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第十三章 貴族主義派の不正

二百七話 ちょっと過剰攻撃?

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「よし、代官邸と港湾の二箇所を重点的に捜索する。特に、ターゲットの代官を取り逃がさない様に」
「「「はっ」」」

 門が開くと、軍務卿の指示に従って一気に兵が街になだれ込んだ。
 どうも街は戒厳令でも出ているのか、巡回している兵を除いて全くいないぞ。
 探索で家にいるのは分かるので、取り敢えずは市民を巻き込まなくて済みそうだ。
 どうも街を巡回している一部の兵は今起きている事を知らない様で、何が何だか分かっていなかった。

「こちらは代官邸に向かうぞ」
「「はい」」

 僕達は先ずは代官邸に向かうことになった。
 軍務卿はともかくとして、内務卿も何だか張り切っている気がするぞ。
 街の中を走っていくと、住宅街の中でも一際大きい建物が見えてきた。
 どうも、あの建物が代官邸らしい。
 既に兵が屋敷の周りを取り囲んでいるが、何だか様子がおかしいぞ。
 探索をすると、原因がはっきりとわかった。

「建物の中にターゲットはいないみたいです」
「悪い人の気配がしないよ」
「くそ、逃げやがったか」

 とはいえ、どうも査察官とかは囚われている様なので、兵が建物の中に突入していく。
 と、ここで別に動いている兵がこちらにやってきた。

「軍務卿閣下、代官が船で海上へ逃亡しております」
「ちっ、そっちか。直ぐに向かうぞ」

 調査の為の兵を残して、僕達も港に向かっていく。
 海が広がり、船が沢山ならんでいる港に着いた。
 すると、沖合に一隻の大きな船があるのが直ぐに分かった。
 軍も数隻の軍用船を向かわせているが、ちょっと距離があるなあ。
 と、ここで船に向かうと手を上げたのがいた。

「スラちゃんが逃げている船に向かうって。プリンちゃんも連れて行くって」
「そうか、スラちゃんはショートワープが使えるよね。お願いね、スラちゃん、プリン」

 スラちゃんとプリンは、任せろと触手をフリフリしている。
 そして更に沖に向けて逃げる船に向けてワープしていった。

「大丈夫かな……」
「無事であればいいが……」
「あはは……」

 軍務卿と内務卿が、船に視線を向けていた。
 その表情はとても心配している。
 勿論、スラちゃんとプリンの事ではない。
 逃げている代官の事だ。
 スラちゃんとプリンがやりすぎないかと心配しているのだ。
 僕もその気持ちは良く分かるぞ。
 特にスラちゃんは、駐屯地で勝手にならずものに突っ込んでいった件を取り戻そうと張り切っている様に見えた。

 ズドーン、ズドーン。
 バリバリバリ!

「「「あっ……」」」
「うわー、凄い凄い!」

 船の方から聞こえてきた大きな音と魔法の光に、軍務卿と内務卿と僕はかなりびっくりしてしまった。
 リズはスラちゃんとプリンの活躍に喜んでいるけど、誰がどう見たってやりすぎだろう。

 ズドーン、ズドーン、ズドーン。

 更に船から音が聞こえてくる。
 煙なのかほこりなのか分からないけど、船の周りに何かが舞っている。
 スラちゃんが風魔法で何かを吹き飛ばしている。
 代官の護衛か何かかな?
 
 バリバリバリ、バリバリバリ。

 更には、雷魔法が派手な光と音を放ちながら繰り出されている。
 もしかして、スラちゃんとプリンとの合体魔法なのかもしれない。
 
「凄い凄い!」
「代官、生きているかな……」
「分からん、全く分からんぞ……」

 船上で放たれる魔法の激しさに、リズは更に興奮しているが軍務卿と内務卿は代官の生死をかなり気にしていた。
 
「何という魔法なのだろうか」
「これが殿下に付き添う従魔の力か」
「ハイスライムとはいえ、化け物級の強さだ」
「宮廷魔導師とも、対等にやりあえるのではないか?」

 僕達と一緒に成り行きを見守っていた兵も、スラちゃんとプリンが放っている魔法の激しさに度肝を抜かれていた。
 うちの従魔がどうもすみません。

「あっ、船が追いついたよ」
「これで一段落だな」

 逃走船に軍用船が追いつき、次々と兵が逃走船に乗り込んでいく。
 魔法も落ち着いていたので、スラちゃんも気がついたのだろう。
 後は、逃走船が港に戻るのを待つばかりだ。
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