」」」

 お目当ての温泉宿に到着です。
 確かに建物の見た目は古いけど、風情のある趣だ。
 そして、皆で宿の中に入っていく。

「「「こんにちは!」」」
「おお、ジンか。今年は随分と子沢山だな」

 僕達も挨拶しながら宿に入っていく。
 ジンさんは、早速宿の主人から声をかけられている。
 何だかジンさんをからかっている様な感じだけど、それだけ親しいのだろう。

「ご主人、久しぶりぶりね」
「え? もしかしてティナ様、ですか?」
「フフ、そうよ。それから、残念ながらジンの子ではないの。私の孫と甥の子よ」
「え? ティナ様のお孫様? それに、ティナ様の甥って……」

 あ、宿の主人が固まってしまった。
 宿の主人はティナおばあさまの事を知っているし、ティナおばあさまの甥は勿論現国王だ。
 なので、僕達がどんな子どもなのか分かってしまった様だ。
 と、ここで救世主が登場。

「あらあら、まあまあ。これはこれはティナ様ではありませんか」
「おかみさん、お久しぶりね」

 カウンターの奥から、おっとりとした感じのおかみさんが出てきた。
 ティナおばあさまも、ニコニコしながらおかみさんと話をしている。

「今日はどんなご用事で?」
「二泊分お願いするわ。部屋は三部屋お願いできる? ああ、子ども達は孫の三人以外は王城に帰るから大丈夫よ」
「はい、畏まりました。では、お部屋にご案内しますね」
「はーい」

 おかみさんが、あっという間に宿泊の手続きをしてくれた。
 おかみさんに案内されて、僕達は宿泊する部屋に移動します。
 うーん、カウンターで固まってしまった宿の主人が完全に空気になってしまっているぞ。
 
「はい、ここが宿泊頂くお部屋です」
「「「わー!」」」

 先ずはおかみさんに、僕達の宿泊する部屋を案内してもらった。
 部屋の床はフローリングだし寝るのはベッドだけど、それ以外は何だか日本の旅館って感じだ。
 僕は前世でも旅館なんて泊まった事ないけどね。
 部屋は僕達とジンさん達と冒険者のお姉さん達で分かれて、近衛騎士も僕達の部屋とお姉さんの部屋に分かれて宿泊します。

「お食事を用意しますので、その間に温泉にお入り下さい」
「「「わーい!」」」

 おかみさんからの温泉の案内に、リズ達はテンションが上がっていく。
 温泉は本当に楽しみにしていたからなあ。
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